9話 保存食が不味すぎるんだが
見事に爆死したな······
てか、《残機ガチャ》を引いたのに何でお金が出るの?
『解。《残機ガチャ》はR以上で無ければ残機は得られません。Rは1機、SRは25機、SSRは50機、URは100機得ることが出来ます。』
俺はため息をつき落胆した。
「ユウキさん?どうかなさったのですか?」
「ん?あぁ、ちょっと爆死しただけだよ」
「爆死ですか?私には爆発してないし死んでないように見えますが······」
「あぁ、そういう意味じゃないんだ。気にしないで」
「そう言えば、ユウキさん達はどうやってフィーゲル領まで行こうとしていたんですか?」
「歩いて?」
「何で疑問形なんですか?」
いや、本当になんにも考えていなかったからな。でも、俺とフランなら歩いてでも行けそうだな。
「まぁ、いいでしょう。それでは、そろそろご飯にしましょうか」
「ごはん!!」
ご飯と言う言葉にフランが飛び起きる。
欲望に忠実だな。
馬車から降りて食事をする。
干し肉と黒パンである。
干し肉はなんというか塩っ辛い。どれだけ塩に付けたの?て思うぐらい辛い。これを食べ続けたら味覚障害と高脂血症になりそう。あと硬い。
黒パンは硬い。とにかく硬い。干し肉よりも硬い。歯が割れるかと思った。
ノエルとフランは何も気にせずに食べているが俺の口には合わなかった。結局、半分も食べることが出来ない。この世界の人達は歯と味覚が強靭すぎるだろ。
え?残った分はどうしたかって?フランが食べたよ。
まぁ、そんなんだからお腹が減ってしょうがない。森で集めたりした果実は殆どフランに食べられて今はもうない、街では調味料しか買わなかった。今食べられそうな物は蜂蜜と下級竜の肉ぐらいか······ん?下級竜って美味しいのか?
「ノエル、下級竜って美味しいの?」
「下級竜ですか?普通に美味しいですよ。ただ高級食材なため高いですけど」
なら食べみるか。
[宝物倉庫]から下級竜の肉を選択し取り出す。
シンプルに焼けばいいかな?あっ、フライパンが無いな······よし、作ろう。
フランと出会った洞窟で見つけた宝物庫にあった鎧を1つを[分解調合]でインゴットにして、それからフライパンにする。普通よりちょっと大きめにしておいた。
フランに大剣を借りて肉を適当な大きさにカットする。フランとノエルには肉をカットしている間に適当な枝と石を集めてもらった。
石を積み上げ薪を入れてフランに魔法で着火してもらう。フライパンに肉を放り込み焼く。ジューっといい音がなり、音と一緒に肉汁が溢れていた。そして、香ばし匂いが辺りを包んでいた。
腹が本格的に空いてきたな。
「「美味しそう······」」
フランとノエルはキラキラとした目でフライパンの中の肉を凝視していた。
さて、そろそろ焼き上がりかな?[宝物倉庫]から塩を取り出し適量振りかける。
よし、出来上がり。あっ、皿もフォークもナイフもないや。
慌てて3人分作りステーキをみんなに配る。
ナイフで肉を切り口へ運ぶ。
「「「!!」」」
う、美味い!!
こんなシンプルな作りでなんでここまで美味しいの!!
下級竜の肉は噛む度に肉汁が溢れ出し口の中が物凄く幸せな状態になった。少し獣臭いをはしょうがないとして普通に美味しかった。
「おいしぃ〜!」
「ユウキさん、これは何のお肉ですか!?」
「下級竜だけど?」
「下級竜!?そ、そんな高級食材を頂いてよかったのですか?」
「え?あぁ、別にいいよ。沢山あるし」
「沢山!?」
ノエルが何かさっきから驚きまくっているが······まぁ、いいか。それよりも、ちょっと薄いな塩を足すか。
「みんなも薄かったら塩を足してね」
ついでに作った塩入れを中心に置く。
「ユウキさん。この塩、白くないですか?」
「え?うん、そうだね」
「うん、そうだね、じゃないですよ!!白い塩なんて高級品を何で持っているんですか!?」
「作った」
「作った!?」
実際に[分解調合]を使って茶色い塩から不純物を分解しただけだからそんなに難しい事ではない。
「もしかして、ユウキさんは貴族とか大商人の息子だったりします?」
「いや?別に」
フランは魔王の娘だけど。
「ゆうき!おかわりちょうだい!!」
「はい、ちょっと待っててね」
フランのために肉を焼き皿に盛り付ける。
「それで、何で貴族とか大商人の息子だと思ったの?」
「そんな高級品を持っているからです。だいたい下級竜の肉と白い塩で忘れていましたが、このお皿やナイフやフォークもそうです!!普通の家では木製ですよ!!」
「そうなの?まぁ、ほぼ自給自足だし」
木なんて[宝物倉庫]に入れてなかったから無いし。
「自給自足?下級竜も自分たちで?」
「うん。そう────いや、貰ったんだよ」
「今言い直しましたね?」
「ナンノコトダカサッパリダナ」
視線をそらす。ノエルはじぃ〜っと、こちらを見つめていたが少ししてため息をついた。
「────わかりました。これ以上は追求しません」
「え?いいの?」
「追求して欲しいのですか?」
「勘弁ください」
「おかわり!!」
フランさんや少しは空気読もうや。てか、何枚食うんだよ。干し肉も俺の分だべていたよね?フランの胃袋はブラックホールか何かか?
次の肉を焼こうと[宝物倉庫]を開いた瞬間、[地形表示]に反応があった。
敵襲だ。
[地形表示]の右方向から10前後の赤色の⚫が接近してきていた。
[地形表示]の表示は今のところ魔物と人、そしてパーティメンバーに分けられていて、魔物は■、人は⚫、パーティメンバーは♥で表示される。そして自分たちに無害なものを青、有害なものを赤で表示するのだ。
つまり、赤で⚫って事だから────盗賊だ。
「どうしたんですか?」
「盗賊が接近してきている。早く移動するよ」
「え〜!お肉は?」
「後で焼いてあげるから」
盗賊と戦うなんて面倒くさい。さっさと逃げよう。
俺は荷物を[宝物倉庫]にしまう。馬車に乗り込み一目散逃げ出した。
あばよ!盗賊!お前らと戦う気は無いから逃げさせてもらうぜ!
俺は馬車を走らせ先へ急いだ。