31:破滅への序曲
それから各自へスライム達を渡し、地下を穴埋め、全員出た所でゲルを回収し裏の壁も回収、これで作り出したミスリルはすべて回収が終了、サイラスに挨拶をして先にカスタル冒険者ギルドへ帰還、受付嬢に地下練習場へ案内され【ストーンウォール】で細かく区画別けし、各魔物毎に魔石やらを詰め込んでいた所に思い出した、肉は如何するんだよ! こんな所に出したら腐るだろ。
結構な時間が掛かったのでサイラスが戻った事が丁度良いとばかりに会いに行った。
「すまないサイラス殿、魔石とかは魔物別にして置いて来たんだが、1つ確保してもらうのを忘れてたよ、肉は如何しようか?」
「マグロちゃんも抜けてますわね、しかしどうしましょう、そのまま出しては傷みますものね」
「抜けては余計だけど確かに抜けてたんだよな、何処か食糧倉庫を借りれないかな?」
「うーん、冒険者ギルドにはその手の食糧庫は有るには有るが、普段の討伐された品の買取程度でスタンピート規模の倉庫は無い、販売ルートも無い、そこで商業ギルドに全て売却し現金で此方に渡してもらおう、今直ぐ倉庫に空きがあるか分からんから此方で問い合わせる、それまで持っていてくれないか?」
「まぁ腐らないから持ってるのは良いとして、通常営業になるのは何時位だ? 護衛依頼の報告すら出来てないんだけど」
「ちょっと待ってくれ、話しながら予定の整理をしよう、明日だがマグロ達のPTには朝食後で良いから冒険者ギルドに来てくれ、今回の終結に際しストレイルの大都市5つの長が挨拶をしたいそうだ、それと同時に4都市から冒険者ギルドマスターも集結する事になっている、恐らくBランクから飛び級でSランクへと推薦されるだろう、その時までに肉の搬入期日を決めておく」
「搬入期日は兎も角だ、そんなのに出る気は無いんだけどなぁ、適当に誤魔化して来られませんとか言っといてよ」
「マグロちゃんそれダメですわよ、相手は国王に等しき地位、これを断ってはどんな対策をとられるか」
「わかったよ、出れば良いんだろ出れば」
「すまないな、ご足労願う事になるがこの国の英雄なのは間違いない、礼を伝えたいとの気持ちを汲んでくれるか。
後は肉の搬入次第だがそれが完了すれば3日以内には依頼料として配布が開始されるだろう、例の決闘の調査も滞っているのでな、配布の方を優先させてもらうので1日か2日程度遅くなる予定だが了承してもらえるか? その頃になれば護衛の方も報告を受けられるだろう」
「急いで無いからそれで構わないよ、期日さえはっきりしてもらえれば大丈夫だ」
「1つ明日の事で忠告をしておく、マグロ達への報酬を決める必要があるのでな、包み隠さず報告する義務がある、その為ドラゴンの事も話さなければならない、難癖つけて来る者が居るかもしれないが、なるべく穏便にな」
「ん? あれは所有権が俺達にあだろ、売ろうと国外へ持ち運ぼうと国からの指図は受けないはずだ」
「確かにそうだが、何分物が物だからな、欲しがる連中が居ても可笑しくは無い、その場合は1割で良いから販売してもらえないだろうか?」
「ちょっとその返事をする前に税金の事を教えて貰えないか?」
「俺でわかる範囲なら答えよう」
「冒険者は基本的にクエストも素材などを販売した場合も自動で税金を支払うよな、それは何処の国でも同じなのか?」
「冒険者ギルドは国を跨いだ組織なのは分かっていると思うが、国とは対等な立場として運営されている。
そこで問題になるのは各国の税制が違う事だ、そこで統一ルールを作り、冒険者から受ける税金は冒険者ギルドの運営費として5%、国に対して5%と国際的に決まっている、よって国のいかなる圧力が掛かろうと合計10%から変動する事は無い」
「なるほどな、確かにあの国は余計に税金を取られると判れば冒険者が逃げるからな、納得できる税制だ。
それじゃ次だけど、今回の場合はストレイルの魔物を狩った訳だ、当然このまま他国へと持ち出したら税金はストレイルに入らないよな、他国へ渡る場合は交易商の様に手荷物に対して税金を掛けられるのか?」
「結論から話すと掛からないだ。
冒険者は国を跨いで活動する事も視野に入れられ、身分証を提示すれば入国拒否が出来ないように決められている、これは交易商などの護衛任務がある為だな、拒否されれば交易商の命に関わるからだ。
その為とも言えるが冒険者ギルドはギルド員に対して常に目を光らせ犯罪行為があった場合には厳正に対処する事になっている」
