似た者親子
その日の放課後。リゼルは侯爵家からの送迎馬車ではなく魔王軍第三部隊の送迎馬車に乗り込み豪華に飾られた扉を押し開き呼び出した本人の前で騎士らしく礼をし
「魔王軍第3部隊の指導者をしておりますリゼルレディシオ・ギネカ・マルキシオス がただいま参上致しました」
呼び出した本人は書類から顔をあげるなり一冊の本を彼女に放り投げ、それを危なげなくリゼルは受け取った
「まずはよく来てくれた。早速本題にはいるが、来月の月末に行われる人間界との交流だが第1ではなくソナタが指導している第3に任せることにした」
リゼルは膝をつき頭を垂れたまま
「光栄でございます」
「以上だ。下がってよい」
「はっ」
彼女は顔をあげないように気を付けながら摺り足で後ろへ下がり一定距離が離れたら後ろに向きなおし、扉に手をかけた
「リゼル。今日の事は助かった」
こちらを見ているアスターに軽く微笑み
「お役に立てて何よりです」
といい今度こそその部屋を出て行った
リゼルは手に持っている本を鞄に戻すと魔王軍第3部隊の活動場所に向かった
リゼルがその場所につくなり第3部隊の彼らは手を止め彼女のもとへ集まり整列
「「「「「…………………」」」」」
「先ほど陛下から来月の月末に行われる人間界との交流時の護衛をこの第3部隊が勤めることになりましたわ」
静まり返る練習場に彼女の声が響き渡った
「「「「おおーーーーーー!!」」」」
地響きのように震える歓声に
「黙りなさい!」
その一言で歓声は静まり彼等は次に発せられる言葉を待った
「名前を呼ばれたものは即座に前に出てきなさい。副隊長 サレル・アンドラス・エレキセス」
「はっ」
「ジェラル・アンドラス・ガラレウス」
「っ!はっ」
「ドラセナ」
「は、はい!」
「ルドベキア」
「……!はい」
「そして最後の一人 ニゲラ」
「!!は、はい」
リゼルは隣に並ぶ彼らを横目で確認し
「この5人には主に内部警護をしてもらいますわ。今回は、呼ばれなかった方々は外部の警護を頼みます」
「リゼル様は陛下のお側にいられるのですか?」
リゼルはキョトンとしながら
「陛下のお側には宰相様が御付きになられますわ」
「では、あなた様は……?」
「私は何事も起こらなければ、学園で授業を受けていますわ」
そう、何事もなければいいのですが……
「と言うことですので、この5人には普段の訓練プラス補講講座を受けてもらいますわ」
「「「「………………」」」」
5人を哀れみの目で見る選ばれなかった人達と死んだ魚のような目をしている5人
「明日から行いますわ。では皆様ごきげんよう」
と言うなりソサクサとリゼルは侯爵家の馬車に乗り家に戻った
その夜リゼルは父親に呼び出され書斎に入った
「こんな遅くに呼び出して悪い」
「いいえ、お父様。お帰りなられたら私から参ろうと思っていたところですわ」
「そうか、学園では上手くいっているか?」
リゼルは少し困ったように微笑み
「………えぇ」
「お前には苦労をかけるな」
「そんな!私はお父様のお役に立ててとても嬉しいのですわ」
書斎に入ってから一切目をそらしていなかった二人が一斉に目をそらし
髪は銀色で目の色は青色と言う魔力量の少なさで苦労をする娘とそれを気にする優しい父親───と言う雰囲気から一転し濡れ烏の様な髪に血のような赤い瞳に戻り
「上手くいっているようだな」
「ええ、順調ですわお父様」
と二人揃って黒い笑みを浮かべた