仲間を守るためでも相手を考えなさい
リゼルは彼、ゾロアスター・レ・ソルセルリーが投下した爆弾
「今からここにいる新入生全員の実力を俺が見てやる外に出ろ!」
と聞いたとき彼と目があった気がした
気のせいよね?
彼女は、誰にも気づかれないように彼らの波に乗りながら途中でその波から出た
はぁ~なんて運がないのでしょう。会わないようにと言われたあの方に会ってしまうわ、いきなり模擬戦を始めるわ。今日だけですでに疲れましたわ
リゼルが迎えの馬車が来る場所へ向かっているとその場にいては危険だと脳内にアラームが鳴り響いた。リゼルは脳内忠告に従いその場から出来る限り遠くへ逃げると、先程までいた場所に灰になった草花が存在していた
一体誰がっ!……うん?この魔力の気配はまさか!?
リゼルはまるで壊れかけの機械のようにギギギと後ろを振り向いた
「まさか、魔王直々の手合わせを断ったりしないよな?」
有無を言わせない他者を圧倒する魔力を放たれ気を手放しそうになるのをどうにかリゼルはこらえ
「その様なことは致しませんわ。ただ、私はお花をつみに向かっていただけですわ」
「ほう?それなら方角が違うぞ」
「あら?そうでしたの。ですが、男性と女性では場所が違ったはずですわ」
リゼルは暗になぜ女性のお手洗い場を知っているのか。有らぬことをするつもりだったのかと問いかける
彼は喉の奥で『くくく』と笑うなり
「弟の娘のように気が強いな」
ゾロアスター・レ・ソルセルリーは暗に お前がそうだろう と問いかけてくる
「私の事よりも皆さんの方へ戻られてはいかがです?」
私の事はほっといて欲しい。彼らの駄々もれの魔力をどうにかしては?
と返すも彼はますます愉快そうに笑い瞳には玩具を見つけた子どものように輝いていた
「…………」
とても嫌な予感がしますわ
「………………」
「リゼルよ久しぶりに俺と手合わせをやろうぜ」
リゼルは決定的なこの言葉を一番聞きたくなかった
「魔王である俺に剣や魔法をぶつけてくるのは、お前とザイゼルだけだしな。せっかく会ったんだから一回ぐらいいいだろう」
はぁ~こうなることが予測できるお父様は尊敬しますわ
リゼルは約束通り父親がいる場所へ移動した。……が、魔王である彼は後を追って彼女の真後ろに移動してきた
それを見たリゼルの父親は眉間を揉みほぐすと
「やはり騙されませんでしたか」
「お前もこうなることを予測して王族の訓練場にいたんだろう?」
「はぁ~最近やたら大人しいから何かやると思っていましたが、まさか私の娘の入学式にわざわざ出向き新入生をのばすなどやりすぎです。兄さん、手合わせなら私が相手をしますので今後一切娘の時間を邪魔しないでもらえますか?」
「だが、俺は───」
「に・い・さ・ん?」
「……わ、分かった。必要なとき以外出向かない」
弟に負けた彼はしぶしぶ了承しふと思い出したかのように
「ところで、なぜそんな格好をしてるんだ?」
どう説明すればいいか分からず父親に視線を向けた
「それは、また説明しますよ。リゼルこのあと、魔王軍第3隊をお前の考案したメニューをやらせておいてくれ」
「分かりましたお父様」
リゼルは、父親と魔王をその場に残し本来の魔王軍訓練施設がある山へ移動した
相変わらずの急斜面にゴロゴロそこらじゅうに転がっている岩石や岩。そして、奥にいけば行くほど魔物のランクが上がっていく不思議な場所ね
その森を囲うように作られたフェンス。その前には別邸の様な施設が設けられている。その敷地には広々としたグランドが整備されている
「初めまして、本日 第3魔王軍の指導を行うリゼル。リゼルレディシオ・ギネカ・マルキシオスですわ」
令嬢らしく礼をしドレスの裾から手を離すとドレスではなく魔王軍の服装に変化していた
「こちらの隊長は何方ですか?」
「………」
誰一人反応を示さない彼らを見てリゼルは呆れた
はぁ~仲間を守るために出ないことは良いことよ?でもね今、貴方達は完全に私を侮っているでしょう?
「…………」
「…………」
少しだけ放出する分には文句は言われないでしょう
リゼルは上手く操作していた魔力の極一部を彼らに向けて放った。放った魔力によりふらつく者や膝をつく者。顔を青くする者。その中で唯一顔色さえ変えずに耐えているものを見つけた
ふ~ん一番後ろの彼がそうみたいね
リゼルは己の幻影だけをその場に残し彼の真後ろに移動した
「ねぇ、君がこの隊の隊長ですわね」
ビクつく彼の耳元で
「皆に教えなさい。時と場合によって仲間を守るためにする行動は、相手を考えなさい。ってね」
彼がリゼルに斬りかかろうとしたがその剣筋は虚空を切り裂き、当のリゼルは前に戻っていた
「さて、今ので大体の事は分かったわ。皆さんには、今から後ろの山中枢まで行ってもらいます。協力し合ってもよし、個人行動をしてもよし。ただし、夕刻の鐘が鳴るまでに中枢に来れなければ………」
リゼルは、言葉を途中でやめニコリと微笑みと
「明日から別の特別訓練となりますわ」
もし、これで辞めるものがいればそれまでってことよ
ざわつく中リゼルは笑顔で
「さぁ、丁度昼の鐘が鳴ったわ。早く行かないと間に合わないかもね」
先に動き出したのは一番後ろにいた彼だった。その後ろに続くように他の隊員が山へ入って行く
「あっそうだ!もし、途中でリタイアする場合は魔法を打ち上げてくれれば迎えに行きますわ」
この言葉を挑発と受け取ったのか彼らの魔力の放出量が僅かに増えた
あらあら。そんなに魔力を漏らしていたら魔物がよってくるわよ
彼らが山に入ってからリゼルは空から眺めていた
たかが初級レベルの群れに8人が大怪我。そして、10人が軽傷………ねぇ。どこまで鍛えられていないのかしら?
リゼルは、あくまでもこんな馬鹿げたことで死者を出したくないので死にそうな人には上から援護したりしていた
あら?あの隊長が率いている軍団は中々ペースが速いわね。それに怪我人がほぼいないわ!流石、黒豹が率いる選抜隊ね