視察?
入学式が終わった次の日リゼルは、馬車に乗り学園へ向かっていた
あの後、皆さん大丈夫だったかしら?あの人がまともに手合わせをやったとは思わないのだけど……
「お嬢様。まもなく到着いたします」
「えぇ。分かったわ」
リゼルは従者によって開けられた扉から降り
「終了時間にお願いするわ」
「畏まりました」
彼らを労ってから校内へ歩き始めた。昨日と同じ蔑んだ目を向けられているが、リゼルは彼らが無事だったことに安堵した
教室に入るもリゼルの席は一番端の窓側最後列だった。それでもリゼルはただ単に外の景色を眺め授業が始まるのを待っていた
ベルの音と共に教室が入ってきたが、何故か妙に緊張している風にリゼルには見えた
学園長でも見にこられているのかしら?または、職について初めての授業だから緊張しているとかかしら?
「み、皆さんに新しいクラスメイトをお伝えします……ど、どうぞ」
先生の合図に前の扉から入ってきたのはどこか見覚えのある同い年ぐらいの男の子だった
彼はニコッと笑うと
「初めましてアスターです。入学式には間に合わなかったが、これからよろしくね」
リゼルが彼に対していだいた感想は
『俺様なのか人懐っこいのかわけのわからない人』だった
「あのれっと………」
一瞬にして魔力圧が放たれた。クラス中気を失う人や泡を吹いて倒れる人、土色の顔になって震えている人など様々だ。その中でリゼルと魔力を放った彼アスターだけが平然としていた
今のは………まさか!?
リゼルは、放たれた魔力に覚えがあったそれもつい最近
彼はニタッと笑うと更に放つ魔力を強め彼と彼女以外の人達を気絶させた
「これでも平然としているか」
「このくらい耐えられなければ意味ありませんわ。それよりも何故あなた様がまた、来られているのでしょうか?それも幼児姿で」
彼は喉の奥で『ククク』と笑うと
「やはり気づかれていたか。なぁ~にちょっとした視察だと思ってくれたらいい」
リゼルはため息をつき
「私は、あなた様の面倒は見たくありませんのであまり関わらないでくださいね」
「なんだ、お前は弟そっくりだな」
「あら?お父様がそうおっしゃったのだからそれは、正しいのではなくて?」
彼は苦笑いを浮かべると
「早速だが、こいつらの記憶改竄と精神的シャットダウンを直してくれ」
彼は俺じゃ直せないからな と笑いながらリゼルの席の横に座った
本日2度目のため息を着いてから彼が高濃度の魔力を放った記憶を消し体に負った負荷を回復させた
「ほう~流石、ザイゼルの一人娘だないとも簡単にやり遂げるか」
「こう言う高難度の魔法はもう二度と使いませんわ。ですのでご自身で対策してくださいな」
リゼルは目を覚ました彼らを目の端で見ながら授業が始まっても外の景色を眺めていた
「なぁ、リゼル。一緒に飯行こうぜ!」
「アスター、俺達と飯に行こうぜ!!こんな落ちこぼれほっておいてさ~」
魔力でなく殺気を放とうとする彼に
「お誘い頂いたのに大変申し訳ないのですが、昼休みには私用が有りますので失礼致しますわ」
リゼルは、颯爽と教室を出るなり校舎裏から姿を消した
そして、昼終了のベルが鳴ったときには体操着姿でグランドにいつの間にか到着し列に並んでいた
「これからお前たちの魔力量をこの水晶で測って貰う。水晶の色で属性が決まり、光具合で魔力量が決まる」
10ヶ所のブースに分かれ水晶を触れていく
さて、どうしようかしら?
「リゼルよ。お前はどうするつもりだ?ザイゼルから隠すように言われてるんだろう?」
そう、リゼルが今悩んでいるのはまさにその事についてだった。理由は何となく分かっているが、この水晶がどの程度の性能があるかによって隠せる隠せないが決まってしまう
「魔力封じ系や増加系に値する魔石は付けれないのが一番困りますわね」
「俺が小細工してやる」
「魔王がそんなことをしていい分けないでしょう!」
「魔王だから許されることもあんだよ。だから俺に任せろ」
「…………この貸しは必ず返しますわ」
彼は苦笑いを浮かべ
「相変わらず義理堅い親子だな」
綺麗に礼をしながら
「お褒めいただき光栄です」
「別に褒めてねぇんだけど」
と言う彼の言葉を無視し彼が施した水晶に手を当てると青と緑色に光り、魔力量も平均ぐらいの明るさだった
「あいつ魔力が平均しか無いくせに俺らと同じ2色持ちだぜ」
「調子に乗りやがって」
たかが2色で騒いでどうするのかしら?王城に行けば3色持ちなんて普通ですのに
「助かりましたわ」
「いや、それよりもお前の一番得意なのは黒と金そして無色じゃ無かったのか?」
「えぇ、確かに得意なのはその3色ですわ。ですが、その3色は珍しすぎますから一番苦手な2色を強く出したのですわ」
「………相変わらず腹黒い親子だな」
「何か言いましたか?」
「いいや。それよりもうっかり別の魔法を使うなよ?」
「あら?私はそんなに信用ないのかしら ゾロアスター・レ・ソルセルリー 伯父様?」
「グッ……今、それを持ち出すか?」
リゼルは不思議そうに
「今、言わなくてはいつ言うのですか?」
ぼそっ
「たちの悪い」
リゼルは悪魔のような笑みを浮かべ
「その言葉そのままお返し致しますわ」
「……聞こえていたのか!?」
「えぇ。もちろんですわ」
「おい、そこの二人!もっとさっさと走れ」
教員の声に
「勝負だ。この状況で一番にゴール出来たらリゼルの望を叶える。もし、俺が一番だったら俺の望を叶えろ」
「もし、二人とも無理でしたら?」
「この話は無かったことに」
「ええ、よろしいですわ」
「よ~い「始め!」」
かけっこ程度の速さから一切魔力を使わず100mを4秒で走り抜けていく二人。周囲の人々はその場所から飛び退き場所を譲る
「リゼル速くなったな!!」
「っまだまだ負けませんわ!」
結局リゼルは、彼に0コンマ数秒の差で負けた