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V[M]星屑の漂流者~自世界転生で仲間達を守り抜く~  作者: くろめ
帰ってこない大人たちと、見知らぬ少年たち
33/40

27.5 タイム・ライド

    ★☆★


 あたし、天ノ峰 光里は機嫌が悪い。

 何故って、親父が突然どこかへ行ってしまったのだから。


 謎の研究所を調査しつつ、新入生のデータを纏めたり、更にはあの宇宙人さん用のテスト問題を作成してもらいに行ったり……。まだまだ思い出したくもないぐらい仕事がある訳で、諸々忙しい時期だってのに……。部屋で仕事するこっちの身にもなれよ。どこに消えた親父は。


 あの仕事のサイボーグみたいな親父が、何もかもほったらかしてどこかへ逃げるなんてことはまず無いとは思う。だから何かしらそれ以上に重要なことがあるか、もしくは何者かに捕らわれたか……?


 馬鹿親父。


 心配させるような行動取ってんじゃないよ本当に。

 いやまずどうしてあいつを心配するのだろう。そんな自分にも腹が立つ。


 何であいつを嫌いになったのか、その理由は忘れてしまった。けれどそんなことを思い出すまでもない。自分は嫌いで居られるのならそれでいいんだ。

 無駄に嫌いになれない何かを得てしまったら、存分に嫌うことが出来なくなってしまうし、今まで自分がしてきたことに対する罪悪感が浮き出てきてしまう。それだけでなく、今度は解決をしようと試みてしまうかもしれない。それを想像するのが気持ち悪い。



「ヒカリ様、小さなお客様です」

「ええ? 何でこんな時に……」


 突然の来客に戸惑ってしまう。この時間に予定していた客は一人も居ない。そのため計画に無い事なのだ。その人に構っているだけの時間は、全く無い。だが来てしまっているのなら仕方がない。


 別に時間が無いからと言って、杜撰な対応で済ませるつもりは全くない。計画上に存在する客人と、違いは何らない。これも仕事だと割り切って、しっかりと応対するべきなのだろう。


「わかった。通していいわよ」

「かしこまりました」


 決まり切った一つ返事を返して、客人を呼びに向かっていく使い。彼女以外にも使いは何人か居る。正直そこまでこの家に必要なのかとも思う。

 まあ縁あって仕事してるんだから、そんなこと気にしちゃう自分が馬鹿なのかもしれないけど。


 しばらく待っていると、やがてその客人とやらがやって来た。


「初めまして主様、俺は――」

「帰って」

「……へ?」


 自分でもどうしてこんな言葉が出たのかは分からない。

 正直謝りたい気持ちもある。

 だけどどうしてだろう、この声と顔。何だか腹立たしい。


「私は主じゃないから、何も分からないの」

「少し聞くだけでも……お願いします」


 ……頭を下げられたら、こちらも聞かざるを得ない。分かってはいるものの、どこかそれを肯定したくない自分が居る。何なのこれ。


「……簡潔にね」

「ありがとうございます……」


 自分は、こんなに意地悪だっただろうか。自分に対してそんな疑いを抱いていると、やがて彼は話し出した。


「俺は、この家に住んでいたはずなんです。けれど友達と樹海に入って探索をしていたら、迷ってしまって……。決死の思いで出たと思ったら、周りの景色も似ているようで違っていて……。地名は天ノ峰と同じはずなんですが……」

「……そう」


 非常に興味深い話だと思った。だがどうしてだろう、彼の口からは聞きたくない。本当に彼には申し訳ないのだけれど、本当に彼を見ていると、自分の中の怒りというか、苛立ちが爆発しそうになる。沸々どころの騒ぎではないのだ。


「興味深い話ではあるけど、そんな嘘に構ってる暇はないの。用が済んだなら、さっさと出て行ってくれない?」

「……失礼しました。出ていきます」


 彼は素直な子だろう。そして、最後の悲しい顔を見て、普通ならば申し訳ない気持ちになるのだろうけれど、どうしてだか、彼に対してはそんなもの一切感じることは無かった。


 何だろうな。本当に。

 どこかで見たことあるような顔してるんだけど……。


 彼を見ていると、どうしようもなく苛々して……。

 腹が立って、下手をすれば殺しかねないぐらいの気持ちになって。

 私は普段誰に対してそんな気持ちを持っていただろうか。

 そんなの考えるまでもない。親父――。


 ――……。


 親父が小さくなった?

 なんか推理漫画みたいなものでそんな展開見た気がするけれど……。いや、待て。彼は何と言っていただろうか。

 憎らしい声を思い出したくないものだが、この際仕方がない。


『樹海に入って出てきたら、違う場所に来ていた』


 ……何なのこのファンタジー染みた現象は。夜天 流衣はこれをオカルトだと言い張りそうね。

 まあでも悪戯であったり、虚言の可能性もあるかもしれない。


 彼から出てくる苛々の原因は何なのか、それをあまり考えたくは無かったが、もう仕方がない。


 まさか彼は、過去から来た親父だとでも言うの?


 そんなことが在って堪るかと、そう思われてしまうかもしれない。けれど、天ノ峰の文献に記された事象の幾つかに、まるで現代から来た様な風貌の人間が写っていることがあった。

 それに、突然あの『別世界から来た研究所』が現れたことも、それに通じるものなのではないのか。それに、あの宇宙人だって……。


 奇想天外なことが、平気で起こる。一般人はそれを知らずに生きているだけであって、私たちはそれを把握してきている。


 ルイに他言を許さないと言ったのはそういう事。知ってしまったら、更にバランスが崩れてしまう。

 でもまさか、時間の移動までしてくるなんて、思わなかったけど……。


 仕方がない。問題が起きてからでは遅いし、彼とその仲間を探すことにしよう。まだそう遠くへは行ってないはずだから。

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