35:馬ゲット
最短距離で街道に出て町まで歩く事約35分、衛兵の守る門前に到着し、入場を待つ列に並びいよいよ俺達の番となった。
「身分証を見せて貰おうか」
手袋をつけた状態で6人とも提出した。
「冒険者か、何処から来たんだ?」
「帝国だ、元々エリュード王国とは戦争状態だったが本格的に攻めるんじゃないかと噂が飛び交ってな、確認をする必要があったのだが、その時間が惜しくてさっさと脱出して来たんだよ」
「それじゃ知らないのか? すでに帝国内へと攻め入り、町1つが陥落したと連絡が入ったぞ、お前の判断でPT全員が助かった様だな、何はともあれようこそグランゲイルへ」
「すまないがお勧めの宿屋って無いかな、冒険者ギルドへも寄りたいが先に宿を確保したいんだよ」
「なるほどな、身なりからするとかなり稼いでる様だ、結構値の張る宿だが冒険者ギルドが近いからそこを紹介しよう。
直進すれば右手に冒険者ギルドがある、3階建てなので目立つから解るだろう、そこを通り過ぎ1分も歩けば右手に見えて来る一軒目の宿だ」
「ありがとう助かるよ」
帝国と違い道幅が広く、一軒一軒の間が結構開いている、建物自体は木材を利用したものばかりだ。
行きかう人々に活気が無い、活気が無いと言うより生きが無いとでも言うべきか? 暗く落ち込んでる様にしか見えない。
こうして宿屋に朝晩の食事付きで大部屋1部屋を確保して冒険者ギルドへと向かった。
中に入るとさすがにまばらだ、昼過ぎだし当たり前か、そして受付の人に話しかける。
「すまない、魔馬の居るダンジョンを探してるんだが、何処にあるか教えて貰えませんかね?」
「それはユニコーンやペガサス、スレイプニールと言う事でしょうか?」
「そうそう、召喚獣として手懐けたいんだよ、その他にも予定はあるんだけどね」
「正確には何をご所望なのですか?」
「そうだな、人から聞いただけで正確性に欠けるから聞いてもらうかな、ユニコーン、ペガサス、スレイプニール、ミノタウロスの4種だ」
「それでしたら目的のダンジョンは一つでございますね、相応の実力の証明と国からの許可を得ねば入ることが出来ません、先ずは身分証を拝見してもよろしいでしょうか?」
6人分纏めて渡す。
「【真摯の断罪者】のPTの方々でしょうか?」
「そうだな、それで間違いない」
「BランクではありますがSランクへと推薦された事を承知しておりますので実力的に問題は無いと判断致します、許可とは申しましたが、ダンジョンへ入場の際に入場税を支払う事が義務付けられております、金額は金貨100枚です、それも指定した階層のみ入場が可能です、お支払いはダンジョン前に受付が御座いますのでそちらへお支払いください、後程ギルド発行の許可証を差し上げます」
断ったのがつい先ほどだからな、どうやって移動しただの聞かれたら不味い事になったが助かったのかな。
「そもそもダンジョンは何処にあるんだ?」
「毎朝直行便の馬車が東門から出発します、代金は必要ありませんのでダンジョンへ向かう旨をお伝え下さい。
召喚獣としてとお聞きしましたが、その内ユニコーンとスレイプニールであれば国が力を入れてる為捕らえる為の情報を販売されております、入用でしたら入場税をお支払いする際にお尋ね下さい」
「至れり尽くせりだな、それで、他に何か特別な魔物とか居ないか?」
「魔馬に関してのみでしたら、スレイプニールが居る階層は最下層です、そちらのボスがスレイプニールの王とも言うべきフレイプニール、全高5メートルほどの巨体です、未だかつて手懐けた者が居ません、決して近づかない様にして下さい」
「ご忠告痛み入る、早速明日にでも行ってみるよ」
ギルドカードを返却され、割符のような木の切れ端を受け取った。
後は町を散策し、武器屋と防具屋を眺めるも大した品は取り扱っていなかった、帝都に比べて数段は落ちるだろう、なにせ材質が鋼鉄止まりだ、例のダンジョンが近くにあるから重要な拠点だろうに、後は宿屋に戻りマッタリ過ごして翌朝直通便の馬車に乗り込むが俺達だけであった。
