18:一部売却
エントランスで合流し、別室に案内された。
「おお、買われたのはアンジェリカ殿でしたか、そう言えば耳にしましたよ、クランを脱退しPTに加入したと」
クラン? PTを大規模にしたようなあれの事かな?
「お久しぶりですミストル殿、ええ、脱退しまして、今は此方のマグロちゃんの元で活動しています、今は私の旦那様ですわよ」
「そうでしたか、アンジェリカ殿は人気がおありだった、泣く者が多数出そうですね」
「泣くのは置いておきまして、あの時飛び級制度の試験官として行ったのが出会いでしわ、試験官が負けたのですから、それはもう衝撃的でしたわよ」
「アンジェラ殿が負けたのですか! BクラスではダメですねSクラスへ推薦してはどうですか?」
「お待ち下さい、お初にお目に掛かります、今話してる対象で怪盗=マグロと言います、その様なルールに外れる慣例は作らない方が良いかと思います、Bランクで十分です。
その事は置いてですね、本来の目的に進みませんか?」
「そうだな、終わってからでも遅くは無い、終わってからにしてもらおう、俺は冒険者ギルドマスターでガイエン、一部を商業ギルドへ売却すると聞いた、そこでだ、俺が中立の立場で間に入るから話の調整をしよう。
それでマグロ、どの程度の量を売り渡すつもりか?」
「俺は10人のPTを目標に組もうと考えてる、それで全体量の2割を手元に置けば8割は不要だと考えてる、それを安く売るから購入者を限定し、購入量にも上限をつけてもらいたい」
「商業ギルドが買い取れば所有権が移りマグロには入る余地は無い、その事を知った上での提案か?」
「勿論だ、だから損が出ない様に安く売ると言ってる、俺が欲しいのは外皮2割、皮膜2割、肉2割、骨2割、魔石1個、後は全てそちらへ渡し、白金貨4000枚を頂く、販売条件は一般人並びに冒険者のみ、貴族は外す、一人当たりの購入上限は外皮は一人用フルセットを作れる量、肉は100kg、牙と爪は各自どちらか1個のみ、内臓は商業ギルドで好きに使ってくれ、一般人じゃ使えないだろうからな。
この条件を飲むか?」
「うーむ、貴族を外す提案は兎も角、マグロ殿は貴族から相当な嫌がらせでも受けたのだろうと想像しますが。
市価を考えると半額以下で売っても元が取れる値段だが、そちらが余りにも損をする、それに解体の手間などもな。
そもそも実際の量を見てみない事には、いくら安くても返事は出来まい。
一旦支払って頂き、解体した品の8割を並べて頂き判断してもらうと言うのはどうだろうか?」
帝国だし貴族が居ても可笑しくないとあてずっぽで言ったがやはり居たか、権力を笠に着て横着なのが居そうだからな、あえて外すように言ったんだが。
「お金の事はお気になさらず、魔法攻撃に長ける者の集団です、その程度ガンガン稼ぎますよ。
確かに量も見ずに決めるのは不可能ですね、先に支払いを済ませて解体しますか、それでお伺いしたいのですが、マントも含めてフルセット作るとしたら、面積的にはいかほど必要か?」
「うーん、10㎡もあれば体格の良い者も着れるのが作れるな」
「確か翼の部分は別素材ですよね皮膜でしたか? そちらはどの広さで切り分けましょう?」
「同じ広さで宜しいか? 小さく切っては利用価値が下がるからな」
「了解しました、少しお待ち下さい、袋に詰めてますが数を調整してお渡しします」
大袋2袋を取り出して、一袋の中身を全て収納し改めて6000枚を入れて手渡した。
「マグロ殿、集計には時間が掛かります、今から解体されますか?」
「そうですね、それとお尋ねしたいのですが、肉などその場に置いても大丈夫ですか?」
「いや、さすがにそれは、単なる冷凍倉庫ですのでとても奇麗とは言えません」
