第十三話 病院抜け出す
コンコン
「はい」
ん?類かな?類は毎日やって来る。気持ち整理ついてなかったら地獄の毎日だっただろう。本当に類には昔話なんだ。
意表を突いて八雲先生だった。
「こんにちは。もうこんばんはかな?」
外の夕焼けを見て言う。きっと忙しくって時間の感覚さえないんだろう。
「こんばんは」
「傷跡は一安心出来た?」
この前の絵を思い出し、笑いに堪えて頷く。
「僕の書く絵、そんなに酷い?」
「え、いや、まあ」
いいえとはとても言えない。
「そっか」
あ、しょげちゃった。
「でも、お陰で安心できました」
あ、翼のお陰なんだけど。まあ、いいか。
「そう。ならいいんだけど。そういえば、刑事さん来てたみたいだけど」
「ああ、ただのお見舞いです。元同僚ですから」
桜田さんでも見えたかな?飲み物買いに行ってたし。
「君のこと聞かれたよ。病状とかね」
直接会ったのね。とか…ってなによ。
「そうですか」
「ねえ、君は何者なんだい?」
「え!?」
「病院長とも知り合いだし、他の病院長とも。いったい…」
と言った時だ。
「きゃあ」
病院のベットは移動するために出来ているし、軽い。大きな揺れに一番に揺すられた。手を伸ばしても捕まる物などない。
が、手を伸ばした先に八雲先生がいた。
すがりつく形になったけれど、もうこの際そんなことはいってられない。
「今の地震、何度?」
「大きかったな。この分だと病院は大騒ぎになる。行っても大丈夫かい?」
こんな非常時にも気を使ってくれる。
「ええ、どうぞ」
八雲先生は頷くと急いで病室を出て行く。
テレビをつける。良かった電気は大丈夫だ。速報が出ている震度は5。都市にこれだけの地震だ。何もかも麻痺状態になるだろう。
行かなきゃ!
私はテレビを消し念のやめ携帯をとり、病室を出て行く。
階段で下に降りる。1階受付ではもう院長が指揮をとり場所を空けている。運ばれてくる患者のためだ。急がなきゃ。
病院を出て行くと、街中の混乱がすぐ目の前にあった。誰もが驚き途方に暮れる。道路も止まっている車で全く使えない。
何度か揺れるたびに近くの物にすがりつく。痛い!傷口が痛む。泣き言、いってる場合じゃない。
*
やっと見えてきた。西園寺病院。
私は西園寺病院の中に入る。やっぱり。指揮系統は乱れて医者は手近な患者から見ている。
階段で最上階まで上がる。揺れたが、傷口の痛みに耐えて登っていたから、手すりに捕まっていたので助かった。なんで最上階なのよ!
どうでもいいがこんな時に!と思わずにいられない事を思う。携帯はやっぱり使えなかった。
最後の階段を上がり、非常口を出る。まっすぐそのまま院長室に入って行く。
「アリスちゃんどうしてここに。っ!血がでてるじゃないか?」
言わないで気にしないように来たんだから。
「おじさん、それよりなにしてるの?下は大混乱よ!マニュアルがあるでしょ?何のための大きな病院なの一人でも多くの患者を受け入れないと。ドクターヘリだって、毎回待機させてないから一番最後になるんじゃない!!」
「あ、ああ!」
おじさんはあわててマニュアル探しに。ただ部屋は多分最初の揺れのために乱れてる。どこだか探してるが見つからないみたいだ。
「もう!とりあえず一階二階のロビーや受付の椅子を全部片付けて、災害時のシートを出して。救急チームに患者の色別させて他の医師が治療に当たって。出来るだけベットを明けて。早く行って!!」
「ああ、わかった」
おじさんは慌てて出て行く。最上階に院長室があるのを恨むだろうな、と思いながら見送る。
さて、災害時のマニュアルどこだろう?院長室に無駄に書類や本が多いのを恨みながらさがす。と院長室のドアが開く。おじさん早い。やったの本当に?と振り返ると翼がいる。あ、怒ってる。
「アリス!おじさんに聞いてきたぞ!なにやってるんだよ!?そんな体で」
「ここまでなると思わなくって」
言い訳にならないと思いつつ言ってみる。案の定翼は怒ったままだ。
「入院患者が病院からこんな時に出てきてるんだぞ!お前でも怒るだろう?」
「はい。怒ります」
素直に認めた方がいい。
「でも!来ないとって!やっぱりおじさんでは無理だった。でしょ?」
「だからって!」
ふと、こちらに来ていた翼の足元を見ると
「あった!」
残骸の中からマニュアルが出てきた。
「翼、おじさんにこれを!あと翼もちゃんと医者として働いて!!」
「あー、もー。お前は!わかった。だから大人しくそこで寝ろ!」
翼の指示で院長室のソファーに横になる。
翼は手早く傷口のガーゼをとり傷口を確かめる新しいガーゼをあてる。きっと聞いて持ってきてくれたんだろう。
「そこまで酷くないけど、もう動くな!おじさんにこれ渡して俺も加わるから。お前はここで寝てろ!それから、アリス黙って出てきたんだよな?」
「あ、置き手紙はしてるから」
私を探して、なんて事はないようにと置いてきた。
「はあー。じゃあ、俺は行くから。アリスはここにいろよ!」
「はい」
翼が院長室を去って行った。翼がいるんだった。私が口を出すこともなかったのかな?でも、放ってはおけなかった。
あ、やば。安心したら気が…




