20:特訓
部屋に来てもらうように宿屋の人に言付し、案内されて今は俺達の宿泊してる部屋の中だ。
「クララと申します、先日はお助け頂きありがとうございました、貴重な品まで頂きまして無事に完治する事が出来ました」
「それは何よりでしたわね、命に勝るものはありません、これからは前を向いて生きていきなさい」
「はい、魔法の適性がある事が分かり病気の際にも魔導書を読み勉強しておりました、始めは足を引く事が多くあると思いますが、将来は必ずお役に立って見せます、どうかPTにお加え下さい」
「と言う事は、クララちゃんは実際に魔法の発動をしたことが無いと解釈して良いのかしら?」
「左様です、ですのでステータス覧には一切スキルとして覚えてはおりません」
「自己紹介がまだだったな、あの時君の肩に触れていた怪盗=マグロ、マグロと呼んでくれればいい、しかしトラブルの真っ最中だからな、皆にスキル取得の特訓をと思っていたから平時なら許可を出している所だがどうしたものかな」
「マグロちゃんの危惧ももっともですわね、クララさんが此方へ来た事で、皇帝が愚行な判断を下した場合、彼女が人質に取られる危険性がありますわ」
「こんな形で巻き込むとはなぁ、宿屋の者に接触した人を聞かれた場合、確実に辿り着くか」
「選択肢はありませんわね、今の内に彼女を冒険者ギルドでPTへの加入と武器と防具一式、それと魔法適正水晶、それに鑑定に関する魔道具が無いか、時間をおかずに対応する必要がありますわね」
「魔法適正水晶と言うのが良く分からないけどそれだけじゃないさ、彼女の家族も如何するかって問題まで出て来る、いっそこの宿に長期滞在してもらう方向で検討すべきかな?」
「それでしたらマグロ様、私達が宿から離れる際にはミライちゃん達に護衛をお願いするのも手なのでは?」
「それなら何とかなるな、俺とセレスでクララと一緒に冒険者ギルドと彼女の家に行って来る、アンジェとティアとシェルで必要な武器防具と魔道具店で必要なのを買って来てくれ、面倒だから魔法書をあるだけ一揃えも買って来てくれるとありがたい、それと鑑定の道具があるかどうかだな、あればそちらは俺以外の人数分な」
「もしかして私、とんでもないご迷惑を?」
「いや、巻き込んだのは俺達だな、クララが悪い訳じゃない、それじゃ行こうか、無しの飛礫だけど、クララはこれから俺達の仲間だな、さっきも言ったけど新たにスキル取得の為に特訓をするつもりだから、そこは親切丁寧に教えるから心配しなくて良い、そこのお姉さんはSランク冒険者だからな」
「こんな時だけは持ちあげるのねマグロちゃんは、私も弟子をそろそろ持ちたいと考えていたから丁度良いわ、私と同じ適正ならいいですわね」
「襲われる心配もあるから慎重に行動してくれよ、とりあえず彼女には俺のミライちゃんに張り付いてもらうとしてライムも頭にかぶっててもらおうかな。
それじゃ時間も無い事だし行動開始しますか」
クララは驚いていたがスライム3匹に守られた状態になり二手に分かれて行動を開始した。
冒険者ギルドでは簡単に済ませられたが彼女の家では難航した。
いくら命の危険があるからと説明しても死んでも構わんから我が家で生活すると、クララを頼む、出来れば嫁に迎えてくれだの言われ、結局は俺が折れるしかなかった。
そう、嫁に迎える約束までする羽目になったのだ、ミイラ取りがミイラに、それ以上の惨敗と言える。
なので、その場でMP2割増しの指輪を取り出して結婚指輪とし、白金貨10枚を結納の品として渡しておいた。
俺達が宿屋へと戻るとすでに帰っていた。
「俺達の報告が短いだろうから先に話すよ、説得は無理だった、死んでも構わないから自宅で暮らしたいそうだ、よって説得に失敗した」