「それじゃ国が何と言おうと応じる必要は無いって訳だ、それじゃサイラス殿の忠告を聞きいれ、解体して1割は冒険者ギルドへ売る事を約束しよう、ただ、本当に一割なのかは此方を信用してもらうしかないけどな」
「そこは信用しているさ、今回の魔物の扱いを見て信用に足る人物だと太鼓判を押せる」
「それじゃ明日の朝来るよ、しかし宿が空いてるかねぇ、一度ライネルにでも戻るか」
「頼むからここに転移して来るなよ、外から来るなら必ず門を通ってくれ」
「わかってるさ、それじゃまた明日に」
こうしてその場で【ゲート】でライネル西門前に転移し、宿屋を確保して早々に休息とした。
そして翌日、朝食を済ませ東門から出ると【ゲート】でカスタル北西門前に転移し冒険者ギルドへと赴いた。
「【真摯の断罪者】の者ですわ、サイラス殿はいらっしゃるかしら?」
「お待ちしておりました、1名を除き皆様お待ちです、ご案内いたしますので此方へお願いします」
案内されると先日も来た会議室へと通された。
「よく来てくれた、一人来ていないのでな、挨拶は後にしてそちらの椅子に座ってくれ」
「了解した」
椅子に座るも暇なので肉の件を先に済ませる事にした。
「サイラス殿、待つ間に肉の件を聞かせてもらえないか? 搬入は何時なら大丈夫だ?」
「昨日問い合わせてな、丁度良い事に冷凍倉庫が空いてるそうだ、査定も購入も含めて商業ギルドが請け負ってくれることになった、この会談が終わり次第向かってもらえるか?」
「了解した、それでは分配の予定も決まったのか?」
「4日後の早朝からだな、マグロ達には2割、他の者達へは要望の通りにランク関係無く一律計算した金額が支払われる事になっている、その金額と合わせて今回の緊急依頼に対する報酬だな、そちらはランクに合わせて支払われる。
マグロ達には別途+αだがそこの部分に関してはこの会談の場で、と言ってもマグロ達が退室した後だが金額を決めさせてもらう、この事は本来なら全員が揃ってから説明するつもりだったが、本人へ伝えるのみだから構うまい」
「なら、それに合わせて来るよ」
これで会話が終了、待ち人も到着し全員の名前と役職を聞き、俺達もあわせて挨拶をした。
「それでだが、全会一致で決まってる事があるのでその通達だ、【真摯の断罪者】PT全員をSランクへと昇格させ、本来なら特別職を設けたい所だがそれには大陸中の冒険者ギルドのマスター達と協議しなければならないのでこの件は却下されたが、代わりと言っては何だがギルドカードを白金で作り、特別なカードを用意させてもらう」
「白金貨を潰して作るのか? それだと物凄い値段になりそうだけど」
「それだけこの地に住まう者が感謝していると言う事だ、代表して我らが伝えてると言う事だ、ただし、無くさないでくれよ、再発行してくれって言われたら素材の提供をしてもらうからな」
「了解した、有りがたく受け取っておくよ」
「それで次の件だが、先ほども話した通りに別途報酬を支払う事になっているが、まだ金額は決まっていない、この後決める事になるが、金額に関しては此方に一任してもらう事になる」
「それはそちらにお任せする、この手の相場など分からないからな」
「そしてこれは冒険者ギルドからでは無いが、此方の5都市からの代表者による協議でマグロを代表者として貴族の地位を与えるべきだとの声が上がっている」
「ちょっと待ってくれ、俺は冒険者だ、どの国にも属さず各地を見て回りたいと思っている、その様な足かせになる様なのは受けかねる」
「わかった、断られた場合はその様にすると決めていたのでな、この件はこれで終わりだが、改めて貴族として住みたい場合は受け付けるとの事だ、心変わりした場合には相談してくれ」
「了解した、他に無ければ退出する、他に何かあるか?」
「俺からは以上だ、他に何かありますかな?」
「なら俺からだ、今回のスタンピートでブレイズドラゴンが討伐されたと聞いている、その魔物はストレイルの資産だ、全て此方へ売り渡してもらおうか」
「全て? 一匹丸ごと売り渡せと言ってるのか?」
「そうだ、聞き直さずとも聞こえてるだろ」
「此方も使う予定があるからな、1割なら売っても良いがそれは受けかねる」
「その魔物がストレイルに居たからこそ倒せたんだ、それはストレイルの資産でもある、つべこべ言わずに丸ごと売れ」
頭気にたぞ、それ相応の態度で臨んでやる。
