8話 爆死したんだが
朝。宿の女将さんに今日で出て行くことを伝え門へ向かう事にした。まだ、宿泊の代金は残っていだがお金はあるしいいだろう。
今日出ていくことを伝えるとカルネちゃんが少し残念そうな顔をした。いつの間にかカルネちゃんとフランは仲良くなっていたようだ。カルネちゃんは、「また来てね」とかお別れの言葉をフランに言っていた。他にも「怪我や病気に気をつけてね」とか「ご飯の前にはちゃんと手を洗うんだよ」とか「寝る前にはトイレに行くことを忘れないように」とかだ。
なんか、友達ってよりお姉さんみたいだな······いや、お母さんか?
門の前まで来ると人だかりが出来ていた。
どうしたんだろう?並んでいる人に聞いてみるか。
「何かあったんですか?」
「あぁ、領主様に失礼を働いた奴がいて、そいつを探す為に点検が厳しくなってるんだ。はた迷惑な話だな」
すみません、その失礼を働いたの多分俺です。バレたら面倒くさそうだな······バレないようにしないと。
しばらく待つと俺らの番になった。元々人が少なかったから結構すぐだった。
ジロジロと服装を見られる。
「お前たちこの服の素材はなんだ」
「下級竜の皮ですけど」
「下級竜だと?······怪しいな」
「どうしたんですか?」
一応とぼけておこう。
「昨日、サーマル様の下級竜が盗まれたのだ」
「それは、大変ですね」
盗んだことになってるし······
「でも、この服はこの街に来る前からですよ」
嘘は言っていないよ。嘘は。
そのお陰で魔法道具の真実の鐘も反応しない。
「それで、お前達はどこへ行くんだ?」
「え?」
あっ、やばいどこへ行くか考えて無かった。
「え〜っと。と、隣の街まで?」
「隣の街?フィーゲル領の方か?」
「そ、そう!フィーゲルの方に行こうと思いまして」
「フィーゲル領まで馬車でと1週間掛かるぞ?そんな装備で大丈夫なのか?」
「あの。え〜っと。その······」
やばい、やばい。どんどん追い込まれているぞ。
「そんな用意でフィーゲル領の行くのか?そもそもフィーゲル領に本当に行くのか?ただこの街から出たいだけなんじゃないか?」
やばい!やばい!!やばい!!!
冷や汗が止まらない。どうすればこの状況を突破出来る。
「あっ!見つけました」
そんな声が聞こえ振り返る。すると、この前のポーション売りの女の子が馬車を引いてきていた。
「この方達は私の馬車の護衛なんです」
え?そんな話したっけ?
「成程、それなら納得が行くな。一応積荷を確認させてもらう」
「はい、どうぞ」
「────よし、通っていいぞ」
「行きましょう。乗ってください」
「お、おう」
ポーション売りの女の子の馬車に乗り込み道なりに進んでいく。
助けられたのか?
「その、ありがとう」
「いえいえ、この前は助けて貰ったんですから。それに、困った時はお互い様です。その代わり途中の護衛をお願いしますね」
「分かった。自己紹介がまだだったね俺はユウキ、こっちはフランだ」
「フランだよ!よろしくね!」
「私はノエルといいます。よろしくお願いしますね。ユウキさん、フランちゃん」
お互いに挨拶をし合う。
ポーション目当てだったけど助けておいてよかった。
「そう言えば護衛って?何すればいいの?」
「護衛をしたことは無いんですか?」
「まだ、駆け出しなもんで」
「そうですか。あんなにお強いので、てっきり熟練の方かと思っていました」
まぁ、実力だけ見れば熟練をはるかに越しているけど。
「護衛は魔物や盗賊から私と積荷を守ってくださればいいです」
「魔物はともかく盗賊なんて出るんだな······」
「比較的どこにでも出ますよ」
「盗賊を殺しちゃった場合は罪になるの?」
殺すつもりは全く無いがもしもの時の為に聞いておいて損は無いだろう。
「罪にはなりません」
なら、フランが手加減を間違えた時でも安心だな。
「それにしても、積荷を守るって言っても積荷はほとんど無いな。ん?これはなんだろ?」
馬車に積んであるのは木箱が2つだけだ。中を覗いてみると干し肉と水袋そして黒パンが敷き詰められていた。
「それは食料ですね。ポーションの材料やポーション自体は[宝物倉庫]に入れてますから私の身を守ってくださればいいです」
「わかった。任せておけ」
馬車は道なりに走り続ける。
▼▼▼▼▼
暇だ。
馬車を走らせて4日たった。やっと半分だ。
[地形表示]で確認しているから魔物とかが近づいてきたらすぐ分かるし、そこまで警戒しなくてもいい。フランも余裕過ぎて寝てるし。
[遊戯機能]の中身でももう一度確認するか。一通りは見たけど流し見だったし。
面白そうなものはないかな。────おっ![課金召喚]って面白そうだな。
[進行補助]先生!説明お願いします。どういうの?
