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V[M]星屑の漂流者~自世界転生で仲間達を守り抜く~  作者: くろめ
記憶のない自分と向き合うということ
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18 いや、町を探検どころじゃない!!【樹海編2】

 空や周囲が暗くなっていく中、自分たちは方角も分からず動くこともできない。

 焦りも出てきた。本当に自分達の動かないという行為が正解なのかも分からない。


 ガサガサと何かが蠢く度に恐怖し、急な風の一つにも驚きまわる。

 もしや自分たちは、ここから一生出ることが出来ないのではないか……。度が過ぎた考えすらも思い浮かぶ程の状況に、頭は真っ白になっていく。


 ルイは抜け殻のようになっていて、何を考えているのか分からない。表情からも読み取ることができない。ただ無表情で、ぼーっと、目の焦点が定まっていない。


 まさか、何も考えられなくなっているのか……?


 星屑ヶ原という場所に行けなかったという事実が、彼にとっては非常に悲しい出来事だったということか。もしくはそこに、何か大切な思い出があるというのか。


 いや、もしかして、滝の洞窟の疲れが残っていて……?


 海に行って、川を上って、その内滝に着いたと思ったら何者かにルイが憑依されて。

 その後滝に到着して時間が止まって滝も止まり、洞窟探検をしようと思ったら彼がフェーリエントに憑依されて。

 そして謎の巨大生物から逃げて……。


 これだけでも9日分は動いている気がする。正直1日で体験するような物事ではない。

 その後に休憩を挟んだとはいえ、また出かけて、今に至っている訳だ。


 無気力になってもおかしくはない……。

 疲労は身体だけではなくて、心にも存在するのだ。ルイは感情を表に出しやすい性格だろう。つまり素直。心がそのまま表向きに出るということになる。

 空っぽな表情は、放心と同じなのだ。


 ……ただひたすらに慰めることしか、自分には出来ない。

 どうにかその、星屑ヶ原に辿り付ければ、ルイも少しは回復してくれるだろうか。


「星屑ヶ原、行こう」


 応答は無かった。でも、行くしかない。

 自分がこの手で探すのだ。今のルイにとって、一番良く効く薬だろうから。


 ルイをまた肩に担いで、歩き始める。

 方角は分からないが、とにかく進む。いずれ到着すると信じて。






「やっぱり、無謀か……」


 一体どれほど歩いたか分からない。周囲は完全に暗くなり、今度こそ動くのが危険な状態だ。木々にぶつかってしまうかもしれないし、もしかしたら活発に動く生き物のエサになってしまうことも考えられる。


 ここまで歩いても見つからないというのなら、最初から動くべきでは無かったのかもしれない。後悔の念が自身を襲う。


「ルイ、ごめん。見つけられないよ……」


 肩に担がれた少年が、何かを発することは無かった。自責の念と、公開の念で、自分の心までも潰れてしまいそうだ……。

 樹海とは、こうも恐ろしい場所なのか……。


 風が顔に触れて、ゾクッとする。周囲の木々や草も同時に揺れている。


「そこまで冷えてるわけじゃ無いんだけどな……」


 風が収まっても、一向に揺れが収まらない草むらがある。

 何かがおかしい。動物でも居るのか……?


 逃げる余裕も無いため、ルイに危害が及ばないように身構えて、元凶が何かを待つ。


「あら……? こんな所に人が……」

「へ?」


 狼や山猫の類だろうか、などと想像していた。だが、実際はそんなことは無くて。

 何やら人間のようにも見えるが、何処かが違う……。


 いやいや、それよりも、今話せているじゃないか!!

 コミュニケーションが取れている。それだけでも十分だ!!

 やったぞ。これだけでも大きな前進だ。


「あのさ、開口一番で悪いんだが……」

「はい?」





「なるほど、それは大変でしたね……」

「ああ、だから星屑ヶ原って場所を探してるんだ」


 『星屑ヶ原がどこかを教えてほしい』と聞いただけでは流石に相手も理解に苦しんだので、とりあえずこれまでの経緯を話してみた。話をしっかりと聞いてくれる人で良かった……。


「うーん……そのような場所は聞いたこと無いです。この樹海はくまなく探索させて頂きましたが、調べた限り全て木々で覆われていて、野原のような場所は存在していないと思うのです」

「そっか……」

「お力になれず申し訳ありません……ところで、その方は?」


 ルイの状態を話すべきなのだろうか。しかし、これは自分とルイの問題であって、第三者に言う程のことでは無い。

 一刻を争う状態ならともかくとして、精神的なことを口外されたいと、ルイは思うのだろうか。


「お話しできないのでしたら、話されなくて結構です。ただ、見た限り、心に何かを抱えているように思えましたが……」

「…………」

「ご名答、でございましたか?」

「……話さない」

「そうですか……仮にわたくしが、治せると申したとしても?」

「へ?」


 樹海は暗く、周囲はほぼ何も見えなくなっていた。ただ、一つだけ、月明かりが自分たちを照らしている。唯一の光が。

 弱い代わりに、優しくて、そしてあたたかな光。


「本当に、治せるのか……?」

「はい。精神面でしたらお手の物です。力をそこまで使わなくとも……」

「力?」

「こちらのお話です」


 隠し事なのだろうか。まあそれはこの際どうでも良い。

 それよりも、ルイが元に戻ればいいのだ。見ている方も辛いし、こんな状態で帰ったら、ユメやお父さんに顔向けも出来ないからな……。 


 女性はそっと、自分が担いだままのルイの許へと歩く。

 やがて彼の横に着くと、髪と背中を、そっと撫でていく。


 それ以上は何をしているのか良く見えないが、緑色にほわりと、何かが光っているようにも見えた気がする。


「……ふぇ……あなたはだあれ?」

「私は、ローテナリアと申します」


 よかった、いつものルイが戻ってきた。

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