夜月凱
「はい。息吹君こないだぶりだねぇ。」
「…なんか最近俺呼び出し多くね?」
第三区域の本陣の中で顔をひきつらせる息吹。
「まあまあ。で、本題なんだがね。」
「?」
「最近リグレスで魔術師が殺されたりとか行方不明になってたりするんだよ。しかも大勢。」
「それで、不審に思った国王直々に各地域での調査、保護命令を出したんだよ。」
「…俺に行けと。」
「ご名答。東は私に任されてね。いやー…困ったー。」
「全く困った様な顔してねーぞアンタ。」
はっはっは。と呑気のお茶をすする陸に焦った様子や困った様子は無い。
「別に良いけどよー…ここはどうすんだよ。いつ攻められるか分からねえだろ。」
「君が3日以内に帰ってきてくれると助かるんだがね。」
「……。」
3日で帰って来いと。
「……。」
その通り。
無言の会話を繰り広げる二人。息吹の顔はひきつっていたが。
「あー。わーったよ。行けばいいんだろ!行けば!」
「鈴音君も連れて行ってくれるかな?彼女にとっても良い経験になる。」
「へーへー。」
「じゃあよろしく。書類提出も忘れずに。」
「う゛…。」
天幕を出ようとした息吹の足が止まる。
「…?どうしたんだね?」
「なあ。アンタ、夜月凱と知り合いだったんだろ?」
「…まあ、ね。」
「…何を隠してやがる。」
肩越しに振り返る息吹の瞳が細められる。
その眼は、陸を逃がす気はないようだ。
「…はぁ。君には敵わないね。」
「夜月凱と私は同じ隊の隊員だった。これで満足かい?」
「そんな事聞きてえんじゃねえ。鈴音の捜してる夜月我狼…、夜月凱と関係あるんだろ?」
大きくため息を吐きながら息吹に告げる。
だが、息吹の視線は逸らされる事がない。
「…息吹君。知っているかい?金髪と銀髪。この二つの髪色を持つ者は堕天使と悪魔の涙を飲んだ者として昔から蔑まれている。まあお伽噺でしかないけれどね。」
「その髪色はずっと子孫に受け継がれていくんだよ。ずっと、ね。」
陸の言葉を理解したのか息吹が口を開く。
「夜月凱の…髪色は?」
「…銀色だよ。」
決まった。夜月我狼は。
「彼は、凱の息子だ。」
「…なんで、隠してた。」
「…分からない。何故か、言ってはいけない気がしてね。」
そう言って自嘲的に微笑む。
「もう一人いたんだろ?特別隊の隊員。」
「魔術師が一人ね。だがまあ彼女も…」
「…死んだのか?」
「行方不明。まあ、何年捜しても見つからなかったから死んだと考えて間違いはないね。」
「…そーかよ。」
「結局。残ったのは私一人だ。」
「……。」
「行きたまえ。時間が無いよ。」
「…ああ。」
息吹が出て行くのを見送る。
今の自分はどれだけ情けない顔をしているのだろうか。
おまけ。
来斗さんが自然の脅威に立ち向かい、惨敗したようです。
今日のおまけ当番
来斗&息吹
来「………(ガタガタガタ)」
息「うわ!来斗がもやしになってる!(!?)ボロボロのカッパ着てびしょ濡れになってる!!んでめっちゃ震えてる!!」
来「……丁寧な解説ありがとうございま……。」
息「え、なんて?最後の方聞こえねえ。」
来「………丁寧な……。」
息「え?」
来「…寒ぃ…。」
息「あ、そう。ストーブあるけど。」
来「(もそもそ)」
~30分後~
来「…なんとか生還っす。」
息「乙ー。」
来「ありえない風と雨っすね。」
息「だな。」
来「俺22年の人生の中で初めてカッパに感謝しましたっす。」
息「お前傘派?」
来「うっス。」
息「俺もだけど、今日はさすがにやばかった。さすがにカッパに目覚めた。」
来「同じくっす。まあカッパも途中で木の枝のヤローによって破かれましたけど。」
息「残念だなお前(笑)」
来「まあ読者の皆さんも気をつけてくださいっす。」
来斗さんの体験談は作者の体験談です。木の枝ァァァァァ!!
みなさん気をつけてくださいね。