「サイラス殿、ボス復活の周期はどの程度だ?」
「1週間から10日程度って所だな」
「そうか、ならお前の言う資産ならお前が討伐して来い、これは俺に所有権があるからな、お前に譲らなければならない法律など存在しない」
「ケッ、高々冒険者風情が我に逆らうだと、眼に物見せてくれようか?」
「なるほど、正面から喧嘩売ってくれるならそれ相応の対応をとってやるよ。
一つ聞きたいが、此奴と同じ考えで、一匹丸ごと売れって考えの奴は居るか?」
「冒険者1PTに渡す位なら俺が買い取る方が有効利用できるのは目に見えているな」
「他には居るか?」
「それならば俺も便乗させてもらおうか、俺も売ってほしいと思っている」
「3人か、後の二人はどうだ?」
「私は必要ないですよ、それはマグロ様の所有物、先ほど仰られた1割を売って頂けるのなら感謝いたします」
「俺も同感だな、無理に売って頂かなくとも良い」
「ふむ、聞いたなサイラス殿、証人になってくれ。
それと先ほどの件だがランクも報酬も含めて全て辞退する、その代り今預かっている肉は其方へは引き渡さない。
それと今売れと表明した、マハタル、カスタル、リスタルに対して宣戦布告する、今日から3日後、マハタル、カスタル、リスタルの順で攻め落とす、精々ここで粋がった事を後悔するんだな、死にたくなければ避難でもしてろ、町ごと消し飛ばす!」
「我がストレイルの騎士団全てを相手にするつもりか? 傑作だな、それならばお前を殺して頂くまでだ」
「そりゃいいな、お互い納得済みなら遠慮なく潰せるってもんだ」
「待てマグロ! それでは今回英雄として活動した事が全て消え去る処が犯罪者として追われる身になるぞ!」
「それがどうした? 俺は戦争と言った、お互い納得済みの戦争で犯罪者なら一方的に仕掛けている国は犯罪者処か全員死刑囚か? それに高々騎士団程度で俺を止められると思うなよ、精々先行き短い生を堪能するんだな」
「マグロちゃん、待ちなさい、それは早計、話し合って妥協点を探しましょう」
「それじゃ聞くが、何処に妥協点を持って行くんだ? 丸ごと売れの一点張りだぞ、一方的に被害を被れとは言わないよな?」
「販売する割合を増やしてはどうですの?」
「あんな態度の奴に売りたいと思うのか? 俺は願い下げだな」
「売ってもらわずともよいわ、貴様が言うように戦争をし、殺して奪えば万事解決するからな」
「わかりましたわ、確かラインハルトでしたわねそちらが殺すつもりで戦争を望むならマグロちゃんの決断に追随しますわよ。
精々私たちのPTの戦力をギルド員から聞く事ですわね、町ごと無くなりますから避難指示はお早めにね」
「それじゃ、この建物も3日後には更地になるんだ、ちょっとぶち壊して出て行かせてもらうぞ【エアブラスト】【フライ】」
上に放ってどでかい穴を開けてアンジェを抱き寄せ飛び立つと、セレスもシェルも心得たものでそれぞれ背負って上空へ飛翔した。
「ちょっと予定が変わったが龍化して飛んでライネルへ戻る、奴らを脅さないとな、一般人を逃がす為にも、それでちょとアンジェを担いでてくれ」
セレスにアンジェを預けて高度を下げて龍化し、5人を背中に乗せる形でゆっくりと高度を上げた。
「サイズがあり得ない事になってますわね・・・確か以前は400mまでもう少しと言った所、ですが今は倍ほどに・・・」
「例のスキルの影響でレベルアップした為に種族が変わったのかもしれません」
『グルァアアアアア!』
思いっきり警告がてら咆哮して飛び去った。
その頃冒険者ギルド会議室の間では。
「何だあのサイズのドラゴンは! ありえん!」
この様な感じに皆が恐慌状態の中サイラスだけが理解し落ち着いていた、龍族だと報告を受けていたからだ、それも地上部の魔物の殲滅速度、それも最大の攻撃方法であるブレスを使わず誰も対応できない速度での殲滅であった事をだ、その為マグロの言った吹き飛ばすとはブレスを使うかもしれないと3都市への命令をどの様に伝えるかを考えていた。
あれだけ本気で殺意剥き出しだったのだ、止める手立てなど皆無、それならば逃げるという選択肢しかありえない、その為には狙われる3都市の職員と冒険者達を残る2都市へ避難させる、その割合の話し合いが必要だと。
それに合わせてライネルへ飛び立ったと思われるマグロ達をもう一度テーブルの席へつかせて話し合いの場を設ける事が出来ないかの模索も必要だとも考えていた。