そして到着すると騎士が待ち構えており受付へと案内された。
「身なりからすると冒険者だな、受け取った許可証と金貨100枚を提出しろ、それと目的を言え」
金貨100枚入れている巾着と冒険者ギルドで受け取った許可証を渡しながら答えた。
「目的は4つ、ユニコーンとペガサスとスレイプニールとミノタウロスを欲しています、今日は先にスレイプニールの元に行きます」
「本物の様だな、割符からするに召喚獣として捕らえる為か、しかし4種も狙うと言って来た者は初だな。
ユニコーンとスレイプニールに関しては捉える手法が存在し、その情報を販売している、入用かね?」
「教えて頂けるのでしたら売って頂きたい」
「そうか、ならばスレイプニールの情報だが金貨200枚だ、無ければ自力で模索する事だな」
「いえいえ、お支払いします、有益な情報ともなれば金額が張るのは当たり前、時間短縮と命の危険が減るのです、妥当な金額でしょう」
更に巾着を2袋手渡す。
「中にはこの金額をお気に召さない輩が居てな、結局は捉える事が出来ずに手ぶらはおろか死人まで出して帰る者達が圧倒的に多い。
スレイプニールの攻撃方法は突進による突撃と、足による蹴りだ、最大の攻撃方法である突進を一人で食い止め心を折れ、その際に契約をしろ」
「なるほど、餌付けでは無いのですね、日を改めユニコーンにも挑戦するつもりです、そちらの情報もあれば売って頂けませんか?」
「あの魔物は有用だ、秘薬の素材としても移動手段としてもな、よって移動のみにしか利用できないスレイプニールの情報りよりかなり割高、金貨500枚だが買うかね?」
買いますと答えながら更に5袋を渡す。
「これほどの金額なのにポンポン出す辺り、相当稼いで実力も高そうだな。
ユニコーンは女性にしか懐かない、そちらの女性達を前面にして行けば攻撃も仕掛けて来ずに近寄って来るだろう、撫でたり餌を与えたりして完全に懐いた頃に契約を交せ、それまでお前は近寄らない事だ、懐き方が半端な状態だと男に攻撃してくる、そうなったら二度と懐かないから殺せ」
「餌は肉でも大丈夫ですか?」
「問題無いが安物の肉などを与えるなよ、高級な肉を与えろ、その方が確立が増す」
「なるほど、丁度昨日倒したオークキングの遺体がありますので、それを用いたいと思います」
「ちょっと待て、それは町の南方に居座っていたのを倒したのか?」
「たぶんそれでしょう、時間短縮の為に森を突っ切っていたら偶然発見しまして、不意打ちして全て倒しておきました」
「あれらは余りにも町に近いからと2・3日中に討伐隊が組まれる予定になっていた、すまないが今も所有してるのなら見せてくれないか」
「では外に並べましょう」
キングと重武装のナイトに杖持ちの魔法使い系のオークを取り出した。
「間違いないな、しかし、やけに奇麗だな損傷が見受けられん、どうやって倒したのだ?」
「倒し方は省きますが、内臓の方がボロボロになっていますよ、試しに切ってみますか?」
「そうだな切ってみるか、それと倒した手法を教えて貰えるか?」
「それは駄目ですよ、それを知られては危険がつき纏います」
焼けたら見づらいからな、ティアに両手大剣を出してもらい地面ごと縦に真っ二つにした。
「対策を知られては確かに危険だものな、確かに聞きたくはあるが無理強いは出来ない、今回は諦めよう、金銭で教えても構わないと思ったら売ってくれ、極端に高くなければ買い取らせて頂く。
しかし、見事に内臓がやられているな、死亡したのも頷ける」
「あまり期待はしないで下さいね」
「わかった、それでは転移門までは騎士が案内する、出て来ないからと探索隊を派遣すると言う事は無いからな、十分注意してくれ」
そして案内された場所には49もの転移門、全50階層の様だ、その内の右端が今回目的地の最下層だ。
因みに1階層はただの兎、倒しても無駄なので全員スルー。