「命を投げ打たれては説得の仕様がありませんものね」
「それは説得は無理にゃ、ティアでも無理にゃ」
「それでだな、自分たちの命が短いなら、生きてる内に旦那さんを見つけてあげたい、その点マグロは命の恩人で申し分ない、是非クララを嫁にしてくれと言われた挙句に、本人もその気になって俺が折れる羽目になった、だから今のクララは俺の嫁だ」
「それは無いにゃ! テイアとシェルの求婚が先なのにゃ、何で後から来たクララが嫁なのにゃ!」
「そうです、マグロさん、それは酷いのです!」
それはあんまりだろ・・・・確かに彼女達の立場ではそう思うかもしれないけどさ、どうしてこうなった? 嫁が5人か・・・
「確かにそうだな、俺が悪かった、ティアにシェル、俺と結婚してくれ」
「愛してるにゃマグロ!」「愛してますマグロさん!」
飛びついてきた二人の背中を撫でながら。
「本当に悪かった、許してくれ」
「済んだ事にゃ、ティアは気にしてないのにゃ」「そうですよマグロさん、これからの事を考えれば良いんです」
「本当にすまない、すまないが話を変えさせてくれ、そちらはどうだった?」
「防具はワイバーン製一式を無事に購入できましたわよ、武器は魔法使い用なので魔道具店で購入しましたわ、幸いと言ってよいかミスリル製品が2本ありましたので買い占めて参りました。
そして魔導書ですが、火風土水氷雷治療光の上級までありましたので一通り購入、鑑定アイテムですが安く大量に在庫がありましたので現在の人数分を確保してまいりましたわ」
「それじゃ杖を割り振って、クララにもマジックバッグを1つと同じ資金の提供、防具を着るのもけっこう手間が掛かるから一度着てもらおうか、それで今日は戦闘面の事は置いてのんびりしよう、体力はあるけど精神的に結構疲れたなぁ」
「マグロ様、明日の予定だけは決めておきませんか?」
「明日は冒険者ギルドに缶詰かなぁ、火を吐くワイバーンは避けてグリフォン一揃え倒してからBランクまで上昇する分だけ素材を下ろそうか、そして1階層のスライムを仲魔にした部屋で特訓、これでどうだろう?」
「確かに少しはクララちゃんのレベルを上げないと訓練でMPを使いますし、その方が訓練も捗りますわね」
「まぁ、適性に何があるにせよ、真っ先に魔力操作を覚えてもらうのが必須条件だな、ティアにも覚えてもらうぞ、そうすれば無詠唱に手が届くからなって、そう言えば取得してないのが結構居たな、全員覚えてもらうぞ、セレス、ティア、シェルな」
「マグロ様、よろしくお願いします」
「それを取得したら無詠唱、無詠唱を取得してる者は多重起動、この様な順番だな、クララが無詠唱を取得したら、後は想像だけだから詠唱の魔法なぞ覚えなくて良い、他の人の魔法を見て感じてそれを模倣するだけで覚え放題になるからな」
「マグロちゃん、魔法の抗議も必要だけれど、出自の説明はしないの?」
「今日は止めよう、疲れたよ、ちょっとセレス来てくれ、防具を脱いで」
スライム達に各種金属を与えてベッドで待って居ると防具と言ったのに素っ裸になって来た、セレスを抱き寄せ胸に顔を埋めて仮眠のつもりが本格的に寝てしまい夕食を食べそこねて気がついたら翌朝だった。
予定の通りにグリフォンを寄せ集めて一気に倒して512匹を収納し、一度冒険者ギルド受付へと訪れた。
「すまない、27階層から29階層までの魔物を倒したんだが、Gランクのポイント0からBランクポイント満タンになるには何を何体そちらへ降ろせばいい? 一番多いのはグリフォンとワイバーンなのでそちらで計算してほしいが、それと解体していないので丸ごとそちらに引き取ってもらいたい」
