残酷な笑顔
「うっ…わあ…。」
門の外は、平野。9時の方向には林。3時の方向には崖がある。
12時の方向にはなにもない。向こうにはソルディアがあるのだろうか。
そして無数の黒い物体。
目を凝らすと確かにそれはコウモリ。
襲いかかってくるそれを斬り倒す。
一匹一匹の力は弱い為、そこまで苦戦する事はない。
だが量が多い。
倒しても倒してもキリが無い。
「こ…っのお!!」
二本の双剣を使い、四匹同時に串刺しにしてから斬り捨てる。
いつのまにか3時の方向に進んでいたらしい。辺りは木に囲まれていた。
「…っは。」
「…へえ。」
「!」
どこからか突然聞こえてきた声。
息吹でも来斗でも楓でもない。
「リグレスにも子供がいたなんて…ね。」
闇の中からゆっくり、這い出る様に姿を現した。
「その実力…ソルディアにも欲しいくらいだよ。」
ミルクティーの様な茶色の髪。細められた糸目。そして紺色のコート。
歳は息吹と同じ位だろうか。
茶髪の男はニッコリ口角を上げた。
いつのまにか、男と鈴音の周りに合成獣はいなくなっていた。
「誰…ですか…?」
「ソルディアの人間。紫雲が良く知ってるんじゃないかな?」
男のコートには確かにソルディアの国章。
男の笑みは崩れることがない。
逆にそれが恐怖を煽る。
「…さて。少し相手をしてもらおうかな?お嬢さん。」
男が腰の剣を抜いた。
刃が月明かりを浴びて光る。
「……。」
「……。」
静寂。
先に動いたのは鈴音。
地面を蹴り、一気に距離を詰める。
「オオオッ!!」
そして突きを数発連続で放つ。
だが男は全て紙一重で避ける。
「…このッ!!」
焦れた鈴音が双剣を降り下ろす。
しかしそれも受け流され、体制を崩す。
「ぅわッ!?」
地面に手をついた鈴音の目の前には鈍く光る剣先。
「…ッ!?」
「…おっと。」
目を見開いた鈴音だが次の瞬間には剣先を弾き飛ばし、距離をとる。
「まあまあ…かな。じゃあ今度は僕からいこうか。」
男が上段に剣を構える。
それに鈴音も油断なく構えた。
「キ…イ゛!!」
飛んできた合成獣を真っ二つに切り裂く。
「…うし。とりあえずは終わりか。」
息吹の周りには合成獣の死体が転がっている。
その内の一匹をつまみ上げ、じっくり見る。
「…やっぱりか。」
息吹の視線は合成獣の腹に浮かび上がる魔方陣に。
「息吹の旦那!」
「! 来斗、楓。生きてたか。」
駆けてきたのは来斗と楓。二人とも怪我は無いようだ。
「息吹隊長。鈴音は?」
「一緒じゃねぇのか?」
「どこ行ったんスかねぇ…?」
「…探すぞ。」
「…息吹隊長?」
「多分…奴がいる。俺は林の方に行く。お前らは崖の方に行け。」
表情が険しいまま、彼は姿を消した。
鋭い金属音が闇の中に響く。
「…ッ!?」
降り下ろされた剣を双剣で流すが、切り上げられる。
なんとか避けるが数本金糸が舞った。
(…この程度、なんだ。)
落胆に似た、おかしな感情を持ちながら男は鈴音に突きを数発放つ。
「く…ッ!」
双剣でなんとか防ぎながらじりじり後退していく。
「っと。」
「わっ!?」
足払いをしかけると見事に小さな身体が転ぶ。
「終わり、だね。」
逃がす気はない。
彼は刃を鈴音の喉に突き立てた。
だが。
「…!?」
剣は鈴音の喉に刺さることはなく、地面に突き刺さった。
そして背後に気配。
「…なるほど。軍に子供がいるわけだ。」
ゆっくり振り返るとそこには、金髪の少女。
しかし、その背後で揺れる九つの尻尾。
「君は合成獣なんだね。」
「…にしても。瞳の色を見る限り、完全な合成獣って訳でもないんだね。スピードもそこそこ上がるみたいだけど。完全な合成獣になる前に薬品で副作用を止めた…か。」
精神崩壊は免れたけど、合成獣としての能力は半分か等と納得する男。
「でもまあ。」
鈴音が動いた。
「負けるほどじゃないなぁ。」
彼は笑った。
驚きのスピードで男との距離を詰め、無数の斬撃を放つ。
だが男は剣で全て防ぐ。
「オオオオオッ!!」
逆手に双剣を持ち、渾身の一撃を放つがそれも防がれる。
それどころか逆に一本剣を弾かれてしまう。
「がら空き。」
「か…はッ!!」
空いていた脇腹を蹴られ、吹き飛ぶ。
剣で防いでいたが大人…それに男の力に鈴音の小さな身体は近くにあった木に勢いよく叩きつけられる。
「…ゴホッゴホッ!」
「さて。」
ゆっくり近づいてくる男を睨みながら、鈴音はポケットに手を忍ばせた。
今回の話は色々説明しなきゃなーと思います。
まず鈴音。
彼女は完全に人間になった訳ではないんです。
前作で確かに薬を服用しましたが、自我を失った完全な合成獣になるのを防いだだけなんです。
まあギロルが作った薬ですから。何が起こってもおかしくないんですよ。
…と、保険をたてておく←
次に新キャラ糸目の男の人。
彼は戦闘狂です(え)
顔には出しませんがわくわくしてます。
そして息吹さんは彼が大嫌いです。我狼さんとは違って心から憎んでいます。
理由は性格(笑)
質問があったら感想にお願いします。
おまけ。
楓さんが悪戯をし始めた様です。
今日のおまけ当番
特別隊オール!
楓「鈴音と息吹隊長に報告がありまーす。」
息「あ?」
鈴「なんですかー?」
楓「じつは私…身ごもりましたー。」
息「ぶっ!?」
鈴「身ごもる…?」
楓「鈴音、赤ちゃん出来たって事ね。」
息「おおおお前!!相手はッ!?相手は誰だッ!?」
楓「隊長。分かってるハズよ。」
息「あんの…馬鹿…!!」
来「? みんなして何やってるんスかー?」
何もしらない馬鹿登場。
息「死ね。(殴)」
来「いって!!いきなり何すんスか!?しかも目が座ってる!!何この人怖い!!」
息「うるせぇ!!責任取れお前えええ!!」
来「なんの!?」
息「……。」
来「…え。なにこの沈黙。」
息「…なんのことか分かってないのか?」
来「…うす。」
息「…鈴音、前渡した護身用の銃。」
鈴「はーい。(ポイッ)」
息「(パシッ)(ジャキンッ!)」
ダンダンダン!!
来「うわああああああああああ!?当たる!!当たる当たる!!」
息「うるせぇ死ね。」
来「ぎゃああああああああああああああ!!」
楓「……(嘘って言うタイミング逃した。)」
鈴「楓さん楓さん。」
楓「どうしたの?鈴音。」
鈴「赤ちゃんって仲の良い夫婦の所にコウノトリさんが持ってきてくれるんじゃないんですか?」
楓「………(絶句)」
鈴音は双剣のほかにも護身用の銃を持ってます。
まあ使い方を分かっていませんが(笑)




