15:オークション初日
宿で夕食を取り部屋に戻ると真っ白な猫を実体化させる。
「うーん、名前は何にするかな、白いから、白あん、白玉団子、大福、お餅、豆腐、バニラアイス・・・決めた、今日からシラタマな!」
「ライムにミライにシラタマですか、変わったネーミングセンスですわね」
まぁまぁ、それじゃ元に戻して今日はもう寝るか。
こうして一夜明け、とうとうオークションの日がやって来た、そう言えばルールを聞いて無いな、周りを見ながらでもぶっつけ本番で良いか? いや、ちらっと聞いてから行こうか。
「アンジェ、何かルールとかあるの?」
「ありまわよ、最初の出だしは提示金額、次からは前の金額に対して1,1倍から2倍までの範囲になりますわね、基本的に銀貨や銅貨は使いません、金貨以上ですわね」
「なるほど、奴隷を買った際は二人で、品物の場合は一人でって事で全員体験するって方向だったな、それじゃ行こうか」
商業ギルドの中へと入ると居るわ居るわ、競り人、見学者、野次馬でごった返している中、受付の列へと並び自分の番を待った。
「予約していたアンジェリカとそのPT二名ですわ、これが予約票、確認お願いしますわね」
「48番から50番様でございますね、お席までご案内いたします、此方です」
案内され席に着く、少し待つこと10数分。
『お集りの皆さま、懐の巾着はゆるゆるにしてご参加下さい、世界中より集まった、またと手に入らない品でございます、それでは心行くまで楽しんでください。
本日は奴隷と薬品と武器と防具になります、明日は魔法道具とスペシャルな品になります、それでは1品目の紹介です』
奴隷も品扱いか、元日本人としては釈然としないが、この世界では一般的だものな、俺も買ったし、住んでる以上慣れていかないとな。
『某国の元騎士で35歳と働き盛りの年齢でございます、剣と盾の扱いに優れ戦争経験もございます、最低落札価格金貨50枚からです、どうぞ』
『50枚』
『60枚』
『70枚』
『77枚』
『・・・・』
『57番様77枚、他にございませんか、武器防具を与えれば即活躍します、いらっしゃいませんか?』
『・・・・』
『金貨77枚で落札です、57番様おめでとうございます』
「なるほど、こんな流れなのか」
「駆け引きも必要そうですね」
「何とかなるさ、一人目は俺が競るよ、二人目はセレスに任せる、エリクサーはアンジェな」
数人挟み、目当てのハイエルフが出品された。
『では5番、滅多に会うことが出来ないハイエルフの女性です、見た目も麗しくスタイルも素晴らしい、見た目だけではありません、優れた魔法の使い手でもあります、最低落札価格は金貨100枚からです、それではどうぞ』
「100枚」
『110枚』
「130枚』
『150枚』
「170枚」
『190枚』
(一騎打ちに成ってますわね)(あれほどの美貌と能力ならば納得だな)
『210枚』
「240枚」
『ぬぬぬっ』
『270枚』
「540枚」
『・・・・』
『50番様金貨540枚、他にございませんか?』
『・・・・』
『金貨540枚で落札です、50番様おめでとうございます』
スタッフから周りの会話を削がない程度で声を掛けられる。
(此方へお出で下さい、お支払いと契約をお願いいたします)
「それじゃセレス、俺はアンジェと行って来る、この場は任せるよ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
別室に案内され、ハイエルフの彼女、シェルアスとその奴隷商人が待っていた。
「御落札頂きありがとうございます、シェルアスと申します、今後よろしくお願いします」
「他にも落札予定がおありでしたらお昼の休憩時間にずらしますがどうされますか?」
金貨5袋と金貨40枚を取り出し。
「冒険者の怪盗=マグロだよろしくな、こっちは同じPTで嫁のアンジェリカ、購入予定は有るがそちらは連れが落札する事になっているから大丈夫だ、では代金の540枚だ、確認頼む」
「では確認させて頂きます・・・・確認いたしました、これに血を一滴頂けますか」
登録も終わり。
「彼女はなぜ奴隷になったのだ? 理由如何によっては彼女を解放して俺のPTに入ってもらう、教えて貰えるか?」