「ではその2種を半半と言う事で計算させて頂きますのでお待ち下さい、解体もですね、そちらは後にご案内します」
1分後。
「二種共に45体でBランクへ到達しポイントフルとなります、大丈夫でしたら、解体場へとご案内致しますが」
解体場に丸ごと納品し、解体の手間賃と税金を引かれた額を頂いた、そしてアンジェを除く全員がBランクへと到達し1階層へ修行の為にやって来た。
「それじゃアンジェ以外は魔力操作だから先にアンジェに教えるぞ、先ずは初級の【ファイア】を右手でも左手でも良いからどちらかに出してみ」
「マグロちゃん、これでいい?」
「ではずっとそれにも意識を向けて魔力の供給を続けながら、逆の手にも同じく【ファイア】を出してみ」
二つ目を出そうとすれば、元の【ファイア】が消えかかり旨くいかない、後は集中して実践あるのみだ、これが成功すれば何個でも出せるようになり同時発動も可能になる。
「難しいだろうけど、要は集中力、魔力操作のみだ、頑張れば俺を超えられるぞ。
それじゃ魔力操作の方を始めようか、4人居るから2人ずつしよう、一番早そうなのはセレスにシェルだな、俺が手の平の間に魔力を通すからその間に手を差し込んでくれ、それを感じ取れたら自分自身にその魔力を探すんだ、後は集中して体の中で動かせばいい、それが出来るようになれば使用効率が上がるから威力も上がるはずだよ、それじゃ始めようか」
二人は慣れ親しんでるせいか、10分も掛からずに習得した、ついでに魔力感知も。
ティアは実際に治療活動をしていた事で1時間程度でマスター、此方も魔力感知を覚えた、この階層での無詠唱の取得は無理だな、スライムしか居ないし、魔力操作の訓練を続けてもらった。
「私には素質が無いのでしょうかマグロ様、マグロ様の魔力を感じるところまでは出来たのですが、自分の魔力感じることが出来ません」
「セレス、魔力を外から取り入れるのは命に関わるんだよな? 俺が干渉してクララの魔力を動かすのも危険なのか?」
「意識して取り入れようとしなければ大丈夫です、今のクララさんは無詠唱を取得されていないのでその心配は無いでしょう」
「そうか、ありがとう、それじゃクララ、俺が干渉してゆっくりと右腕の中のみを動かすから集中して感じ取ってくれ、そうすれば時間短縮にはなるだろう」
右の肘部分に触り魔力を少し流し込んでゆっくりと循環させる。
「わかります! 親指から小指方向に循環してるのが」
「それじゃ止めるから、後は一人でな」
「マグロちゃん、出来たわよ!」
そう叫んでいるのはアンジェ、両の手の平とついでとばかりに頭の上にも火を灯していた。
「できた様だね、さすがアンジェ、そこから更に別属性も混ぜて複数発動できるようになれば同時並列思考を取得できるかもしれないよ、まぁ、それは次の段階なんだけど、まずはそれぞれの属性を切り替えながら一瞬で複数の魔法発動する訓練が先だね」
その日はセレスとシェルは多重展開までは覚えられず取得したのは2種、元々が意識してなかった為に覚えていなかったのか熟練度も急激に上がっていた。
アンジェは同時発動個数の底上げと同時に各属性の切り替えの練習だ。
問題のクララだが、僅かずつではあるが、循環させる事に成功、常時気をつけていれば普段の行動でも訓練ができるので、魔力操作に関してはもう教える事は無い、次は適正属性の割り出しと無詠唱での発動だな、魔力操作で体外へ魔力を持って行けるようになれば簡単だろう、ある程度熟練度が上がるまでは其方へ移行しない方が良いかもしれないな。
こんな感じでその日は訓練を切り上げ次の日を迎えた。
翌日、状況が一変した。




