5話 魔物が街を襲って来たのだが
寝て起きたのに夢から覚めなかった。
ところでコレは本当に夢なのか?昨日は興奮気味だったのでまともな判断が出来ていなかったが、よくよく考えればおかしい。夢は普通、夢って分かったら覚めるものだし痛みは感じるはずだしな。
考え事をしていると右側の布団が動くのを感じる。布団をめくってみると寝息を立てているフランがいた。そういえば一緒に寝たんだった。
うん、可愛い。こんなに可愛い生物が現実にいるだろうか?この事から夢だと思ってしまう。と言うか、本当に夢なら覚めないで欲しいぐらいだ。
まぁ、夢でないとしたらこの状況はなんなんだ?······まさか、異世界とか?
友達のネット小説が好きな奴が妙に俺に推して来ていた、異世界転生とか異世界転移なのか?というか、もうここまで来ると異世界って言ってもらった方がしっくりくるな。
じゃあ、なんで異世界に来たんだ?死んではいないはずだから転生の方ではなく転移だろう。こんな事になるならもう少しアイツに色々異世界について聞いておくべきだったな。
まぁ、本当に変わった夢かもしれないけどな。
今後はのんびり街や国を周りながら元の世界に帰るもしくは夢から覚める方法を探していこう。
俺はまだ夢というせんを諦めてはいないぞ!!確率的に言ったらかなり低いだろうけど······
さて、そろそろ起きますか。
俺がベッドから出ようとするとフランが振動で目を覚ました。フランは目を擦りながら挨拶をする。
「ん〜、ゆうきぃ?おはよぉ〜」
「おはようフラン。これから街に買い出しに行くけど一緒に来る?」
「うん」
フランと一緒に着替えを済ませ下に降り朝食をとる。黒パンとスープで夕飯に比べると質素だったが美味しかった。黒パンは硬かったけど······
さて、買いたいものまずは塩だ。
森でサトウキビを手に入れた為、砂糖はあるが塩が無い。海とかに行けば海水からいくらでも作れるが、それまでないと困るので買いたい。
次に服だ。
まぁ、糸や布ででもいいのだが。持っている服が今着ているの1着っていうのもあれだから新しい服を買うか作るかしたい。いい物があれば買い無ければ作る方向で行こう。
最後に武器だ。
何かと物騒な世界なので護身用の武器が欲しいのだ。特にフランには悪い虫がつかないようにしなければ!!
さて、塩が売っているところに来た。塩が何故か色が白くない。茶色とまではいかないがそんな感じの色だ。それに加えて高い。串焼きの方が安いと思うぐらいだ。
塩が白くないのは不純物が多く含まれているからだからだっけ?それでこんなに高いとかふざけているな。
「白い塩は無いの?」
「白い塩だと?そんな高級品はうちでは扱ってねぇーよ」
白い塩は高級品らしく、市場で売っていることは少ないらしい。仕方がないので茶色が混ざった塩を5kg買って次の店に行くことにした。
次は服だ。
少し高そうな服屋に入る。端から端まで服がびっしり置いてあり、可愛い服もあったが旅には向かなさそうな服ばかりだったので結局買わないで布と糸をだけを買った。
最後に武器屋だ。
フランにいい武器があればいいのだが。
「この子に合う武器を見繕ってくれない」
「なら、この短剣はどうだ?体格的にもこれぐらいがいいと思うぞ」
武器屋のオッサンに短剣を受け取りフランに渡す。フランは何回か短剣を振り感覚を確かめる。
「フラン、どうだ?」
「う〜ん、かるい?」
「そうか。オッサン、もっと重い武器を出してくれ」
続いてロングソードにメイス、ウォーリアハンマーを試したが合わないらしい。
「これより重いのって言ったらコレしかないな」
そう言って巨大な大剣を奥から引っ張り出してきた。刃渡り2メートル30センチ。フランの身長の2倍程ある剣だった。
フランは、何度か大剣を振り感覚を確かめる。大剣が振られる度に風が起こる。
「うん!コレがいい!」
「マジかよ。嬢ちゃん力持ちだな」
「えっへん!!」
代金を渡し大剣を引き取る。因みに防具を買わなかっのは下級竜の皮の服はかなりの防御力を誇るため今の服で充分だと考えた為だ。
さて、そうたいして時間が経っていないし何をしおうか。
そう、考えているとカンカンカンカンと鐘の音が街中に響き渡った。
何だ?何かあったのか?
