正義
息吹が出て行くのを見送ってから、椅子の背もたれに凭れる。
この話をすると異様に疲れるのは今も昔も変わらない。
リグレスとソルディアの戦争は何年も前から続いていた。
それこそ何十年。
自分の父は軍人だった。
『正義』
それを全てに軍人をやってきたんだろう。
『正義』は息子である自分にも受け継がれた。
リグレスは『正義』ソルディアは『悪』
そう叩き込まれてきた。
そして遂に自分も戦場に立つ時が来た。
愚かな自分はソルディアの国民を全て皆殺しにした。
助けを請う一般人も全て。
『正義』の為の犠牲。
そう片付けて。
だが、幼い子供の泣き叫ぶ声が目蓋を閉じれば聞こえる。
今も。
分からなくなった。
いつ狂ってもおかしくない戦場で自分がやっている事が。
しかし、自分の中に根付いた『正義』があった。
それに縋り付いていたから自分は狂わずに済んだのかもしれない。
でも。何故か違和感が生まれた。
そしてとうとう自分の全てが壊される時が来た。
いつもの様にソルディアに攻め込み、命令された地域の殲滅中だった。
自分が殺した夫婦の子供が、小屋の隅に蹲って泣いていた。
いつもの様に、殺すつもりだった。
剣の切っ先は、確実に子供の左胸に。
子供の左胸を剣が貫く、その瞬間。
子供と自分の間に割って入ったのは、銀。
『なにやってやがんだてめえは…!!』
敵だと思った。だが、銀髪の男の軍服はリグレスのもの。
『なに。仲間の任務の邪魔すんの?』
『任務は敵兵の殲滅だ!こんなガキまで殺せなんて誰も言ってねえ!!』
敵兵の殲滅…。確かにそうだったかもしれない。
だが自分には関係ない。
『甘いね。そんなんでホントに軍人?ソルディアは『悪』。子供だろうと容赦はしない。』
『間違ってんぞ…!てめえは…!!』
イラついた。自分の何も知らない男に自分の全てを否定される筋合いはない。
『うるさい黙れ!!僕のやってる事は『正義』だ!!これは『正義』の為の犠牲なんだよ!!』
『これが!!これがてめえのいう『正義』か!?よく見てみやがれ!!てめえのやってる事がどれだけのヤツを苦しめてるか!!』
言い返す言葉が無かった。
自分が…自分のやってる事は。
『てめえのやってる事は正義なんかじゃねえ…!!ただの人殺しだ!!』
壊れた。銀髪の男の言葉によって自分の全てが。
そして、それを認めてしまう自分がいた。
『違う…っ!!違うッ!!』
『あああああああああああああああああああああああ!!』
積み上げてきた物は、容易く崩れた。
陸さんの過去でした。
若かりし頃の陸さんは生意気ボーイなんです(笑)
一人称も「私」ではなく「僕」ですし。※何年か経つと「私」になります。
陸さんの時代の戦争は今より酷いものでした。
そして銀髪の男性。
まあ分かってしまうと思いますけど。
彼の正体も次回で分かる…かな?
あ、おまけは今回無しです。すみません。




