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13 異次元の世界と周波数と、乗っ取った目的

 洞窟がまだまだ続くことを暗示するかのように、水神様とのコントのような会話もまだまだ続く。


「そういえばさ、さっき乗っ取られた時は大変だったよな。ルイが初めて怖いと思ったよ」

「うん? そんなことしたかの……そうそうそう!! 大変だったなあ!!!」


 先ほどルイを乗っ取ったのは、別の何かであるとも把握できたし……。


「そう言えば、神様に性別ってあるのかな」

「フム……大抵の神は男尊女卑のせいか男が多いが……水神だけは女だと聞くぞ」


 水神様が女であると言う情報も得た。なるほど、ルイの声が余計にソプラノ寄りになっているのはそういう理由か。

 というか神の世界は平等じゃないのか。世知辛いな。


「このパーツも面白いな。だって、突然光り出したんだし」

「これはある一定の条件で光るようだのう。我はあまり良く知らないが……」

「へぇ、じゃあ予想は出来るか?」

「うーん……周波数……かのう」


 訳が分からなかった。

 だが、この破片に関しては水神様とて分からないようだ。言い回し的に、本当に知らない様子だ。


 面白おかしく会話しながら進んでいく内に、やがて二つの穴の分かれ道が現れる。


「これは……どっちに進めばいいんだ?」

「右じゃな。左は別の世界へと伝わっている。言うなれば、異次元の存在による世界……かのう」

「異次元の存在……?」

「行ったことがないから分からないんじゃ……すまないなあ……」

「そうか、まあ今度行ってみようかな」

「それだけはやめておくのじゃ。何もない空間に出るだけだぞ」

「へ?」

「あ……あくまで推測じゃ推測ッ!! それ以外は全く見当がつかん!! 悪いことは言わんから近づくなよ……?」


 いや、否定したかった訳では無い。異次元の存在というワードが気になるのもそうだが、それ以上に、「何もない空間」と彼女は言った。それが推測であったとしても、考えるに値することでは無いだろうか。


「異次元って、目には見えないのかな」

「そうかもしれぬ。人間は高等な種族ではないからな……」

「奇妙なことが好きなだけのことはあって、詳しいな」

「んー……。そうだなあ!! 我に何でも聞くとよいっ!!!」


 こうやって調子に乗らせておけば、他にも気になることを漏らすだろうし。


「人間はそんなに高等種じゃないのか?」

「というより実際は、種に優劣があるというよりも、『今見えている存在』は全て同列に扱われていると考えて良い」

「……ごめんよ、難しい」

「フム……ザックリ言うとだが、神様はお前た――我々の目には見えないだろう? 死人の魂も同じく。それは潜在的に生命が保持している『周波数』によって、見えるものが定まっているからなんじゃ。ここまで分かるかの?」

「言いたいことは何となく。というか、さっきの周波数ってそういう意味か」

「ウム。例えば人間の周波数が『3』だとする。そうすると人間に見える動物や物体、更には気象など、体感できるその全ての周波数も『3』ということになるんじゃ」

「なるほど分かった。神様は『4』とか『5』とかな数値なんだな」


 そう言うと、神様は不服そうに俯く。話を遮られてから纏められてしまったからだろうか。だけど彼女が続けたらもっと長くなりそうなんだよな……それだけは出来るだけ勘弁してほしいのだ。


「ムー……だがな、面白いことを言うと、時々この周波数が狂うこともあるのじゃ……それを考えなければ満点では無い」

「とすると、人間が神様と同等の周波数を持つこともあるのか?」

「一部の例外を除いて、そんなことは起き得ない。だが考えてほしいのは、逆転の発想であってな――」

「話している最中にごめんよ、頭が痛くなってきた」

「――ああ、すまんな。話し過ぎたわい」


 こんなこと一気に話されて付いていける程、自分は頭が良いわけではない。正直に言うことも相手にとっての優しさだろう。これで詳細に言い過ぎることはあまり無くなるだろうけれど。だからこれで、終わりにしようか。


「で、そろそろ正体を明かしても良いんじゃないのか? 水神様」

「……にゅ!? にゃにぃいいいいいいい!?!? いやいやいや我はルイじゃぞ!!! ぴっちぴちの若造、ルイだぞ!!!」

「ルイはそもそもそんな口調じゃないし、声も高くないしな。短い時間だったけど楽しかったぞ」

「はわ……はわわ……ばりぇてしまった……我の完ッッッ璧な計画が……超ー確実に成功すると思っとったのに……」

「お前の計画は知らないけどさ、ここまで来たし、何しようとしてたか教えてくれないか? それを別に咎めるつもりは一切無いし」

「うぅ……まあ、仕方がないのう。結局最後にはバレることだったのだ。それが早まったと思えばいい……」


 水神様は観念したのか、ハァとため息を吐いて、こちらを見やる。覚悟の眼差しをしていた。ルイよりも表情は硬いんだな。動かし方が違うというか。


「祭壇にある輝玉を持って行ってもらおうかと思ってのう」

「輝玉?」

「何らかの力を受けて妙に光った水晶玉だと思っておけばよい。それのせいで我は、この滝周辺から束縛を受けているのじゃ……」

「へえ、なるほど……って、それだけの理由でルイを乗っ取ったのか!?」

「当たり前じゃ! 乗っ取らなければ逃げ出すこともあるだろう!?!? 折角ここまで来れそうな若造が近くに居ると言うのに、それを見過ごす阿呆がどこに居るか!!!」

「お、おぉ……なんか、ごめんよ」


 必死に熱弁している様を見ていると、相当なパワーを感じる辺り、やっぱり彼女は神様なのだろうと思った。

 いや、神様どうこうはあまり関係が無いのかもしれないが、それだけここから出たいという気持ちが強いのだろう。ならば、その手伝いぐらいはしてあげても良いのではないか。悪い神様では無さそうだしな。


「良いよ。ただし、ルイは無事なんだろうな」

「ありがとうなぁ!! 勿論ルイは無事じゃ。今は精神世界で眠らせておる」

「精神って……どういう原理なんだ……」

「話すと長くなるが――」

「悪い、やめてくれ」

「ムゥー……」


 これ以上頭が痛くなって、思考を停止させたくないんだ。神様と話していると、こうも頭で考える力が抜けるとは思わなかった。難解な話ばかりだから仕方ないのだろうか。

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