隊長とサバイバル
少しいつもより長めです
俺はあのサバイバル以降あの方を名前で呼ばせていただいている。指導の内容も的確しかも俺達隊員のケアまで本来やらなくても良いことまでやってくれている。まさに神様的な存在になりつつあった
この日もいつもの様に訓練を行っていた
「そこ!腰が引けてるぞ」
「はい!」
「お前は防御が甘い」
「はっ!」
「隙だらけだぞ!!」
「は、はい!」
注意しては角度や何処があまいか教えて回っていた。その最中、俺の脳内が警報を鳴らした
誰か大物が現れたのか?
俺はなんとなく振り向くと背後にはあの方が来られていた。俺の異変に気づいた隊員達は一斉に彼女の前で整列し彼女の言葉を待った
「皆さん中々鋭い剣さばきでしたわ。本日はこれをお届けに参りました」
彼女が俺達を褒めたことに誰もが喜びを噛み締めてたが、彼女が俺に渡した紙の束を見て全員が顔をひきつらしたと思う。それでも彼女は気にすることなく
「明後日から学園の行事で黒綠の森で1週間のサバイバルに行って参りますので、冊子に記した内容を行ってください」
……この方ならこの時期の黒綠の森で1週間は余裕だと思うが、学園の………となるとそれは無理だろう。その事をこの方はお忘れなのだろうか?
「それは了解しましたが……リゼル様。黒綠の森はいま繁殖期で、あの学年の方々では………」
あの方は存じておられた様だった。俺の言葉にうなずき
「難易度が上がっていることは承知していますわ。そして彼らでは死ぬ確率も」
分かっていてお止めにならないってことは、何かお考えが……?
「要らぬことを申しました」
ふと俺は嫌な予感を覚え渡された冊子をペラペラ捲りながら目を通すと『黒綠の森で繁殖している魔物について』のレポート提出が全体課題として出されていた
あの方は俺が予想したことを肯定し5人パーティーで朝から昼 昼から夜 夜から朝のローテーションするよう指示が書かれていた
「俺達の強化プラス生徒を影から護衛しろってことですね」
あの方は、良くできましたとばかりに微笑むと
「総司令官様から許可は頂いていますので、軍事物品も使用可能ですわ」
俺達の逃げ道を塞ぐかの様に告げると彼女の周囲が圧があるものから穏やかなものへ変わった事に気づき隊員を訓練に戻し
何故ここまでするのか聞こうとしたが総司令官が現れたから俺も訓練に戻った
そして、あの方がサバイバルに赴く姿を見て俺も含めて全員が度肝を抜かれた
な、なんなんだあの格好は??
「普段俺達のところへ来るときの姿より薄くないか?」
「いや、俺達に気づけない仕掛けがあるに違いない」
「………美しい………」
「おい!戻ってこい!!」
好き勝手に言ってるこいつらに拳を落とし
「お前ら、全体課題忘れてねぇだろうな」
この全体課題は『俺達の気配を学園の生徒にばれないように護衛する事』が含まれていた
「「「「…………」」」」
慌てて黙る部下にため息を吐きながら各パーティーが森へ入って行くのを俺達は見届けた。最後のパーティーはリゼル様と憐れな趣味をもつ高貴な方の2人だけのパーティーだった
俺達はリゼル様意外のパーティーをフォローし大量に囲まれそうになったら敵の数を減らし、寝場所で迷うなら開けたスペースへこっそり案内をしていた。その夕方、俺達が情報交換のため巨大樹の上で食事兼情報を聞きながら暫しの休憩をしていた
「それで、あの子達に被害はないのね?」
「ああ。今のところは………って!!リゼル様!?何故このようなところに」
交代部隊かと思い問に答えどこか聞き覚えのある声に振り向くとリゼル様があの服装ではなく魔王軍の服装でいつの間にか一番高い幹の上で優雅に紅茶を飲んでいた
リゼル様は気にも止めず
「これからの時間気を引き締めなさい。魔物達は喜んで活動を始めるわ、そして私たち魔族の大人の方々は力が増す時間。下手に暴走しないでちょうだいね」
リゼル様は、それだけ言い残しどこかへ姿を消された
そして、魔物達が活発化し街よりも魔素が満ち溢れているこの森で俺達は己の力が暴走しないようコントロールしながら1匹1匹確実に仕止めていた
大群を仕止めていると1つの結界が書き込まれた魔術石が破壊されそうになりそれのフォローをしに行き魔物を葬る
ッチ爪が引っ掛かったか
足の怪我を気にすることなく俺は魔物を殲滅していた
「ほら余所見しない!1パーティーが狙われているわよ」
「なっ!」
「「「「えっ!」」」」
魔物を倒しながら振り向く俺達にリゼル様は
「次4・7の近くに大群よ」
「「「はっ!!」」」
「隊長。貴方は一旦下がりなさい」
「ですが!!」
「貴方の部下を信じなさい」
リゼル様は俺の足を見るなり
「はぁ、毒持ち相手に傷を負わされたならさっさと治療しなさい」
彼女は、俺の傷口に手を当ててるところが徐々に温かくなり手を退けられたときには傷が綺麗に無くなっていた
魔族が光魔法?いや治癒魔法か?
