間違っているのは
リグレスの兵がソルディアに向かった数時間前。
北部のとある図書館にてある男の声にならない悲鳴が響いた。
「~~~~~ッ!!」
尋常じゃない痛みに一気に覚醒し、悶絶する長い黒髪の男。見た目からして年齢は十代後半から二十代前半だろうか。
図書館の長椅子で寝ていた罰か。罰なのかこれは。
それにしてもこの仕打ちはないんじゃないだろうか。
寝ていた黒髪の男の顔面に落ちてきたのは動物図鑑。
主に鼻にダメージがいった。凄く痛い。
「神月さんごめんなさーいッ!!って…神月さんって髪長いんですね!」
「…ッそこなん?なあなあ、そこなん?」
頭上から聞こえたのはこの図書館の秘書の声。
だがそんなこと言ってる場合ではない。余りの痛みに長椅子から上半身を起こし悶える。
その時に長い黒髪がパサリと流れ、いつも髪をまとめている紐がどこかにいってしまった事を知る。
「…でもまあ自分のおかげで目、覚めたわおーきに。」
ポジティブだ。ポジティブに生きないとやっていけない。
「あ…あはは…。どういたしまして。…でも、ここで寝るのは止めてくださいね。というか寝てるんですか?」
「いやー…一冊読み始めてまうと全部読み終わるまで寝れない性格やねん。」
「…もしかして今日全部使ってこの本読破するんですか?」
秘書が指差したのは長椅子の周りに積み重ねられた沢山の魔術関係の分厚い本。
だが秘書の言葉に苦笑いを浮かべる。
「いやー…わいかてそんな事したら死んでまうわー。この本は予約だけさせてーな。」
「ですよね。了解です。」
「おおきにー。」
椅子の下に落ちていた紐を見つけ、髪をまとめる。
そして涼雅は、一つ欠伸を漏らした。
「う゛~…アカン…完璧寝不足や…。」
自宅兼、仕事場の鍛冶屋で鈍い痛みのする頭を押さえ、呟く。
自らの魔法獣である鷹が涼雅の肩に止まり鳴き声を発する。
「?なんや珍しいなぁ。」
なにやら珍しく落ち着きのない魔法獣を宥めながら首を傾げる。
そんな涼雅を窓の外の木から眺めるのは…。
(…長い黒髪に黒い瞳。そして鍛冶屋…。)
「…ターゲット発見。任務開始。」
シキが小さく呟きながら、手榴弾の安全ピンを引き抜き、鍛冶屋の窓に向かって投げた。
コン!と手榴弾が窓に当たった瞬間。
「っ!?」
窓が爆発し涼雅が凄まじい爆風に吹き飛ばされた。
「ぶはっ!?」
そしてそのまま本棚に激突し、本が雪崩の様に涼雅の上に降り注いだ。
「…今日は厄日やなぁ。」
厄日所ではないが。
爆風であがった煙の中、目を凝らすが何も見えない。
すると。
「…!?」
煙の中から突然数歩のナイフが現れる。
完全な不意討ちの為、避ける事が出来ない。
鋭い金属音が響く。
(…っ危な…。)
避ける事が出来ないのなら、防ぐしかない。
偶然にも手榴弾の衝撃により、近くに転がってきた槍でナイフを叩き落とした。
だが何か変だ。
「…?」
何か…頭が軽いような…。
「…っふおおおおお!?」
「!?」
図書館で一度、そして今。
本日二度目の絶叫が響き渡る。
その声に部屋の中に侵入したシキが目を見開く。
ちなみにその足に踏みつけられているのは涼雅の魔法獣の鷹。
主人を守るために一応シキに立ち向かったが呆気なくやられた。あり得ないくらい弱かった。
「…弱いなお前。」
「ピュエー…。」
何故か恨めしそうな目をしている鷹。
「…なんかごめん。」
「ピュエイ。」
と言う会話は、涼雅の絶叫によって断ち切られた。
ようやく晴れ始めた煙。
「なんやあああ!?わいの髪がッ!髪があああああ!!」
ひいいいいと喚く涼雅の髪は何故かショートヘア。
槍で叩き落とし切れなかった一本のナイフが腰の辺りまであった髪を一気に肩より上までに切ってしまったのだ。
「…うん。でもまあ、イメチェンやな。うん。オッケーやろ。」
幼少期から伸ばし続けて来た髪だったが、切るのがめんどくさかっただけだったので実際どうでもいい。
「チッ…!」
対してシキは一発で致命傷を与えられなかった事に苛立ち、新たなナイフでもう一度涼雅に攻撃する。
「おっと。」
しかし涼雅も簡単には喰らう訳にはいかない。
槍でナイフを防ぐ。
「わい、嬢ちゃんに命狙われる様な事したかいな?」
受け止めたままへらりと笑う涼雅にシキは更に苛立つ。
しかしそれを表に出さず無表情で告げる。
「…神月涼雅。ソルディアに来い。ソルディアには実力のある魔術師が必要だ。もし、逆らうのなら…」
「ここで殺す。」
(ソルディアの人間か…。)
魔術師があちこちで行方不明になるという事件は聞いていたがその犯人がソルディアの人間だとは思っていなかった。
まあ、なんにせよ。
シキの言葉に僅かに目を丸くしてから再び口角を上げる。
「残念やけど…この国を離れるつもりはあらへん。待っとる奴らがおるんよ。」
あの二人と、再び会うまでは。
「この国は離れられへんなぁ。」
スッと目を細める涼雅に一瞬気を取られた瞬間。
「ッ!?」
「油断大敵、やで。」
一瞬の隙を涼雅が見逃す訳も無く。ナイフが弾かれ地を滑る。
反射的に最後の一本のナイフを取り出そうとホルダーに手を伸ばすが…
(な…い…!?)
