来斗の心配事
「ぅ…ぐ…!」
落とし穴から手袋をはめた手の先が現れ、地面を掴む。
「ぬがあああああ!!」
にょきっと生えるように穴から這い出してきた男…来斗。
「…っは…疲れた…。」
結構穴が深かった。這い上がるの疲れたよ。
だが休んではいられない。
「楓!楓、どこだ!?」
助けに来ると行っていた楓の姿がいつまでたっても見えない。
まさか、まさかとは思うが。
「だー!!」
(落ち着け俺!楓だって軍人だ…やられる事はないだろ…。)
やられる事はない。ないとは思うが。
「くっそ…!!」
自分の勘に頼り、走り出す。
ただ不安だった。
身体に傷がつくのも構わず雑木林の中を駆け抜ける。
そして…
「よしよし。可愛いわね、ジョニソン。」
居た。
「…ッはあぁぁぁ…。」
安心感と疲労が一気に襲ってきた。がっくしと脱力し、膝を着く。
「あら、来斗。可愛いでしょう?ジョニソンよ!」
さっきの子供どうしたの、とかその子犬どこで拾ったの、とかネーミングセンス…とかいろいろツッコミたかったが…。
とりあえず。
重い身体を引きずりながら、ヨロヨロと楓に近付き、肩に手を置く。
「どうしたの?傷だらけね。」
「ああ…うん。まあ。てか楓…。」
「?」
「俺、毎日お前の事好きだって言ってるよな?」
「ええ。愛してるとも言ってたわね。」
「うん。好きな奴がいなくなったら普通心配するよな?」
「ええ。」
「…すんごい心配するほど好きだからあんま心配させないでクダサイ。」
「えぇ。ありがとう。あとごめんなさい。それでね!来斗、この子メスなのよ!やっぱり名前変えた方がいいかしら!?」
「………。」
「…?どうしたの?」
「……………………キャサリンとかどう?」
「いいわね!メアリーとかもどうかしら!?」
「うん。イインジャナイカナー。」
彼が流してるのは涙ではない。心の汗である。
「ワンッ!」
「あら?どうしたの?」
「オレノココロガコナゴナナンダヨー。」
子犬が吠えた先には一匹の狸。
その額には魔方陣が浮き上がっている。首輪には国章。
そして首輪についている円柱形の筒。
「お勤めごくろーさん。」
来斗が首輪に付いている筒を取り、狸の頭を撫でると目を細めてから林の中に消えていった。
先ほどの狸の正体は軍属である魔術師の魔法獣だった。
「んーと…ああ、息吹の旦那からだな。」
「『馬鹿と楓へ。
子供は確保した。さっさと帰ってこい。 息吹』」
筒の中にあった紙に書いてあったのは何とも短い文章。
「…なんで俺だけ…馬鹿…。」
「戻りましょうか。」
「待て待て。その犬どうすんの。」
「連れてくわ。」
「駄・目・だ!元の場所に戻して来なさい!」
「来斗のケチッ!!」
「駄目なモンは駄目!!」
「クーン…」
二人の間で子犬が鳴いた。
来斗さんは楓さんの事が好きです。Loveです。
でも楓さんはlikeなのでかるーくスルーされます(笑)
こんな感じで↓
おまけ。
今日のおまけ当番
来斗&楓&息吹
来「楓!好きだ!」
楓「あー、うん。」
来「大好きだ!」
楓「あー、うん。」
来「…ッ愛してる!!」
楓「あー、うん。」
来「………。」
息「ちょ、俺が言うのもなんだけどあんま来斗虐めないたげて。楓関係だとコイツ結構メンタル弱えから!!鬱になるから!!」
楓「いやー…なんか…ねぇ?」
来「…………(泣)」
息「来斗ォォォ!!!」