表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

マスタースキルオンラインと俺

02 マスタースキルオンラインと俺




マスタースキルオンライン。

通称「MSO」はパソコン向けMMORPG。サービス開始から15年経つ珍しい老舗オンラインゲームだ。

名前の通り、スキルをマスターして戦いを有利に進める。そういうコンセプトの元で始まった王道ファンタジーオンラインゲーム。

古いゲームなだけあり操作はキーボードとマウス。典型的な操作方法のゲームだ。


サービスインをシーズン1として、一年ごとにシーズンを重ねアップデートを繰り返し、最後のシーズン15でサービスが終了した…はずだ。


シーズン10くらいから老舗といわれ、次々と見目麗しい他のゲームが登場する中、謎の開発力を発揮する運営の元課金アイテムやサービスなどを充実させ運営が続いてきたMSOだったが、シーズン15で公式ストーリークエストが完結すると同時にサービス終了がアナウンスされた。


俺はサービス開始時からプレイしているプレイヤーとして、MSOの最後を看取るためにログインしていた。

同じ目的のために引退していた他のプレイヤーのキャラクター達が、大体の人達にとって拠点になっていた始まりの町トルデンの中で思い思いの過ごし方でサービス終了の時を待っていた。


町の露店エリアには久しぶりにログインした人の過去のアイテム、使おうとして使えなかったレアな回復アイテム、倉庫の中身を排出して製作した生産アイテムが捨て値で並び、取引エリアには課金アイテム、衣装アイテムにガチ装備の無償譲渡会が行われている。町中でネタでレアアイテムを連打で使ったり、ポイポイと地面ドロップでばらまいたりする光景も見られた。

俺は最後まで現役プレイヤーだと言うこともあり、少なくないフレンドリストから大量のアイテムがインベントリに飛び込んできた。最後に眺めるだけだったユニーク装備や課金装備、レアアバター衣装やボスドロップからの生産武器等を使える楽しい夜になった。


トルデンはMSO最初期からある町で、大きさもほどよくクエストにも出掛けやすく露店も出しやすく、後に実装された大きな町のマップよりもプレイヤーに愛されていたのだ。

それだけにトルデンにあつまったプレイヤーは多く、かつてのサービスイン時の混雑を思わせる賑わいになった。

そして誰もが穏やかな最後を迎えようとしてた。



-マスタースキルオンラインをプレイの皆様、GM00アシュリアよりお伝えします-



「アナウンスキター」

「お、GM00のアシュリアさんがアナウンスするの珍しいな」

「00だから一番偉いGMなんだろ、他のGMより名前聞いたことない気がするし」

「オレ昔やってた生放送で出てきたの見たことあるぜ」

「あれたしかコスプレして出てきたんだよなー」



俺の周りに座っていた他のプレイヤーのオープンチャットが飛び交う。

15年プレイしている俺でもGMは珍しい。MSOではGMがあまり表に出てこないのだ。

特に00番のアシュリアはナンバーが示す通りGMのリーダー格で、かつてアップデート情報などを公開していた生放送番組で姿を見たっきりだ。


-マスタースキルオンラインは15年の運営を終えてサービスを終了致します。15年もの長い間沢山の皆様に愛されて運営を続けられてきたことに感謝を申し上げます-


-何かを極め生きていく…マスタースキルオンラインではそんな生き方で道を切り開く楽しさを伝えられたらと運営を続けてまいりました-


-今日これまでマスタースキルオンラインとともに歩んで下さった皆様に、そんな私たちの思いが伝わりますよう運営一同願っております-


-それでは皆様、最後にとっておきの夜空をご用意しました。マスタースキルオンラインでの最後の夜をお楽しみ下さい-


-マスタースキルオンラインを愛してくれた皆様、この世界で過ごした思い出を忘れないで下さい。いつか再びこの世界で会いましょう-


-それでは皆様、また会うその時まで! GM00アシュリアでした-



メッセージが過ぎるとゲーム内時間は突然夜になり、夜空に花火が上がる。

ボンボンと音をたてて絶え間なく打ち上げられる大輪の華に、誰もがチャットを止めて見入っていた。


リアルの時間は24時5分前。日付が変わると同時に、MSOのサーバーはクローズされる。

俺は残りの時間少し目を閉じた、15年のMSOの思い出がよみがえるような気がしたのだ。



…沢山のオープンプレイヤーがいた、そして5年も経てばプレイヤーは一通り変わる。

俺も学生から受験生を経て階段を上り、そして社会人になった。


そのあいだにMSOもバージョンアップを続け、いくつもの出会いと別れを繰り返した。

ギルドに入ったこともあった、ギルドを運営したこともあった。

PvP(対人戦)をしたこともあった、戦闘スキルを上げるのに夢中になることもあった。逆に生産や生活スキルを上げるのに夢中になることもあった。


-今では懐かしい思い出だ。


ありがとうMSO。

胸を張れるかは分からないが、間違いなくMSOは俺の青春の一つだった。


終末のカウントダウンが進む。さようならMSO。





俺の周りに座っていたプレイヤー達が次々と光の柱になって消えていく、MSOのログアウトエフェクトだ。

幻想的な光景だった。

そして俺のMSOのクライアントもサーバーからの応答が消え、画面の更新が止まった。



-サーバーから切断されました-



液晶モニターに無機質なシステムメッセージが表示され、MSOは完全に沈黙した。


と、思っていたのだが。



-あ、君はちょっとこっちに来てね?-



そう聞こえた気がする。どこかで聞いた事のある声で---





※今回のMSOネタ


「休憩」スキル


どこでも座って体力の自然回復を加速させるスキル。

低ランクだと体育座り、中ランクになると足を伸ばす。高ランクで横に寝っ転がる事が出来る。

石畳だろうか土の上だろうがどこでも休めるぞ!

休憩補助アイテムを併用することにより、それ以外のポーズも取ることが出来る。

椅子やベンチといったオブジェクトの側で使えば座ることも出来る。

休憩スキルを極めることで立派なホームレ…冒険者になれるぞ!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