「おい!お前ら早く家の中に避難しろ」
「何かあったのか?」
「魔物の襲撃だ。危ないから家の中にいろよ」
あの鐘は魔物の襲撃を知らせる音のようだ。
まぁ、街の軍がどうにかしてくれるから何もしなくていいだろう────あれ?突破されてません?
壁を越えて下級竜が街に入ってくる。
この街の軍は何やってんだよ······
放っておくと被害が広がりそうだな。
「フラン、行くぞ」
「うん![炎投槍]!!」
「えっ?おい、ちょと待っ────」
「いっけぇー」
フランはいきなり魔法を発動した。上空に火の槍が複数生成され、俺の制止を聞かず下級竜に向けて放たれる。
火の槍が次々と下級竜の体に突き刺さり燃え上がる。
下級竜の翼には穴が開きそのまま墜落していく。
いや、街に落としたら落としたらまずいだろ。
「[遊戯補助]起動!」
慌てて下級竜の落下地点に走り込み、落ちてきた下級竜を壁の向こう側に向けて蹴り飛ばす。
ふ〜、危ない危ない。
でも、なんで軍はこっちに来ていないんだ?
軍の様子が気になりフランを連れ壁を登り確認する。少し遠くで見ずらいが何かと戦っているようだ。
『告。[各種設定]の[視点調整]を使用しますか?』
「よろしく」
[視点調整]で少し遠くまで見えるようになった。
どうやら襲撃して来た下級竜は2匹いたようで、軍は1匹で精一杯になっていたようだ。
助けに行く前に先程倒した下級竜を回収する。
[宝物倉庫]に入れて終了。
「そう言えば剣をまだ試していないな。フラン、あの下級竜で試そう」
「うん!わかった」
軍の近くに行き様子を見る。下級竜にたいして盾の部隊が攻撃を防ぎ、長い槍を持つ部隊が攻撃をしていた。たまに魔法も飛ぶが威力が弱くあまり効いていないようだった。
下級竜がはばたく度に風が吹き荒れて多くの兵士が吹き飛ばされてゆく。
「早くコイツを倒して街に行ったもう1匹を倒しに行かないと大変な事になるぞぉ!!お前ら急げぇ!!」
門番をしていたオッサンが指揮をとっていた。
あの人偉い人だったんだ······
さて、そろそろフランを行かせるか。[宝物倉庫]から昨日、買ったお面を取り出してフランに付けさせる。
これで正体を隠そう。
「行っていいぞ」
「うん!いってきまーす」
まるで遠足に行く子供のようにウキウキしながらフランは軍の人達の間を通って下級竜へ向かっていく。
「なんでこんな所に子供が!?」
「お嬢ちゃん!危ないから避難して!!」
軍人達はフランの姿に動揺しだした。そんなことはお構いなしでフランは突き進む。そんなフランを見た下級竜は一直線にフランに向けて下降して来た。
「てぇりゃぁあ!!」
そんな可愛らしい掛け声とともに大剣が振られ、向かって来た下級竜の顔を真っ二つにしてしまった。
軍人達は信じられない光景に沈黙してしまった。そして、しばらくして歓声が響き渡った。
「「「「う、うぉぉおおおおおおおお!!!」」」」
次々と軍人達がフランにお礼を言っていく。フランは嬉しそうに胸を張ったのだった。