11話 盗賊がしつこいんだが
「待てゴラァ!!」
「待てて言われて待つ奴がいるか!」
俺たちは盗賊団に追われている。理由は簡単、盗賊団の宝物庫を頂いたからだ。
「俺たちの宝を返せぇ!」
いや、お前らの物でもないだろ。
それにしてもなかなか距離を離せないな······
向こうの馬車の方が人が乗っているが馬がいいのかなかなか引き離せない。
時折、矢を放ってくるがフランが大剣で受け止めて、俺が[宝物倉庫]に次々と収納して行く。
勿体ないもん。しょうがないよね?
「フラン!軽めなやつ地面にぶち込め!威力じゃなくて量に詰め込む方向で!」
「うん![火矢]!!」
上空に火の矢が大量に生成される。火の矢は空を埋め尽くす程あり一斉に放たれる。道に火の矢が突き刺さり地形を変えていく。道は凸凹になり盗賊の馬車が大きく揺れバランスを崩し倒れる。
追って来ている馬車3台のうち1台減らせた。
「アレックス!!」
「大丈夫だ!!俺達のことはいい先に行けぇ!!あとは頼んだぞ!!」
「任せろ!!」
盗賊の名前無駄にカッコイイな。盗賊じゃなくて騎士とかやれよ。それに、会話だけ聞いていると凄くカッコイイ感じになっているし。俺達が敵みたいな感じにしないで欲しい。
まだ、盗賊団からの逃走は終わらない。
▼▼▼▼▼
「待てぇ!」
途中から矢が切れたのか矢が飛んでくることが無くなってきた。飛んでくるのは罵倒だけ。
これで安心────うぉ!?
矢ではなく火の球が飛んできた。────魔法だ。止まることなく次々と火の球が飛んでくる。
「フラン!アレを相殺出来る?」
「やってみる![火球]!!」
フランと盗賊の[火球]が衝突した。ドォーンっと音が響き風が吹き荒れる。風に煽られて馬車が大きく揺れる。
危なっ!これ以上やらせたら危険だな。
「フラン、もう撃たなくていいよ」
「えっ?いいの?」
これで馬車が倒れたら元も子も無いしな。仕方ない。
「[不正能力]、[判定無し]発動」
コレで5分は安全だ。
魔法は馬車に当たることが無くなった。当たっているように見えるような時でも当たらない。
「なんだ!?」
「は?今、当たっただろ!?」
[判定無し]は当たり判定が無くなる。つまり攻撃が一切当たらないのだ。
これで諦めてくれるといいのだが······
まだ、盗賊団からの逃走は続く。
▼▼▼▼▼
1時間後。
しつこいな······
未だに追いかけてくる盗賊を見ながら思う。今では最初に潰したアレックスも復活している。
「ユウキさん」
「うん?なんだ?」
「お宝を返して逃がさせてもらいましょう」
ノエルが当提案してくる。盗賊の方を見てから言葉をかえす。
「ハッキリ言ってもう手遅れた」
「何でですか?話し合えば逃がしてもらえるかも知れませんよ」
「いや、盗賊たち見てみ」
ノエルは不思議そうに盗賊達を見た。
「待ちやがれぇえええ!!」
「ぶっ殺してやる!!」
目を充血させ息を荒らげ、額には青筋がたっていた。
これはもう手遅れだろ。まぁ、返す気も元から無いけど。
ノエルは「あぁ······」と納得したように言葉を漏らした。
はぁ、いい加減逃げれないかな。······ん?何か向こうから来るな。なんだ?
「ユウキさん、他の商人です!このままだと巻き込みます!」
マジかよ。
このまま街に逃げ込めれば勝ちだと思っていたが、そうも簡単に行かないらしい。
「逃げてください!盗賊です!!」
ノエルが向こうの馬車に向かって叫ぶ。向こうの馬車は慌てて方向転換しているが間に合わなさそうだ。
仕方がない。
「フランやるぞ」
「えっ?殺っていいの?」
「ニュアンスが違う気がするな······殺さないように捕まえるぞ」
「わかった!」
フランと馬車から飛び降りる。
「ノエル!先に行っててくれ巻き込むとまずいから」
「わかりました!街に行って兵士を呼んできます!」
さて、行きますか。
「[遊戯補助]起動![難度変更]普通から簡単へ」
これで準備完了────
『告。相手に数名手練がいます。[不正能力]の使用を推奨します。』
「······[不正能力]、[判定無し]発動」
[進行補助]先生の言う通りにしておく。
「死ねぇ!」
・盗賊Aの攻撃。────しかし、ユウキには当たらなかった。
・盗賊Bの攻撃。────しかし、ユウキには当たらなかった。
・盗賊Cの攻撃。────しかし、ユウキには当たらなかった。
「何でだ!なんで当たらねぇ!」
「無駄だ、よっ!」
「がっ!」
剣での攻撃を完全に無視して足刀蹴りを決める。足刀蹴りは、足刀いわゆる足の小指側の側面やかかとで蹴る技だ。威力が大きいので結構お気に入りの技でもある。
盗賊Aは吹き飛び地面を転がった。
「てめぇ!」
盗賊Bが盗賊Aがやられたのを見て怒りながら剣を振りかぶる。
剣を上に振りかぶって下半身がガラ空きだったので金的蹴りをする。金的つまりチ〇コだ。
盗賊Bは自分の股間を押さえてその場てうずくまってしまう。
自分でやっておいてなんだけど痛そう。あれ?もう1人は?
盗賊Cはどこに行ったのか周りを見ると少し離れたところにいた。
「アレックスとアキレスの仇!喰らえ[火矢]!!」
相変わらず盗賊らしくない名前だな。アレックスだけと思ったけど他にもいたか。アレックスにアキレス、ここまでくると盗賊Cはどんな名前かきになるな。
盗賊Cによって上空に火の矢が生成される。フランよりも数が少なく3本しかない。
躱さなくても当たらないしいいか。
火の矢は俺を目掛けて真っ直ぐ飛んでくる。そして、俺まであと1mぐらいまで迫った時だった。
『告。5分経過しました。』
なにぃ!?
無敵状態が切れたのだ。慌てて横に飛び退く。
少し掠ったな、危なかった。下級竜の革製じゃ無かったら即死だっぜ。
「魔法は躱した?もしかして魔法は効くのか?よし、弱点を見つけたぞ!もう1回、[火矢]!!」
盗賊Cが変な勘違いをしているな。残念ながら、それはハズレだ。
「[不正能力]、[判定無し]再起動!」
火の矢は俺に当たること無くすり抜ける。
「なっ!?」
「残念でした」
俺は、盗賊Cに近づき飛び上がり踵落としを脳天に決めた。
いっちょ上がり。さて、フランの方は······
フランを方を見ると黒焦げになった盗賊が山のように積み重なっていた。フランは満足そうに鼻息をフスンと出していた。
死んでないよね?
『解。大丈夫だ、問題ない。』
あんたの返し方が問題だよ!
まぁ、生きてんならいいや。
とりあえず盗賊を1箇所にまとめて盗賊の馬車に積んであったロープで縛り上げておいた。
俺たちはノエルが戻ってくるのを待つことにした。
「ゆうき〜おなかすいた〜」
────肉を焼きながら。