大切な存在
「「!」」
破裂音はシキと鈴音の耳にも届いた。
(ディストさん…?)
一瞬、シキの瞳が揺らいだ瞬間。
「ッ!!」
突き出された双剣が頬を掠める。
しかし構わずに鈴音の懐に潜り込む。
そのまま鈴音の首筋にナイフを突き立てた。
だがそれは鈴音も同じ。
シキの頬を掠めた双剣をそのまま彼女の首筋に向ける。
お互いの首筋で止まる両者の刃。
「…っ」
「…チッ」
鈴音の顔がひきつり、シキが舌打ちをする。
両者とも、ここで死ぬ訳にはいかない。
「…やめだ。」
「ふぇ?」
首元から離れたナイフに首を傾げる。
「あたしは死ぬ訳にはいかない。今度、あたしとディストさんの邪魔をしたら…」
「刺し違えてでも…お前を殺す。」
殺気を放ち、森の中に消えた赤髪の少女。
何故か、それを止める事が出来なかった。
~~~~~~~~~~~
「…あ?」
今、何かとすれ違った…?
立ち止まり、辺りを見回すが人の気配はしない。
だが、さきほどすれ違った『なにか』はかなり素早かった。
動物だろうか…?
首を傾げ、再び駆け出す。
そんな息吹を木の上から眺めているシキ。
(アイツも…ディストさんの敵…。)
不意打ちで殺してやろうかと思い、ホルダーからナイフを取り出しかけたがやっぱりやめた。
ディストが殺さないという事はそれなりの実力なのだろう。それにディスト自身が望んでいない。
そしてなにより、シキの気分が最悪だった。
次々と木の枝に忍者の様に飛び移りながら考える。
(なんで…)
(なんで勝てなかった…?)
彼の望みならば人間だろうが合成獣だろうが殺してきた。
なのに。
『今まで人を殺さなくて良かったって思ってる。』
そんな甘ったるい考えを持っている子供に負けた。
彼女は手加減していた。なのに殺せなかったのは確実に自分の負けだ。
(なんで…?なんで勝てない?なにが足りない?)
実力。
確かにそうかもしれないがもっと他に…。
彼女はリグレスの者だ。いつか必ず戦うことになる。
そこでまた勝てなかったら…。
捨てられる…?
嫌だ。
「…嫌だ。」
小さく発しられた声は、自分でも驚くほど弱弱しかった。
そんな事を考えていると森を抜けた。
森を抜けた先に居たのは。
「…ディストさん!」
大好きな上司。
「早かったね。シ…」
ピタッと彼の動きが止まる。
滅多な事では見開かれることのない彼の琥珀の瞳は見開いたまま自分を凝視していて。
やはり…捨てられるのだろうか…。
「すみませ…」
「どうしたんだい!?シキ!!」
「…へ?」
「ここ!!血がッ!!」
「あ。」
ビシッとディストに指差された頬を触ってみると確かに血がついている。
恐らく先程の戦闘でついた傷だろう。
「はわわわわわ医療班はああいないんだったああどうしよううああああああ。」
(糸目が…渦巻きになってる。)
余裕な笑みを浮かべているディストの面影が全くない。むしろ別人だ。
でも。
…嬉しい。
「?」
「あ、いや!なんでもないんです!大丈夫ですこれくらいの傷!でも…。」
「すみません…。勝てませんでした。」
ディストの顔が見れない。
怒っているだろうか。呆れているだろうか。
だが、ディストの行動は予想していたものと大分違っていた。
ポンッと頭に置かれた手。
それに驚き、顔をあげると優しく笑っているディスト。
「うん、ごめんねシキ。分かってたんだ。君は望月鈴音には勝てない。」
「だから。」
「望月鈴音にはあって君に無いもの。それを捜すんだ。それが君の宿題。」
「間違っても、君を捨てるなんて事はしないから。ゆっくり頑張るんだよ。」
この人は。超能力者なのだろうか。
でも嬉しくて嬉しくてたまらないから。
少しだけ笑ってみた。
でも、それは彼の様な綺麗な笑顔にならなかったけど。
「ああ。そうだシキ。最後の魔術師なんだけど、君一人でいってくれるかい?」
「なにか用事が?」
「うん。帰って来いってさ。」
「……。」
「急だよねぇ~。」
クスクス笑いながらディストがコートのポケットから出したのは小さな紙。
「黒い髪に黒い瞳。普段は北部の鍛冶屋みたいだけど、結構な魔術の実力の持ち主だって。北部か…寒いからちゃんと仕度をしていくように。で、その魔術師の名前は…。」
「神月涼雅。気をつけるんだよ。シキ。」
「了解です。」
シキは暗殺兵として育てられたので、身体能力が半端ないです。合成獣の鈴音と互角なので。
そしてやっと名前出せたニボシスキー…!!でも登場はもう少し先です…!
おまけ
来斗さんが復帰したようです。(ツッコミ的な意味で)
今日のおまけ当番
特別隊オール!
おまけ
息吹さんがイタズラをし始めた様です。
今日のおまけ当番
特別隊オール!
息「戦闘中に来斗がすっころんで泥まみれになってた。アイツあのまんまの格好でどこ行ってやがんだ?」
鈴「さっきシャワー浴びてくるって言ってましたよー。」
息「ほー…。よし。レッツイタズラ。給湯器のスイッチ切ってやろう。」
息「スイッチオーフ。」
パチン
来「%£☆*▽※&!?あぎゃあああああああああ!!?」
息「ナイス悲鳴(`・ω・)b」
来「冷たッ!寒ッ!!旦那ああああああ!!なにやってんスかあああああ!!(扉バーン)」
息「よお露出狂。」
来「違ううう!!確かに半裸だけど!!そういう趣味は無いっスよ!!」
息「もし楓が露出狂になんらかのときめきを感じたら?」
来「喜んで露出狂になります(即答)…ってあり得るかあああああ!!…う゛ぅ…寒い…。リアルではもう梅雨に入りますけど、リグレスはまだ冬なんスよ…真冬っスよ…。」
息「なんとかは風邪引かない。」
来「馬鹿ってか!俺が馬鹿って言うんスか!!」
楓「あら、露出狂。早く服着ないと凍死するわよ?」
来「よし落ち着こう。俺は露出狂じゃないぞ楓。そして俺が半裸なのにつっこもう。」
楓「いや…来斗も遂に目覚めちゃったのかしら、と。ナンデヤネーン。」
来「違ううううう!!そして棒読み!!」
息「ちなみに楓、露出狂になんらかのときめきを感じるか?」
楓「全く。むしろ引くわ。」
来「だろうなっ!ていうか…服…ふぇ…ぶぇっくしょん!!」
鈴「来斗さんタオルどうぞ。」
来「おー…あんがと鈴音。」
鈴「ちなみに私も露出狂には全くときめきを感じません。」
来「むしろ感じてたら俺泣くよ?」