「それは私から話しましょう、彼女に話をさせるのは酷ですので。
彼女は元冒険者でPTの一員でしたが、魔物討伐でかなりの被害を受けたと聞いております、放置すれば死に至り、その治療の為の資金が無く、彼女は自ら奴隷となり資金を捻出し、その者は命を取り留めました。
しかし、その傷が元で冒険者を続ける事が叶わず冒険者を引退しました、引退したPTメンバーは彼女を買い戻す資金を貯められず、今に至ります」
「アンジェ、この様な理由なら解放しても問題無いと思うがどうかな?」
「問題無いですわね、マグロちゃんの言うように解放しましょう」
「ならば決定だな、大将はこの後も見学されるか?」
「要望があれば本日の終了時まで待機しますが」
「なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな、彼女を奴隷から解放して、本日終了までオークションの見学をしててくれ、資金は出すよ」
「解放されるのですか? いえ、彼女の立場を考えると、貴方の様な方に引き取って頂けたらと思うのですが」
「なら決定だな、シェルアス、勝手に決めて悪いが、まだオークションで競る予定があるからな、見学して待っててくれ。
万が一はぐれたら、ここから近い暁の宿に部屋を取ってるからそちらへ来てくれ、話す必要があるが時間が無いのでな、行って来る」
「はい、お待ちします、マグロ様、行ってらっしゃいませ」
近くで見ると物凄い美人だが切れ長の目で力強さのある顔立ちだな、胸の大きさはセレスとどっこいか、背がセレスより10cmほど低いから特に目立つな、とアンジェが金貨を2枚渡して会場へ戻って行った。
「今戻った、ティルアは出たか?」
「まだです」
「そうか、間に合った様だな、あちらは彼女の理由を聞いて解放してもらった、あまり話してると周りに迷惑だから後程説明するよ」
それから2名の競りが終わり。
『次は12番、猫族でございます、彼女は22歳、職業はプリースト、神殿で治療活動をしていた為レベルは低めですが、その回復力は命を助ける事でしょう、最低落札価格金貨100枚からです、どうぞ』
『100枚』
「200枚」
『220枚』
「440枚」
『・・・・』
『500枚』
「白金貨1枚」
『・・・・』
『49番様白金貨1枚、他にございませんか?』
セレスは強気だな、全部倍で入札した。
『・・・・』
『白金貨1枚で落札です、49番様おめでとうございます』
(どれだけ資金が有るんだ)
(もう白金貨2枚近くも使ってるぞ)
(さすがに買う資金は尽きただろ)
(割り切って買ったんだろうな)
まだまだ買うんだよ、残念だったな。
ティルアへの挨拶と支払いを済ませて彼女も解放した、家計が火の車で彼女が売られたらしい。
ちなみにティルアはかわいい系で身長150cmほど、頭上の耳がチャームポイントか髪の色は白で目はブルー、胸は背の割には大きい方だがハイエルフの二人には負けてるのだった。
奴隷部門が終わり薬品部門へと変わりエリクサー3本目となった。
『次の品もエリクサーでございます、今回のラストとなりますので振るってご参加を、最低落札価格金貨100枚です、どうぞ」
『100枚』
『110枚』
『130枚』
『150枚』
「300枚」
『330枚』
「660枚」
『800枚』
「白金貨1枚」
『白金貨1枚金貨100枚』
「白金貨2枚」
(おいおい、そんな金額有るのかよ)
(・・・・)
『48番様、白金貨2枚、他にございませんか』
『・・・・』
『白金貨2枚で落札です、48番様おめでとうございます』
(此方へお出で下さい、お支払いをお願いいたします)
この支払はアンジェ一人で行った、そして武器の部門が始まり順番に競り落として各自支払いに行った。
雷鳴の弓は金貨500枚
ウロボロスロッドは金貨800枚
灼熱の魔槍は白金貨3枚と金貨200枚
雷竜の杖は白金貨1枚
でそれぞれ競り落とし、ティルアとシェルアスも連れて宿屋に戻る、とはいかず、一人の男性に声を掛けられた。
「申し訳ありません、48番の方ですよね」
「そうですが、どうかなさいましたの?」
「どうかエリクサーをお譲り下さい、その薬が無ければ、お嬢様は後2ヶ月ほどの命なのです」
