新たな始まり
「うわぁ…。さむ~い。」
小柄な金髪の少女が呟く。
少女が息をするたびにそれは白くなって消えていく。
「…もう一年かぁ…。」
少女の高い声が少し寂しさを帯びたものになる。
その時。
「───!!」
「───!!」
「? なんだろ?」
よく聞き取れないが、なにか言い合っている様だ。
「…行ってみよう。」
金色のポニーテールを揺らしながら少女が駆け出した。
「オラァッ!邪魔だガキ!!」
東部の街の入り口で大柄な男が少年に向かって怒鳴る。
どうやらこの男は山賊の様だ。
「止めろよ!!この街には金目のもんなんて無いぞ!!」
少年も負けじと叫ぶが大柄な男にかなうはずはなく。
「うるせえ!!」
男が拳を振り上げる。
少年は痛みを覚悟し、目を瞑る。
その時…
「ストーップ。ストップでーす。」
二人の間に割って入ったのは長い金髪の少女。
「あぁ?怪我したくなきゃ退きなガキ。」
「これでも私15歳ですよ。」
ニッコリ笑いながら答える少女。
「ハッ!生意気な嬢ちゃんだ!!そこを退きな。」
「でもこの子はここに金目の物なんて無いって言ってますよ?この街は諦めてもらえます?」
間髪入れずに答える少女に苛立ってきたのか再び怒鳴る男。
「うっせえ!!これで忠告は最後だ!!さっさと退け!!」
「嫌です。私もこれで忠告は最後にします。この街は諦めて下さい。」
少女の蒼い瞳が少し鋭くなる。
「俺は相当ナメられてる様だな…!!上等だクソガキ!!」
男の拳が少女に迫る。
「危ない!!」
少年が叫んだ瞬間。
「なっ…」
「…えへへー。」
いつの間にか少女は男の真後ろに移動していた。
その表情は笑顔なのにどこか冷たい。
それが男にとっては恐怖でしかなかった。
「こ…ッの野郎!!」
振り返り再び拳を振り下ろす。
だが…。
「……。」
「はあ!?」
拳は空振り、右横にいたのはやはり金髪の少女。
驚きの声をあげる男。
彼女は困った様な顔をしながら腰のホルダーに装備していた双剣の一本を手にとった。
「…アハッ★」
そしてそれをチラつかせながらニッコリ笑った。
端から見れば少女が笑っている様にしか見えないのだが、男には分かった。
黒い。果てしなく笑顔が黒い。
そして情けない事にこの小さな少女が恐ろしいと思ってしまった。
「…まだやりますか?」
「…ッくそ!!」
青い顔をしながら駆けて行った男を見送る少女と少年。
「ありがとう!姉ちゃん強いんだな!!」
目を輝かせながら言う少年にニッコリ笑って少女は言った。
「そんな事ないよ。怪我はない?」
「うん!姉ちゃん名前なんて言うんだ!?」
少年が言った時、風が吹いた。
少女の金色のポニーテールが揺れる。
「鈴音。望月鈴音だよ。」
少女が笑った。
始まりましたー。やっとです…。ホント…。
みなさんこんにちは。またはこんばんは。作者の犬丸です。
白銀の狼と金色の雌狐。前作から見て頂いている方もいるでしょうが、今回もお付き合い頂いたら幸いです。
今作は更新速度を早め、2日に一度は更新したいと思います。
こんな駄作ですが、よろしくお願いしますm(_ _)m