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一人だけ遺された男。

その数年後、戦争は休戦を迎えた。


リグレスの王が変わり、ソルディアの王が病死したのだ。


新たなリグレスの王は戦争を快く思っていなかった。


ソルディアも、王がいなくなり国全体が纏まらなくなった。


戦争をしたくないリグレスと勝つ可能性が少なくなったソルディア。


利害が一致したと思ったリグレスの王は終戦を求めた。


だが、断固としてソルディアは終戦の申しを受け入れなかった。


しかし王の努力によりなんとか休戦にこぎつけた。


それでもソルディアとの小競り合いは絶えない。


そして彼等も家庭を持った。


自分は仕事一筋な人間の為、家庭を持つ事はなかったが、階級をあげ、司令官にまでのし上がり軍本部に移動となった。


涼香は退職し、凱は階級を上げられる実力があるのにも関わらず戦闘兵として戦場に残った。


凱曰く司令官という立場では自分のやりたい事は出来ないらしい。


彼らしい。


だが、耳を疑う様な知らせが突然舞い込んできた。


『陸…。』


『凱じゃないか。こんな所まで来るなんて珍しい。』


『落ち着いて聞いてくれ。』


『私は君より落ち着いている性格だと自負しているんだが。』


『……。』


『…どうしたんだい?』


いつもの様に憎まれ口をたたいても、彼が食いかかってくることはない。


その表情は曇ったまま。


『…涼香の息子が死んだ。』


『…な』


八つになる涼香の息子が死んだとの知らせだった。


流行病だったそうだ。


『…俺、アイツにどう声かけて良いか分かんねぇよ…。』


いつも強気な彼があんなにしおらしいのは初めて見た。


だが、それで終わった訳ではなかった。


それから一年後。


『どういう事だッ…!!』


『落ち着けって言ってんだろうが…』


涼香が行方不明になった。


涼香だけではない。涼香の夫も。


『この眼で見てくる…っ!』


『待て。…俺が行く。』


『なら私も…ッ!』


『オメーは司令官だろうが。司令官が私情で留守にしていい訳ねえだろ。』


その時ばかりは、階級を上げた自分を恨んだ。


そして自分とすれ違った時に聞こえた凱の声を覚えている。


『どこ行きやがった…!さっさと戻って来やがれ…ッ!!』


彼女と一番付き合いが長いのは凱だ。


冷静なフリをしていて凱が一番涼香の事を心配していたのだろう。


だが、涼香は見つからなかった。


凱に問いかけても、


『涼香は居なかった。』


の一点張り。


何か隠している。


一目で分かったが、凱は口を割ろうとしなかった。


今でも、何を隠していたのか分からない。


それからも涼香を捜し続けたが、見つからなかった。


何年もの時間が流れ、久しぶりに凱を訪ねた。


だがそこにはもう、


『なんだ…これは…!?』


家の焼け跡以外何もなかった。


権力を使い、凱の行方を追った。


そして辿り着いたのは夜月凱は、何者かに殺された。


凱だけではない。


凱の妻も共に死亡。息子と娘は行方不明。


自分が、自分だけが残されてしまった。




「……。」


机の中にある写真を眺める。


鈴音の捜している人物…夜月我狼が生きているとしたら、あの日何があったか問いたい。


そして、凱の死に際も。


それだけを胸に、引き出しを閉めた。


今の自分に、過去は必要ない。



前回おまけを書くのを忘れていた…だと…っ!?


そして今回もおまけのネタがない…だと…っ!?


…と、とりあえず今回の反省会(?)


凱さん、涼香さん、陸さんの元特別隊。


ですが、凱さんと涼香さんは死んでしまいました。


一人だけ残されてしまった陸さんは誰よりも勝利に拘っているかもしれませんね。


だから鈴音に渡した銀髪の人物をまとめた資料の中に凱さんと我狼さんを入れませんでした。


なので自分はどこまで卑怯者なのだろう的な発言をしてました。


入れなかった理由は本能的に凱さんと我狼さんが親子なのを知られては駄目だと思ったのと、


鈴音が我狼さんを見つける事で軍から早く抜けるのを防ぎたかったんでしょう。


ちなみに、鈴音は我狼さんの過去は話していません。


なので、ギロルが凱さんを殺したという事を陸さんは知りません。


うん…なんか矛盾が多々ありそう。質問はいつでも待っています。
















おまけ

あまりにおまけのネタがないので軽くネタバレしてやんよwww


今日のおまけ当番

???










「化け物!」


「二度と現れるな!」


「消え去れ!」


「死んじゃえばいいのに。」


「死ね!」




─シネ─




殺意と憎悪。


人々のそれがまだ幼い少年に向けられる。


幼い子供には耐えられる筈のない人間の醜い感情。


だがそんな中、少年は地面に膝と手をつき、ただ無表情で地面を見つめていた。


いくら醜い言葉を浴びせられても、少年の表情は崩れる事がない。


だが。


「…ぅ…っ」


投げつけられた石が額に当たった時、口から呻き声が零れるのと同時に初めて少年の表情が歪んだ。


それに気付いた人々は次々と少年に傷を与えていく。


…こんな少しの傷じゃなくて、命に関わる傷をくれればいいのに。


死ねと言うのなら、殺してみろ。


自分だって好きでこんなのになった訳じゃない。


今すぐにでも死にたい。


でも、それをさせてくれないのは。


お前達だ。


死ねと言いながら死なせてはくれない。


なんて矛盾だ。滑稽すぎる。


諦め半分で口を開く。


『───』


「おいっ!なにか言ったぞ!!」


「まさか…っ!また誰か死ぬのか!?」


嗚呼。やっぱり駄目だった。


言葉を発しただけで人を殺せる訳ないのに。馬鹿げている。


もし言葉を発しただけで人を殺せるのなら、もうとっくにお前達を殺しているというのに。


もう全てどうでもいい。


だから。誰か、誰でもいい。


(おれを、殺して。)


彼は考えるのを止め、目を閉じた。










虐められているのは…誰でしょーか?(笑)


きっと正体が分かったらビックリすると思います。


ええええ…みたいなw








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