「大人をナメるもんやないでー。」
「!」
涼雅の声に顔をあげると彼の手には自らのナイフ。
(いつのまに…)
まずい。
手榴弾や爆弾の類いの武器をこんな所で使う訳にはいかない。ただでさえ先ほどの手榴弾のダメージがある。これ以上爆弾等を使ったら…ここは崩れる。
そしてこの魔術師…まだ魔術を使っていない。
魔術無しでもここまで圧されている。魔術を使われたら…恐らく自分は負ける。
(…っまた。)
また、勝てないのだろうか。
「…で…」
「…?」
先ほどまでの抑揚のない一本調子の声ではない。
明らかに感情のこもった小さな声に涼雅が怪訝そうに眉を寄せる。
「…なんで…っ勝てない…!?」
ディストにとって役立たずになりたくない。
なのに、勝てない。
あの鈴音という子供にも。この男にも。
勝つ事が、殺す事だけが自分の存在意義なのに。
悔しさ、苛立ち。
それらを全て圧し殺す様に息を吐く。
その際に小さく震えた肩が彼女が背負う感情の重さだったのかもしれない。
「……。」
俯いている間にも視線が注がれる。
きっと哀れむ様な目で見ているのだろう。
内心情けない自分を嘲笑いながら視線をあげる。
そこにあった黒い瞳は、何故か寂しそうだった。
もうシキは感情を抑える事が出来なかった。
「…っなんでだ!?なんでそんな目をする!?命を狙われたんだぞ!?怒れ!憎め!!殺せばいいじゃないか!!」
─人を殺さなくて良かったって思ってる─
再び頭に響く鈴音の声。
煩い。煩い。
「これじゃああたしが…っ!!」
間違ってるみたいじゃないか。
長らくお待たせしましたー!!(スライディング土下座)
そして久しぶりに登場涼雅さん。白銀の狼~から読んでくださっている方々は
ショートにしちまったあああああああ…!!涼雅さんの髪切っちまったああああああああああ…!!
誰か一人は長髪キャラ入れたかったのにいいいいいいい…!!
………戦闘中に髪切れるのってよくない?一回やってみたかったんだ。←
↓涼雅さんの紹介
名前:神月涼雅
性別:男
年齢:32(見た目は10代後半~20代前半)
髪色:漆黒
瞳の色:髪と同色
髪型:腰まである長髪→肩にかかるかかからないかの短髪
身長:180
武器:槍
ちょww今更だけど涼雅さんの年齢wwもうおっさんやwww童顔設定だとしても無理があるwww
↓は鈴音と涼雅さんでおまけ
おまけ
お久しぶり!
今日のおまけ当番
鈴音&涼雅
鈴「うわ~!涼雅さんお久しぶりです~!」
涼「おおー。ほんま久しぶりやんなー。」
鈴「まだ本編では会ってませんけどね。」
涼「そういう裏事情はご法度やで。鈴音。」
鈴「先生もまだ見つかってませんし。」
涼「え、まだ見つかってへんの?どんだけアイツ放浪の旅好きやねん。」
鈴「好きって訳じゃないと思うんですけど…。本当にどこで何やってんですかね。見つけたら殴っていいですか。むしり殴り殺していいですか?」
涼「自分我狼をどないしたいん?殺したいん?」
鈴「彼は私を心配させ過ぎたんですよ。いつか然るべき報いを…(ふふふふ)」
涼「アカン我狼が殺される!!」
鈴「という事で先生がどこにいるか予想します!!作者「や…ちょ、そういうのやめてもらっ…」黙れ作者。」
涼(どうしようこの子の性格が分かんなくなってきたんやけど。)
鈴「ふぅ…邪魔者は排除し…おっとっと。居なくなったことですし。やりますか。予想。」
涼「排除したって言うた?なあなあ。」
鈴「予想1!!何事も無かったかの様に突然出てく涼「いやないやろ。」早い!!涼雅さん否定が早い!!」
涼「いやいやいや。何事も無かったようにってアカンやろー。一番やったらアカンやろー。」
鈴「じゃあ予想2!もう死んでた!!」
涼「あかんんんんんんんん!!素晴らしい笑顔で言うもんやないで!?しかも鈴音、一番言ったらあかんの自分なんやけど!?本編での真っ白な鈴音はどこ行った!?」
鈴「涼雅さんの知っている真っ白な鈴音など…もう死んだッ!!(キリッ)」
涼「!?」
鈴「はい。じゃあ次ー。」
涼「?…?…!?(パニック)」
鈴「ソルディアの兵として出てくる!!」
涼「…あー。」
鈴「妙に納得でしょー?」
涼「おん。なんかありそう。」
鈴「でも上の三つはとりあえず無いって作者が言ってました!」
涼「!?」
鈴「なんかとりあえずこの三つはあり得ないなって感じになったっぽいです。」
涼「…あ、そう。」
この二人は普通に仲良しだと思う。本編でも裏でもww
この二人でギャグにするとダブルでボケとツッコミww
そして黒い鈴音が書きたかったそれだけなんだwww




