身に纏うは、白いコート
「鈴音!」
「はい?」
鈴音が軍に入って数日が経った。
だが敵襲も無く平和な日々を過ごしていた。
急に息吹に名を呼ばれ、振り返ると息吹の手には小さな木箱と白い布の様な何か。
「息吹さんなんですか?ソレ。」
「全部お前のだ。」
「?」
渡された箱を開けると自身の青い石のついたペンダントが入っていた。
一見何も変わっていないが青い石の中には国章の模様が透けて見える。
「うわー。凄い…コレどうやったんですか?」
「知らねえ。指令曰く軍の技術。」
「軍ってすごいですねー。」
「大体なんでも出来るのが軍だからな。」
(大体…。)
「あと、これは私からよ。」
「楓さん!」
わーいと鈴音が尻尾をパタパタ揺らす。
その九本の尻尾の風圧で息吹の目にゴミが入り、彼が呻いている事を彼女は知らない。
息吹の手から白い布の様な物を受け取り(奪い)鈴音に差し出す。
「はい。」
「?」
広げてみればそれはフードのついた白いロングコートだった。
「わーい!」
「なん…ッ!?」
鈴音の尻尾の速度があがり、顔を出した来斗の目にもゴミが入った。
「あなた薄着ですごく寒そうだったから…」
「そうですかー?でもありがとうございます!」
確かに楓と比べて、鈴音の旅装束は薄着なのだろう。
ありがたく受け取り、袖を通す。
「楓さん楓さん!ピッタリですよ!」
「あら、良かったわ。(鈴音小さいものね…Sで良かったわ。)」
「本当ありがとうございます!」
「どういたしまして。」
仲良く笑いあう二人の背後でゴロゴロと地面で悶えている男二人がいたとか。
「おーおー…嫌な予感がして来てみれば…。」
深夜、第1門…見張り台でぽつりと呟いく人影。
双眼鏡を使って眺める先には大きな影。
よく見ればそれは小さな影が集まって群れとなっている。
「ビンゴ…だな。」
くわえていたタバコを捨て、足で消し潰す。
「おい!敵襲だ!全員起こせ!!」
階段で地面に降り、門番に告げる。
門番は頷き、命令を遂行しに行った。
「さぁーて…。」
「やるか。」
息吹のマフラーが風になびいた。
「敵襲ー!敵襲ー!!」
「…んぇ?」
大音量の叫び声に鈴音は目を覚ました。
簡易ベッドと机とイスしかない小さな天幕。
天幕の外が騒がしい。
「敵襲…!?」
重い身体をなんとかベッドから引きずり出し、机の上にあったランプに火を点ける。
そして、イスに掛けてあったコートを羽織り、外に出る。
「鈴音!」
「楓さん!」
外に出ると一般兵が慌しく駆け回っている。
その中に混じって楓の姿もあった。
「敵襲よ!しかも大群!」
「はい!すぐ行きます!!」
駆け出した楓を追って走る。
しばらく走ると門が見えてきた、そこには息吹と来斗の姿も。
「息吹さん!来斗さん!」
「来たか。」
「来斗、報告。」
「うーっす。数は無数。小型の合成獣らしいっス。」
「…それだけか?」
「うっス。」
「…つっかえねえなお前。」
「…これでも頑張って調べた方っスよ。」
ため息を吐く息吹。ドヨドヨしたオーラを出し始めた来斗。
「息吹隊長。小型の合成獣っていうのはコウモリ型の合成獣みたいよ。」
「ナイス楓。…だそうだ。小型だから別れて蹴散らせ。」
いいか?と聞かれて頷く各自。
「あ、ちなみに今回は一般兵も戦うから少しは楽になる…かもしれない。」
実際は自分の身を護るだけで精一杯なんだろう。
期待は出来ない。
「うっし。じゃあいくぞ。お前ら死ぬんじゃねえぞ。」
声を掛け、門番に門を開ける様に指示する。
「鈴音。」
「わっ!びっくりしました!なんですか?息吹さん。」
背後から声を掛けられ、飛びのく鈴音。
「これ持っとけ。」
手渡されたのは、円柱形の小さな筒の様な物。
先には紐がついている。
「やばくなったらこの紐を引っ張って…地面に投げろ。」
「あ!?息吹さん!?」
門が開いた瞬間、走り出す息吹。
ポケットに円柱形のそれを入れて、鈴音も駆け出した。
おまけ。
来斗さんが息吹さんに相談している様です。
おまけ当番
来斗&息吹
来「………。」
息「? 何やってんだ来斗?」
来「悩んでるんス。」
息「お前ほどの馬鹿でも悩むんだな。」
来「今すっげー悲しくなった。」
息「で、なに悩んでんだよ。」
来「楓はツンデレ属性か否か。」
息「自分の星へ帰れ。」
来「いや出身ここっスから。」
来「でも息吹の旦那!楓はツンデレか否かで俺の中では大問題なんスよ!」
息「問題なのはお前の頭だ。」
来「この際辛辣なツッコミは無視させてもらいます。で、楓はツンデレかクールか!?どっちっスかね!?つかどっちでもポジティブに接しないとそろそろ俺の心が折れる。」
息「折れて再生すんな。」
来「ツンデレ…じゃないと思うんスけどねー…。ん?でも抱きついたら発砲されるのはなんだ?」
息「…ただ単にお前が嫌いなんじゃねぇの?アイツ鈴音には優しいし。」
来「…………。」
息「ごめん!嘘!だからそんな顔すんなって!なっ!!」
来「…今世界が絶望に満ちた。」
息「あああもう!!あ!多分楓、お前の事嫌ってはいねえよ!アイツ本当に嫌いな奴は無視だから!!ガン無視だから!!」
来「…ホント?」
息「ホントホント!マジマジ!!」
来「じゃあ楓はクール&微ツンデレということで!!(キラキラ)」
息(コイツ…!!)
来「解決解決~♪ってあれ?どうしたんスか?息吹の旦那。」
息「もういいよ…お前。それで生きてけ。」
来「うっス!!」