「命か、俺達も冒険者でいつ死にかけるか分からないから確保したんだよな」
「マグロちゃん、少し結論を待ってもらえますか、ティルアちゃんは部位欠損の治療は出来るかしら?」
「ティアの今の能力だと指一本程度の欠損しか治せないにゃ、そういう意味ではできるとは言えないにゃ」
「と言う事ですね、今のマグロちゃんの熟練度ならティルアちゃんから伝授してもらえば覚えらえるでしょうし、レベルを上げればエリクサーも不要になりますわよね、直接お会いして決めると言うのは如何かしら?」
「うーん、一部とはいえ教えて貰えるなら使えるだろうな、熟練度が少々足りないとなっても一日で解決するような問題だし、ティルアのレベル上げに関してもか・・・・分った、譲る方向で考えよう、治療が不可能と判断したらその場で飲んでもらえば良い」
「良かったですわね、それじゃ案内してもらえるかしら」
「ありがとうございます、此方です」
案内してもらった家は北西側のやや奥まった位置で二階建てだった、そしてそのお嬢様の寝室へと案内された。
「突然大勢で押しかけてすまないな、貴方の病状を確認に来た、治療が不可能と判断したら、先ほど競り落としたエリクサーを提供する。
まずは症状を説明してくれないか?」
「魔力欠乏症という名前の病気です、健常者であれば普段の生活中でも魔力が生成されますが、この病気は逆に自然消費され常に枯渇します、MPポーションで急場を凌いでおりましたが、医者の判断は余命僅かと、それで今回買われた方に声をお掛けしていた次第です」
「と言う事は魔力精製してる部位が何かしらの異常な状態になったと言う事か」
「その病気でしたら特効薬がありますが、さすがに手に入れるのは難しいかもしれませんね、龍種の血さえ手に入ればエリクサーは不要だったのですが」
「セレス、それじゃ今回出品されてるストームドラゴンはどうだ? 俺なら死んでいても分離して取り出せると思うが」
「竜ではなく龍種です、意思疎通が可能なほど知能のある上位種ですね」
「討伐されてるのとは別種類って事か? それならその手は使えないな、セレス、この中では一番魔法に関しては適合性が高いだろ、魔力を放出して自動回復状態になって横になってくれないか、セレスと彼女で俺を挟み込む形で」
セレスが横になり彼女とセレスの肩に手を置き魔力操作と魔力感知で双方を同時に調べ上げて相違点を探して行くと原因箇所が特定できた。
「ふぅ、結論から言うと今の俺では治療不可能だな、欠損箇所は丹田と呼ばれる場所だが、大動脈にもかかってる、俺の指を切り飛ばしてティルアに治療してもらったうえで俺が習得し、彼女の異常個所を焼き払って欠損修復するつもりだったが、今の俺では同時進行できない。
エリクサーを飲んでもらおう、と言う事でこのエリクサーは提供する、代金は不要だ、それじゃ帰るぞ、説明する事が大量にあるからな」
一方的に告げてエリクサーを提供しさっさと帰る、礼など不要だからな。
帰り道に冒険者ギルドに寄り2人を冒険者登録し、PTへ入ってもらった、例の対策が必要かもしれないので飛び級制度は止めておいた、アンジェが居る時点でBASランクのクエストしか受けられないからな。
宿に戻り二名分の追加の食事を頼み、二名を部屋に連れ入る事も伝え、追加料金を支払った。
「ちょっと大回りしてしまって時間が掛かったが改めてよろしく頼む、俺は怪盗=マグロ、マグロと呼んでくれ、二人には冒険者ギルドに登録してもらた通り一緒に活動してもらう、大丈夫か?」
「私はセレスティーナ、セレスとお呼び下さい、マグロ様に解放してもらった元奴隷です、お二人と同じ立場ですね、よろしくお願いします」
「私はアンジェリカ、マグロちゃんの事が気に入って他のクランから抜けて来たわ、今後宜しくねお二人とも」
「私はシェルアスです、シェルとお呼び下さい、解放して下さった事有難うございました、よろしくお願いします、元々冒険者をしておりました、足を引かないよう精進致します」
「ティルアですにゃ、ティアと呼んで下さいにゃ、解放してくれてありがとにゃ、よろしくお願いするにゃ、ティアも頑張るにゃ、治療は任せるにゃ」
ティルアの語尾はにゃか、何だか萌えるな、俺って猫は大好きなんだよな、犬と違って。
