出会いたくない人
私の生まれは、ソルセルリー王国。人間と魔族で分けると魔族の国で、魔王様を始めとする王国の武を重んじる侯爵家に産まれた。この国ではある一定の基準によって6歳になれば、それぞれの適性に応じた学園に通うことになっている。これは、私とて例外ではないし拒めるものでもなかった
「リゼル、そろそろ時間が無いぞ!」
「……分かっていますわお父様」
この日リゼルは朝から憂鬱でしかなかった
こんな日一生来なければ良かったのに!!
何てことを思いながらも侍女たちにドレスアップさせられた姿を鏡で見て本日何度目かわからないため息をついた
「お嬢様は、世界一美しいのですから胸を張って行ってらっしゃいませ」
いつもリゼルを影から支える乳母にリゼルは困ったように微笑むと
「バル。貴女なら私が何故この日を嫌っていたか分かっているでしょう?」
「はい、分かっております。が、こればかりは私共でもどうしようもございません」
そう。これは、絶対である魔王様がお決めになられたこと。これに逆らうってことは魔王様ひいてはソルセルリー王国を貶し反逆することに繋がる
「そうね。私も覚悟を決めるわ」
リゼルは、一度頬を両手でパチンっと叩き
「バル。行ってくるわね」
「はい。行ってらっしゃいませお嬢様」
リゼルは自室を出ると優雅に階段を下り待っていた父親に
「お父様。お待たせ致しました」
リゼルの父親は、乱れが何か一通り確認し
「行ってこい」
「はい。行って参りますわお父様」
リゼルは優雅なしぐさで馬車に乗り込み魔王学園へ向かった
ベルゼスト学園は、第1~3まで存在し第1魔王学園は魔王城のすぐ近くに存在する。もとは、魔王の側近を育てるための学園だったが今では王侯貴族で一定以上の魔力が有るものだけが通える学園となった。第2学園は、王侯貴族であっても一定の魔力が無かったものが通う学園。第3学園は、地位を持たない平民が最低基準学べるようにと設置された学園。その中でリゼルが通う学園は、武を重んじ侯爵家だから当然第1学園だ
侯爵家と第1学園はさほど距離はないため、どんなにゆっくり馬車で進もうが直ぐに着いてしまう。リゼルは従者によって開けられた扉からゆっくりと下りると、彼らに向かって
「ご苦労でしたわ。帰りも頼みますわね」
と言うなり学園と言うよりも城に近い建物へ歩み始めた
「見ろよ!あいつこの学園に通う規定のギリギリしかないぞ!!」
「落ちこぼれか?」
「それに髪は銀色だし目の色なんて青色だぜ」
「おいおい。あんな落ちこぼれと共に授業を受けるのかよ!!」
「マジあり得ねぇよな」
リゼルは全く彼らの嫌味を気にすることなくクラスの確認をし面倒ごとに巻き込まれる前に講堂へ移動し始めた
はぁ~さっさと終わって帰りたいわ。ここにいるだけで気分が悪くなるもの
リゼルは普段誰も通らないそれた道を通りながら講堂へ向かう
それにしても、よくこれだけ魔力が漏出しているのに気づきもせずに無駄な魔力を消費しているわね
リゼルは呆れてため息をまた吐いた
『ドン』
「キャッ!」
「悪い。大丈夫か?」
考え事をしていたせいか、それともこの駄々もれの魔力に気をとられていたせいか。または、その両方か。そのせいで前から来ていた男性に気づかず、後ろに重心がいき転けかけたリゼルを男性が手を引き助けた
「え、えぇ。大丈夫ですわ。他の事に気を取られていたので、貴方が来られ………」
リゼルは、男性の腕から顔を上げ目を見て謝ろうとして言葉を不意に止めた
…………えっ?なぜこの方がこの様なところへ?
彼はリゼルの反応を気にせずに
「魔力で察知していたんだが、お前の魔力には気づけなかった……うん?」
ようやくリゼルが無表情で固まっていることに気づいた彼はリゼルの顔をもう一度よく見直し
「弟の娘に似ているような?」
………これは、危険ですわね。
リゼルは昨夜父親に言われたことをふと思い出した
『いいか?絶対に髪や瞳の色それに魔力量を変えなさい。もし兄が学園来てたり、顔をあわさなければならないときには絶対に気づかれないようにしなさい。もし、万が一にも気づかれたなら急いで私の元へ来なさい』
「だが、あいつの娘は確か濡れ烏のような髪に血のように赤い瞳だったはず……それに魔力の波動が弱く無かったはず」
考え事をに耽る彼に
「……あ、あのもう大丈夫ですので手を離してください」
「あぁ、すまない。ところで名はなんと言う?」
ここで、偽名を名乗っても後でばれてしまうわ!?
「………」
「答えぬかか?」
目の前の彼はリゼルだけに己の魔力を圧として押し当ててくる
「………わ、私は────」
「ここにおられましたか!!あまり歩き回られては、子どもたちに気づかれて………?そこにいるのは新入生の方ですか?」
「そうだ。ただ道を聞いていただけだ」
「?そうですか。さあさあ講堂へご案内致します」
彼を呼びに来た学園長は彼を促しながらこちらには冷たい声色で
「貴女も早く講堂に向かいなさい」
リゼルは助かったことに安堵しながら
「はい」
と返事を返し同じ新入生が向かう人波に向かって方向をかえ歩き出す
リゼルは彼から離れられた事に心から安堵した
はぁ~あの時学園長が来てくれなければ、または少し遅ければ名乗らされていたわ
リゼルは講堂の一番後ろの席に座り、在校生の祝辞や新入生の挨拶・学園長からの長々した歓迎の言葉に諸注意を聞き流しようやく終わる入学式に内心喜んでいた
後、もう少しね!早く終わったらお父様の部下と手合わせをしたいわ
なんて事を考えて、彼の事をすっかり忘れていたのが悪かったのか
「本日はスペシャルゲストをお招き致したした!!」
学園長の声のあとに姿を見せた真っ黒のタキシード姿の男性を見た瞬間リゼルは誰一人も気づかない様に、髪や瞳・魔力さえも他の人達と同じまたは似た色や量にし魔力をわざと漏らし存在さえ希薄にした。そして、席も真ん中の列まで移動した
これで気づかれないはずよね?
それでもリゼルは不安でしかなかった
「こうして皆の顔を見るのは初めてだな。俺は『ゾロアスター・レ・ソルセルリー』だ」
高貴族は顔を見た瞬間ざわつき低貴族は名前を聞いてざわついた
彼は僅かに口角を上げると更に爆弾を投下した
「今からここにいる新入生全員の実力を俺が見てやる外に出ろ!」
魔族は長生きなため5歳は人で言うと50歳となっております
魔族の15歳 → 人で言う 150歳