「それじゃ、そこの床に鉄板敷いても良いですか?」
「それは構いませんが、あまり厚いのはお止めください、1cm程度でしたら許可します」
「ではその様に、案内して頂けますか?」
こうして案内されて現物を見ると物凄い迫力だ。
「これは相対したくないですわね」
「確かにな、大きさを聞いていたけど、聞くのと見るのとは迫力が違いますね。
収納して鉄板を引きますから、皆さんも入口から外に出てもらえませんか」
氷漬けのまま丸ごと収納して入り口前で鉄板を部屋全体に敷く事にする。
厚さ1cm部屋全体に、MPは適量【アイアンウォール】
それと解体だな。
【コマンド】解体:ストームドラゴン
ストームドラゴン素材
肉:50000kg
目:2個
牙:大4本
牙:小220本
爪:16本
心臓:1個
肝臓:2個
腎臓:2個
腸:1200kg
翼皮膜:833㎡
革付鱗:1000㎡
魔石:極大
骨:7950kg
血は取れなかったか、氷漬けにされたんじゃ無理もないかねぇ。
鉄板も敷いた事だし、腸だろうが目玉だろうがそのまま置くか、後ろの外野が何か言ってるが無視だ無視。
必要な量を残して左の壁沿いから種類別に全部出す、肉が一番体積的に邪魔だな、当然だが。
「以上だな、それじゃ俺の言う販売条件を飲んで白金貨4000枚で買うか断るか、どうする?」
「私は商業ギルドマスターのアルサスと申します、マグロ殿のご提案を飲みましょう、お支払いですが明後日の夕刻まで待って頂きたい、さすがにその大金を集めるには帝国中から集めなければなりません」
「ではその様に、明々後日早朝にでもお伺いさせて頂きます。
と勝手に決めたが予定は大丈夫だよな?」
「大丈夫ですよマグロちゃん、新規加入したお二人のレベルアップも必要ですわよ、ダンジョンに籠れば時間は大丈夫ですね」
「では明後日の朝までにご用意させて頂きます、それと販売額ですが、余りに上乗せしてはマグロ殿が安く卸される意味が無くなってしまいます、1割上乗せでどうでしょうか?
それと販売条件に関してですが、購入の為に加入する輩も出て来ると思います、そこで現在加入してる者のみを対象とすれば、より完全なマグロ殿の条件になるかと思いますがどうでしょう?」
「俺は白金貨5000枚相当の値段で販売して頂ければと考えていましたので、金額は十分です。
条件の件もそれを採用させて頂きます、その方がより一層渡り難くなりますからね」
「ではその様に、量と質などから個別に売却代金を設定する為にお時間を頂きます、そこで、販売開始はお支払いした後と言う事にしましょう、それまでに大々的に公表したいと思います。
今日からある程度の期間ですが、職員が多忙を極めますので臨時ボーナスを支払いたく思います。
全ての売り上げを商業ギルドで確保する事は御座いませんので、そこはご安心を」
「ではその様に、集計はまだかな? さすがに多すぎたか?」
「まもなくでしょう、10人ほどで集計されていましたので」
10分程度待つ事集計が終わり売却の証明と所有権の譲渡に関する1通の契約書が作成され、この場はお開きとなった。
「アンジェ、ちょっと遅い時間になってしまうが、1階層を倒しに行かないか? ティアのレベルを少しでも上げておきたいんだが」
「その対策は必要ですわね、本来な30階層と行くべきですが、あの猫ちゃん達のみ50オーバー、今のレベルだと当てる事すらマグロちゃんには厳しいものね、次点のワイバーンにしましょうか、移動速度もそこそこ早い部類ですし、時間的に早く終わりそうですし」
「そうしよう、無理をして命を懸ける必要は無いよ」
それから3時間程度を掛けてワイバーン460匹倒して宿に戻り、ティアのレベルを確認すると21まで上がっていた。
そして翌朝、事態が動いた。