「シェルは武器だと何を使うんだ?」
「攻撃魔法での攻撃のみですので杖かロッドです」
「ふむふむ、ティアはどうだ?」
「回復のみしかしてなかったのにゃ、だから武器は使た事が無いのにゃ」
「ハイエルフなら細剣か弓辺りも使うのかなと思ったが違ったか、それなら俺は魔槍を、セレスは予定の通りに雷鳴の弓、アンジェも予定の通りにウロボロスロッド、シェルには属性が付いてる杖が威力が上がるだろうから雷竜の杖を、ティアにはアンジェが渡してくれ。
防具はワイバーン革製のフルセットとマントだな、それと各自にマジックバッグとお金各種入った巾着と大袋だ。
不測の事態で離散した場合と生活資金だと思ってくれ、まだ拠点を決めていないから帝都から出るまではこの宿屋だと思ってくれれば大丈夫だ」
「あの、よろしいでしょうか」
「どうした、シェル?」
「総額が物凄い事になるのですが、私には分不相応と言いますか」
死ぬまで一緒と考えてるからな、死なれでもしたら俺が凹む、俺のPTから死人なんて出したくないしな、その為にエリククサーを買ったが今は手元にないんだよな。
「今後死ぬまで一緒と考えている、そうなれば家族と変わらないだろう? 生き残る為に装備に妥協はしなくて良いし、その為の努力もする、これで説明になるかな?」
「有難うございます、そのお気持ちにこたえる為に最大限努力致します」
「うーん、もっと砕いて話せないか? やたらと硬く感じるんだよ。
見下げる言い方はダメだがタメ口で敬称なぞ必要ないぞ、その方が本音で話してる様に聞こえるしな、他者がいる時だけ立ててくれれば良い、どうだ?」
「過分なご配慮感謝します、末永くよろしくお願いします」
「無理に言っても仕方がない問題だな、好きな様に呼んでもらって良いよ。
それと伝えておかないとダメな事があったな、俺はセレスとアンジェの二名と結婚する約束をしてる、約束と言うより俺は結婚してると思ってるが、式自体はまだ時期は決めてないが拠点を築いてからと考えてるよ」
「解放した相手でも問わずに結婚の対象として考えてくれるのかにゃ?」
「ん? セレスの場合は確かにそうだな、その認識で間違ってない」
「それならティアも立候補するのにゃ!」
「ティアさんずるいです、それなら私もマグロさんの嫁に立候補します!」
「マグロ様、賑やかになってきましたね、楽しい家庭になりそうです!」
「ちょ、その言い方だと問題なく二人を嫁に、と聞こえるんだけど」
「マグロちゃんは甲斐性あるんですから当然ですわよ」
「わかったよ、即決は出来ないけど検討するから時間が欲しい、それと二人には指輪を付けてもらう、マジックアイテムでMPを増幅してくれる、7個あるんで好きなのを選んでいいよ、性能は同じだし」
指輪を取り出し選んでもらってるのを眺めてる訳だが。
女性の方が積極的だ、だがマグロも満更でもない、二人ともタイプは違うが美人だしな、と考えていた。
「えーとそれじゃ次に移ろう、えーとライムじゃなかったミライを5匹だな、実体化させるよ」
取り出した水晶から実体化させた。
「銀色ぽいスライム?」
「ミスリルスライムで俺の召喚獣だ、一人一体ついてもらって守ってもらおうと考えてる、かなりの防御力を誇る個体だから命を守ってくれるだろう、では全部実体化させる」
残り5匹も実体化させてミスリル50kgの塊を10個出して与える、今後の日課になった瞬間だった。
「え?」
「この色は、もしかしてミスリルにゃ?」
「そうそう、これを食べさせたから変質したんだよ、この子達に欠かせない食糧だな」
「あの、値段を考えた事がおありですか?」
「心配ないですよ、マグロ様が作れるから取り放題なんです」
「そうそう、ちなみにだがそれの応用で金や白金を出してな、今の所持金は皆に配った金額もあわせると白金貨200万枚以上あるから金額なんて気にせず生き残る為に貪欲になってくれ、渡した中にも白金貨が入ってるからな、見てみると良い」
「ブフォ!」「ああああ」
「汚いなティア、そう言う事だ、白金貨出して普通に買い物なんて無理だからな、金貨も大量に渡しておいた、話を変えるがお互いにステータスを見せ合って実力を確認しておくぞ」