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第十話 アリスの心

 暇!!!と思ってたら華音の言った通り移動された。

 なんか運ばれてるの嫌だなあ。

 部屋に入ると、やっぱり病院だなあ。まあさっきよりは落ち着くか。

 類、意外に時間かかってるなあ。まあ、時間がかかるようにいろいろ書いて探させてるしね。



  *



 トントン

 類か!緊張する。あれ?違う?

「はい」



 中に入ってきたのは八雲先生だった。ホッと息をつく。ああ、こんなんでやってけるのかな。


「どうですか?」


 優しい笑顔だ。これでしょ?お医者さんは。華音。


「あ、ええ。まだ感覚が」


「そうですよね。でも、よくあの状況でよけれましたね?」


 きっと彼がヘリに乗ってたんだ。


「ああ、同僚がよけてくれたんで」


 富山さん。動かなくなった彼を思い出した。


「ああ、それもあるけど、君も避けてたよ」


「え!?」


「体の表面をかすって済んだのは君の姿勢のおかげだったんだけど」


 あ、そういえば、富山さんの方向を向いていた。とっさに避けたんだ内臓とか嫌だから。うう。背中も危ないんだけど。


「同僚の方だけど…脳内出血で亡くなられたんだけど。直接は打撲によるものだけど、脳腫瘍が見つかったよ。それもあって助からなかった」


「やっぱり」


「気づいてたの?」


「脳腫瘍かは判別つかなかったけど、その可能性は考えてました」


 そうちゃんと検査するように言えばよかった。


「どういうこと?」


「視野が狭くなってたんです。本人も気づいてた。もうすぐ定年だったから、命に関わる病気じゃなければそのままの方がって。根っからの刑事だったんです。だから言っても聞かないどころか上に知れて刑事辞めることになったら思ったら出来なくって。でも、私の判別ミスです」


「医者でもないんだ、本人が気づいてるなら検査受けないでいたのは刑事を辞めたくなかったからだろう?」


「ええ」


「君がどうしたって彼は同じ事をしてたんじゃないかな?」


 優しい言葉。自分を責めてた私の心を見透かしてたんだ。だからあえて富山さんの話を続けてる。




 そこに激しいノックの音がした。

 ゴンゴン


「アリス入るよー!」


 類が入ってきた。


「あ、診察?」


「いえ、じゃあ。僕はこれで」


「ありがとうございました」


 八雲先生に心からそう言った。あれ?なんか違ってる。類の顔?違う、変わってない。なのに違って見える。


「アリス?どうした?」


「あ、いや、何も。そうだちゃんと持って来た?」


「アリス、お前あれはないだろ。その下着とか…」


 類は赤面してる。なによ。見たことあるのに!!


「そんなのないと困るじゃない」


「母さんに言えよ」


「いいじゃない。妹なんだから」


 今さら赤面するな!いろんな意味で。



  *




 ああ、何年ぶりだろう類と話してて楽しいのは。いや、あの頃もドキドキしてて会話を楽しむ余裕なんてなかったな。

 兄妹になってずっと辛くて苦しくて、避けてたのに。


「アリス、なんかあった?」


「何で?」


「なんか雰囲気変わった。ん、いや昔のアリスみたいだな」


「刑事辞めたからじゃない?」


 私はとぼけてみる。


「ふーん。そうか。ハードな仕事だもんな」


 類って意外と鈍いんだな。っていうか、あの件すっかり流してる?触れてないだけなのかな。まあ、いいや。



 このまま、あの時なれなかった兄妹になろう。

 いや、でもまさかな展開だな。



  *



 類は時間を見つけては見舞いにやってくる。母もだ。父は抜けるのが難しいのか院長にかけあったようで夜にやってくる。


「アリス刑事は…」


「辞めた」


「そうか。まあ、しばらく休め」


 と、頭をポンポン叩いて、いつもはそんなに話をしないのに饒舌に語って帰って行った。


 内容は犯罪について。本当に刑事辞めさせたいの!?

 全く不器用な父だ。

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