第九話 アリスのこれから
「鏡野いいのか?これ」
「はい。富山さんの病気に気づいてて、言いませんでした。そのことで富山さんは命を。私の責任ですから」
「お前が何言っても富山さんは同じことしてたよ。責任にならみんな同じだ。だから、鏡野これば…」
「お願いします。もう精神的に限界だったんです。それも前から持ってたから。桜田さん今までありがとうございました」
桜田さんに頭を下げたいがこの体制だ無理だった。少し頭を動かすだけで限界だった。
「鏡野」
「お世話になりました。課長やみなさんにそうお伝えください」
「わかった。お前のおかげでトラックの運転手も犯人も命が助かった。ありがとう」
そう言い残して桜田さんは去って行った。
*
「アリス!!」
勢いよく類が入って来ようとして止められてる。まだ、集中治療室なんだよね。
殺菌してようやく中に入ってくる。
「アリス!大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫。華音が縫ったしねえ」
う、傷のこと考えて気分悪くなる。
「アリス、もう辞めないか。刑事。俺が原因なら俺が家出るし」
「もう!あれは忘れてっていったじゃない。それに、もう辞表は出したから」
桜田さんにだけど。
「そ、そうか。それならいいんだけど。アリスどうするんだこれから?戻るのか?」
「うーん。しばらく静養しながら考える」
「そうだな」
「それより類!着替えとか持ってきてよ。多分ここすぐに出れるし」
類のことだからここにずっと座っていそうだった。無理にでも遠ざけないと。
「あ、そうだな。じゃあ、持って来るよ。特に持ってきて欲しい物ない?」
あれこれと持って来て欲しい物を書いて類に渡す。
「じゃあ、すぐに持って来るから」
「いいよ。ゆっくりで。あ、でも類仕事は?」
すっかり忘れてた。
「早退したよ。父さんも心配そうにしてたからね」
「ああ、じゃあ、私大丈夫だって、二人に言っといて」
二人とは父と母だ。そう類の母親。
「わかった。病院移らなくていいの?西園寺に」
「いいよ。華音もいるしここで」
「うん。じゃあいってくるね」
「お願いします」
類が出て行く。ホッとする。ああ、もう何年こんなこと、こんな想い抱いていないといけないんだろう。
*
「よっ!」
今度は華音が顔を出す。
「なんて顔してんの」
「何が?」
「切ない乙女な顔」
「うるさい」
華音も知っている。というか相談してた。まだ付き合っていて別れる前に、一番親しい女の子はその時高3だった華音だった。
相談も虚しくフラれ、兄になってしまった。私の想いなんてどこかに追いやられてしまったんだ。
「ほらーまた」
「もう!医者でしょ。患者に優しくしなさいよ」
「てっきり翼で手を打ったのかと思ったのに」
「はあ?」
突然翼の名前が出てビックリした。
「泊まったんでしょ?翼んとこ」
なんて耳の早い人なんだ。
「あれは華音が話せって言ったから」
「だからって泊まる?」
「遅くなったんだから、それだけよ」
華音の呆れ顔。
「あんたって、本当に。翼かわいそうに」
「ちゃんと話したってば」
「そこじゃないんだけど、まあいいか。どう具合は?」
どこじゃないのよ!やっと医者らしくなったし。
「まだ痛みも感覚もないからわかんない。って、ちゃんと縫ってる?」
心配なのはそこなの。気を失うから傷口も鉄パイプも見なかった上に、痛すぎるのか感覚すらもよくわからなかった。どうなってたんだろう。
「あんた本当に傷口見れないのね」
また呆れ顔。それより言ってよ。
「えーとね。傷は…」
「待って!詳しい話しはいいから。綺麗?」
傷の話しはやっぱりやめて!また気を失うよ。
「まあ、傷がなかった事にはならないけど。私の腕よ」
いや、傷の具合にもよるでしょ。ああ、でも聞けないし。
「もう。わかった」
諦めます。自分で見れるまでは。
「それより、もう刑事…」
「辞めたよ」
「早っ!どうすんのこれから?戻るの?」
みんな聞くなあ。同じことばかり。
「少し休む。で、考える」
「そう。って考える必要ある?」
「考えたいの!っていうか休みたいの!」
もう、いろいろ疲れてるんだ。
「ふーん。そんな嫌?」
「華音にはわからないんだよ」
「そう。じゃあ、お大事に!」
「あ、いつ出れるここ?」
やっぱりくつろげないし、ここ嫌だ。
「ああ、もうすぐ移動じゃない。経過順調だからね」
「そう。ありがとう。華音」
「じゃあ、ゆっくり休みな」
華音が出て行った。