呆然とする俺に
「これを飲んで30秒ほど安静していたら解毒が終わるわ」
彼女は立ち上り
「そろそろ戻らないと」
それだけ呟くと
「全隊員ここまで戻ってきなさい」
困惑する部下に俺は
「速くもどれ!」
「「「はっ!」」」
俺の側に隊員全員が集まると彼女は莫大な魔力を練り近くにいる魔物全てを一掃し俺達に
「魔石の回収だけお願いするわ。後、魔物は夜まで出没しないと思いますがもしものときこれを打ち上げてください」
彼女は軽く3色について説明日
「私はあの方の元に戻りますわ」
と言って来たとき同様直ぐにいなくなった
その日の昼前に一つのパーティーが森の裏側へ向かって行った。俺がそのパーティーの護衛をする事した
何なんだ彼奴森の裏側は人間との境界線が有るんだが、こいつら知らないのか?
俺は裏へ行かないよう何度も軌道修正させようとしたが、彼らは何故か裏へ行った
裏には、やはり柄の悪そうな男が5人いた。ガキどもは
「ここは俺ら魔族の国だ!テメェらゴミ屑が入ってくんじゃねぇよ!」
とまぁ、煽る言葉を言い争いが始まった。ガキどもは魔法を使い蹴散らそうとしたが何かの力が働いたのか丸焼けに成るハズだった人間は火傷すらしてなかった。ガキは茫然として人間の刃物すら避けられない状態になってた
くそガキが!
俺はナイフを剣で流し耐えてたが、ガキどもを守りながらではやはり不利だった
「ガキ!さっさと表へ戻れ!!」
怖じ気づきペタンと倒れるガキを見て黄色ではなく赤を使うことにした
リゼル様!この争いを止めてくれ!!
ほんの数分が俺には数時間に感じるほど長かった
くそっ!!ダメか
「ねぇ、そこのお兄さん達何しているの?」
無邪気なかわいい声に
声の方へ俺やごろつきは向き顔を真っ赤に染めた
人間の娘はキョトンとしたが再度
「お兄さん達何をしているの?」
と尋ねてきた
「こいつらは────」
危険だから来るなと言おうとしたが
「ねぇ、お兄さん達声真似に声とられちゃったの?それなら速く町に戻ってお薬飲まないといけないね?」
声真似ッてなんだ?
「そこの小娘、お前の心臓俺に寄越しな」
…………はっ?
「さ、さっきも言ったじゃない!!い、嫌よ」
「ほう?お前の心臓の変わりにその人間の心臓5つ俺に寄越すか?」
「……そっそれは………」
人間の少女は申し訳なさそうにごろつきどもを見ると、やつらは
「「「ぎやあああああーーーーー」」」
「待ってお兄さん達!!」
と町のふもと付近まで追いかけると直ぐ様戻ってきた
俺の側に座ると上目遣いで
「ふふふ、お兄さん達も速く表に戻った方がいいよ?裏側は、さっきの人達も来るし危険だからね?」
………かわいいんだけど何故か恐怖を感じるのだが………
俺もくそガキも首振り人形の様にコクコクと頷き表に戻った
そのあと俺はあの少女がどうなったか、あの魔族?は何だったのか。助ければ良かったと後悔に苛まれた