10話 逃げ込んだ所が不味かったのだが
[地形表示]を見ながら盗賊達の動きを観察する。
何故か明らかに俺たちと同じ方向に来ている。道を曲がる手順もまるっきり同じである。
何でだ?
草原を走り続けると森が見えてきた。道は森を避けるように設置してある。森は魔物が出やすいからだろう。所々に獣道はある。
あえて、森の中で隠れれば盗賊をまけるんじゃないか?
「ノエル、森へ行こう」
「森ですか?魔物が沢山いますよ。何でですか?」
「盗賊が未だに追いかけているから森で一旦隠れようと思ったんだ。魔物は気にしなくていい」
「成程。わかりました」
馬車は方向を変えて森の中へ、獣道を進んで行った。
森の中を進みながら採取もしていく。
だって、勿体ないもん。
火炎茸、麻痺茸、猛毒茸、幻夢茸、眠り茸······キノコばっかりだな。
あと、カイフク草もそこそこあった。
しばらく、走ると洞窟があった。
「ここで隠れよう。そろそろ日が暮れるし」
洞窟に入り、奥まで行く。洞窟の穴は広く馬も通れるほどだった。
にしても、めちゃくちゃ広いな。
洞窟はかなり奥まで続いており、しばらく奥まで行くと広い空間があった。
そこで夕飯をとり、野宿をした。
▼▼▼▼▼
5日目朝。
マジかよ。
盗賊が森の中まで来ていた。しかも、洞窟のすぐ近くまで。
本当に何でこいつかここまで一緒の方向に来るの?ストーカーなの?
とりあえず、もっと奥へ移動するか。こんな大広間じゃ1発で見つかるし。
フランとノエルはまだ寝ているので馬車に乗せて2人を更に奥の部屋へ連れていった。
[地形表示]で1番奥の部屋への行き方を調べて奥へ進む。
これは、暫く待機だな。さっさと盗賊どっかいってくれないかな。
そんな俺の希望とは裏腹に、盗賊は洞窟の中に入ってきた。
どんだけ、ついてくるんだよ!そろそろ不味いか?
しかし、盗賊達は広い空間から動かない。
何でだ?
不思議に思いながら[地形表示]を確認していたらとんでもないことに気がついた。
[地形表示]で洞窟の表記が[盗賊団:鳶の基地]となっていた。
嘘ん······自ら敵陣に突っ込んじゃったよ。
「あ〜フラン、ノエル」
「なんですか?」
「どうしたの?」
「この洞窟────盗賊団の基地みたいだわ」
「ほ、本当ですか?」
「うん。本当」
「ど、ど、ど、どうしましょう」
ノエルは目に見えるほど慌てていた。
それに対してフランは────
「とうぞくだん?」
現状がよく分かっていないらしい。まぁ、フランなら余裕だろうが。
おっと、[地形表示]の赤⚫が数個動き出したな。盗賊団の数人がどこか行くな······って、こっち来てるじゃん!
赤⚫が2つこちらに接近してきているのだ。念の為武器を装着し警戒する。 が最後の別れ道で違う方向へ行った。
ふ〜ヒヤヒヤしたぜ。
赤⚫は俺たちのいる空間の隣の空間に入っていった。しばらくすると元の1番広い空間に帰って行った。
一体何があるんだ?と、[地形表示]で見てみると[宝物庫]と表示された。
よし!全部貰っていこう。え?泥棒?気にするな。相手も泥棒だ。それに、ノエルに盗賊の盗品はどうなるか聞いたら盗賊から奪い返した人のものって言っていたから問題ない。
善は急げだ。さっそく隣の宝物庫へ移動、[宝物倉庫]に全部収納。そして帰還。
やったね!お金が増えたよ!
さて、脱出だ!
え?どうやって出ていくかって?
正☆面☆突☆破
だって、もうコソコソするの面倒臭いもん。
「いっけぇぇええええ!」
フランの変え声と共にノエルが馬車を走らせる。
「うぉお!?」
「なんだ!?なんだ!?」
盗賊達は突然のことに驚き慌てふためいている。
その間に洞窟を飛び出し逃げていった。
「お、おい!宝物庫は無事なのか!?お前見てこい!!」
「はっ!はい!!」
しばらくすると宝物庫を見に行った盗賊の1人が帰ってきた。
「やられました!なんにも残ってないです!!」
「お前ら全力で追ぇぇぇえええええええ!!」
「「「「「「おぉ!!」」」」」」
盗賊達は逃げていった馬車を全力で追いかけるのだった。