「さてと、到着した訳だがとりあえずボスをとっ捕まえたいな、場所は一部屋だけ隔離された中に1匹しか魔物が居ないんでそこだとは思うんだが、罠が多すぎる、下手に歩くと引っかかりそうだし飛んで行くかね、それは良いんだけどさ、魔物って罠に掛からんの?」
「何故か掛からないんですわよね、ダンジョンが罠も魔物も生み出してると考えれば特殊な保護を与えてるのでしょうか?」
「そうかもしれないが考えても無駄か、それじゃペアになって飛んで行くぞ、魔物は避けて行くからな、面倒だし、ってにやけて傍に寄るって事は抱けって事?」
「当然ですわよマグロちゃん」
「そろそろさ、覚えないか? 【フライ】をさ」
「・・・・・」
仕方ないのでお姫様抱っこして飛んで行く、いやぁラッキーだな誰も居ないなんて、捕まえ放題じゃないか、ボス部屋前まで到達し、扉を開いて侵入すると全高5mほど、頭からシッポまでが6,5mほどの真っ白な馬体が姿を見せた、しかも足が10本見える、スレイプニールは8本だって話だしボスのフレイプニールで間違いないだろう、二階建ての家の様な高さだ、俺達の背の高さより足が長いんだから凄いよな。
此方を見るも攻撃はしてこず、何故か体は横方向を向いている、首を器用に動かして対面へ行けとでも言ってる様だったのでアンジェを地に降ろして対面すると「ヒヒーン」と嘶き若干姿勢を下げたかと思うと一気に超加速して突撃して来る、その足元は余りの踏み込みにヒビが入るほど、そのまま受け止めては体重差で壁まで持って行かれる為飛んだまま此方も突進、同じ速度かつ胸元へ肩からタックルしてやった、体重差で此方が押し負けるがそこは魔力の出力を強化して逆に押し返して壁際まで押し込む、これ以上の力比べは必要ないと俺は元の位置に戻って行った。
負けたショックかうなだれては居たが立ち直ったのだろう戦闘態勢の時のような殺気は放たず頬を俺に摺り寄せて来た、どうやら懐いたらしいので魔力を与えて俺の支配下に。
「ボスゲット! このサイズで白馬なんてついてるなぁ」
とナデナデする。
「マグロちゃん、真っ黒いお馬さんも凛々しくて良いですわよ」
「確かにな、真っ黒はかっこよくて、真っ白は映えるよな」
「マグロ、一般的なのも捕まえるのにゃ?」
「当然だろ、さっき押し合った感じじゃ何匹同時だろうと余裕だな」
「マグロちゃん、もしかしてあれをするのですか?」
「そうだ、ここの入り口も利用して、更にはオリハルコンで200mほどの棒を使って一気に押し出す、ちまちまするより手っ取り早いだろ?」
「その様な無茶が出来るのはマグロ様だけでしょうね」
「皆も出来ると思うけどな、さてと準備して早速試そうか」
入り口に足を踏ん張る場所を作る為に入口から外へ向け50cm地点に地面と天井に喰い込ませた【ミスリルウォール】で壁を作り、更に200m程度のオリハルコン製で直径5cmの直棒を作った、この行為がダンジョンへの攻撃とみなされたのかどんどん集まって来る。
結果は成功、最奥の場所の為にすべての個体が集まるまで1時間ほどかかったがそれらを含めて押し返してやった、左右のバランスが悪かった為に若干苦労はしたもののスレイプニール達が共同で押すもビクともせず押し返される始末、しかし1番前の列の馬はオリハルコンの棒が喰い込み負傷したので治療を施し総勢458匹が召喚獣としてマグロの手の内となった、全て水晶化して話し合う。
因みに馬達のサイズは全部一緒の全高2,5mほど、色はバラバラだ、まぁ真っ黒いのが多いけどね、白いのは28体しか居なかった。
「さてと、どうするかな、魔物が0だしもう帰るか? それともユニコーンの方にも行くか?」
「まだ2時間も経過してません、今出ては怪しまれませんか?」
「1体やっと捕まえたが疲れた、これだとユニコーンも苦労するだろうから本格的に活動する前に現地調査がしたいって事で話してみよう」
これを実行しあっさりと許可が出た、もちろん金貨100枚は取られたが、直接魔物を見て下調べするとは冒険者とは慎重なんだなと感心された。