『解。ガチャ石を消費することで様々な物を召喚出来ます。』
ガチャ石?ってどうやって集めるの?
『解。[起床報酬]や[攻略対象]で特定の項目をクリアすれば集められます。』
[起床報酬]とか[攻略対象]とか本当にゲームだな。
『告。[報酬受箱]を確認しますか。』
はいで。
え〜っと、まず[起床報酬]でガチャ石が20個。今日で4日目だから1日5個か。
次は[攻略対象]か。どんなのがあるのかな?
『初めて魔物を倒した!!』『初めて竜を倒した!!』『初めて物を作った!!』『初めて採取をした!!』『魔物を5体倒した!!』『魔物を10体倒した!!』『魔物を15体倒した!!』『初めて仲間を作った!!』『初めて街に入った!!』······etc
全部受取っと······
『ガチャ石×280個』
全部で丁度300個か。多いのか少ないのか分からないな。
どれぐらいで10連出来るの?
『解。500個です。』
1回50個か。
今は6連出来るな。どうせなら10連したいけど······
他にもガチャ石を手に入れる方法は無いの?
『解。お金を[物質交換]で交換すると手に入れれます。』
まんま課金だな。折角だし課金するか。
200個、購入っと。よし、早速引いてみるか。
[課金召喚]起動!!────うん?
『初回限定10連無料!!UR1個以上確定!!』
マジかよ。課金したい意味を無かったじゃん。
まぁ、いいか。さて、引きますか。
10連ガチャのボタンをクリックする。
すると目の前に現実のガチャガチャが現れた。真ん中の部分を回すと取り出し口から勢いよくカプセルが10個飛び出した。
青色が5つ。赤色が3つ。虹色が1つ。黒色が1つだ。
虹色は発光し過ぎだろ。眩しい。
それで、どれがどれだ?
『解。青色がN、赤色がHN、銅色がR、銀色がSR、金色がSSR、虹色がUR、黒色がハズレとなります。』
Nが5つ。HNが3つ。URが1つ。で、ハズレが1つ······ハズレってなんだよ!
『解。ハズレです。3つ集めるとUR確定チケットになります。』
そういう事なら、まぁいいか。とりあえず開けていこう。ランクが低いのから開けていくか。
カプセルを開けると中から物が飛び出してくる。どうやってサイズ変換しているのだ?
結果
N
・革手袋
・リンゴ
・100ゴールド
・皮防具
・角兎の角
HN
・長剣
・カイフク草×2
UR
・ヘルメスの靴
Nは、本当に要らないものばっかだな。HNは、まぁそこそこ使えるものか。
URは······ヘルメスの靴?
ヘルメスの靴は金属で出来たブーツの様な物で、靴には2対づつ小さな翼の絵が付いていた。
どういうものなんだろう。
『解。履くと羽の絵が具現化し自在に空を飛ぶことが出来ます。』
成程便利。早速装備するか。
そう言えば、排出率ってどれぐらいなんだろ。
『解。Nが50%、HNが25%、Rが13%、SRが1.5%、SSRが0.4%、URか0.099%、ハズレが0.001です。』
ハズレの確率低っ!ハズレなのにハズレじゃないよ!
これ、3枚集めるのもキツくない?まぁ、貯まったらラッキー程度で考えておくか。
よし、もう1回10連するか。
ん?いろんなガチャがあるな。
《ALLガチャ》《武具ガチャ(全部)》《武具ガチャ(武器)》《武具ガチャ(鎧)》《素材ガチャ(全部)》《素材ガチャ(魔物)》《素材ガチャ(植物)》《薬ガチャ》《魔物ガチャ》《残機ガチャ》······etc
武具とか素材はいいとして《魔物ガチャ》《残機ガチャ》ってなんだ?
『解。《魔物ガチャ》は魔物を仲間として召喚出来ます。《残機ガチャ》は残機が増やせます。』
残機が増やせるの!!
なら、《残機ガチャ》一択で!!
「こいっ!!」
念じながらガチャを回す。
そして出てきたのは────────青1色だった。
マジかよ······
まだだ、まだ諦めん!!
カプセルを全て開放する。
結果
・100ゴールド×10
マジかよ······
見事に爆死しました。