17話 奴隷を拾ったんだが①
馬車を走らせ数日がたった。
最近、魔物の出現率が高くなったなと思う。気のせいだろうか?
『告。魔王の領土内に入っているためだと考えられます。』
ふぁっ!?魔王領!?
なんでこんな所に魔王の領土があるんだよ!
『解。あるもんは仕方ないんです。』
答えになってねぇ······魔王に会う確率は?
『解。非常に低いです。』
ならいいか。
まぁ、入ってしまったものはしょうがない。王都までの最短ルートを通ってるんだ。早く着く分よしとしよう。
道なりに[地形表示]で魔物を気にしながら進む。
今のところ異常な────ん?
[地形表示]に反応があった。この先の道に何かがある。
「フラン、馬車の速度を落として」
「うん」
慎重に道を進んで行く。しばらくすると半壊した馬車が数台転がっていた。
こりゃあ酷い。
馬車の周りには血が飛び散り人だったものが転がっていた。吐き気がこみ上げてくるが我慢する。
我慢できるあたりだいぶこの世界に慣れてきたな。でも、慣れていいものなのだろうが······
全員死んでいるかの?
『告。1名だけ生命反応があります。』
生きているのを探すと女の子がいた。髪と肌が真っ白ので、服はボロボロの布キレのようなものだった。全体的に少しやつれているように見える。年は15歳ぐらいだろうか。
それよりも気になるものがある。それは彼女の首に巻きついているごつい輪っかだ。何だコレ?
『解。奴隷の首輪です。』
奴隷······
この世界には奴隷の制度があるんだ。じゃあ、この子の主人は?
『解。現在登録されていません。おそらく死亡したと考えられます。』
とりあえず、女の子を回収しフランに[洗浄]をかけてもらう。
転がっていた肉塊を集めて馬車と一緒に燃やして火葬した。
どうか成仏して下さい。
一応、遺品になるかと思い貴重品だも思う物は回収しておいた。
女の子を馬車に乗せ、走り出す。
流石に放置は出来ないんだろ。
しかし、この子身長の割には胸が────ゲフン!ゲフン!身体の発育がいいな。服がボロボロなので色々なところが零れそうで目のやり場に困る。テキトウに服を作ってフランに着替えさせてもらうか。
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「う、う〜ん」
馬車を止めて野営の準備をしていたら、女の子が目を覚ました。
「目が覚めたかい?」
「私はいったい······」
「ボロボロの馬車と一緒に倒れていたけど、覚えていない?」
「────っ!······お、思い出しました。馬車が魔物に襲われて、それで······」
女の子はよっぽど怖かったのかふるふると弱々しく震えている。
「一旦これを飲んで落ち着いて」
今日の夕飯用に作っていたスープを渡した。
「温かい······いいんですか?」
「うん、いいよ」
女の子はゆっくりとスプーンを口に運び、スープを飲んだ。
「美味しい······」
「好きなだけ飲んでいいから」
「ありがとうございます、ありがとうございます────」
女の子は留め具が外れたよう涙が溢れ出し、ポロポロと泣き出してしまった。何度も何度もお礼を言いながら。
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女の子はスープを飲んでから落ち着いたのか、疲れたのか眠ってしまった。
今はフランが横についているから何かあっても大丈夫だろう。
さて、この子をどうするべきか。なんで奴隷になっているかは分からないが、出来ることなら解放してあげたい。そう言えば奴隷の首輪ってどんな効力を持っているんだ?
『解。主人を傷付けたり、主人の命令に逆らうと締まっていきます。』
うわぁ、思ったよりえげつないな。
どうすれば解放できる?
『解。その首輪ごとに専用の鍵があり、それで解放できます。』
鍵か。集めた貴重品らしき物にそんなのなかったしな。無理矢理取れないのか?
『解。無理に取ろうとしても、首を締めます。』
無理矢理はダメと。
ん〜、とりあえず保護しておくか。ここは魔王の領土らしいし危険だからな。
ん?そもそも、なんで魔王の領土なんかをあの馬車は通ったんだ?危険だから普通は通らないはずだし、もしかして俺のように知らなかった────は、ありえないか。
まぁ、その辺も含めてあの子が起きたら聞いてみるか。
あっ、そう言えばあの子の名前を聞いてなかったな。起きたらそれを第1に聞かなきゃな。