第7話
修行を開始してから2ケ月経った。結局良い拠点が見つからなかったので、拠点は2人で暮らすには広すぎるあの洞窟である。
ジーナさんの自衛の為に、洞窟の広間でギルさん直伝の格闘術を教えた。元々適性があったのか、僕が教えたことをドンドン吸収していく。体力のあるジーナさんは根気強く稽古を続けた。
あの日以来、ジーナさんはオレに良く抱きつくようになった。その度に良い匂いがし、体や顔におっぱいが当たり、なんとも言えない気分になる。
ぶっちゃけると、興奮した。
そういうときは、外に出てこっそりと処理をした。
…ふぅ。
ジーナさんは美人だし、そういうことに興味が無いわけではないのだが、こんな状況で子作りなんて出来ない。
そもそもジーナさんにその気はないだろう。弟のように思われてるんじゃないかな?あーでも初めて会ったときに夜伽云々言ってたしなー…
やはり、おっぱいは危険である。分割され、高速化した思考全てがおっぱいで埋まってしまった。なんなのアレ?もはや凶器である。
あれ以来、ジーナさんとよく話すようになり、彼女のことも聞いた。
出会って数日は、村のことを思い出す度に泣いてしまったジーナさんだが、今では吹っ切れたのか、オレに自分の村のことを教えてくれた。
ジーナさんのいた村はバルディア帝国南西部にあったらしく、ジーナさんはその村の人が拾った子供らしい。なんだか親近感が湧いた。
ジーナさんの家族は村で農業をやっていて、ジーナさんも手伝っていた。褐色の肌は陽に焼けたのではなく、生まれつきらしい。
外の世界の情報も知りたかったので、貨幣価値について聞いたり、流行を聞いたりした。
銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚、単位はガスト(オーガスタ・マクベインより命名)というのは知っていたが、一食あたり約5ガスト、宿に泊まるとするとだいたい30ガスト、一般的な月収が銀貨20枚という知識を得ることができた。自分の所持金は、村で分配された分と拠点にしている洞窟に在った分を足すと、白金貨1枚、金貨61枚、銀貨278枚、銅貨573枚というものになった。えーと、換算すると1,638,373ガスト…819か月分の月収、68年分の年収に相当する額を持ってるのか。盗賊とゴブリンよ、貯めこみすぎだ!
最近の帝国では、魔法使いとそうでない者の差別化がさらに行われており、税金や待遇、仕事の斡旋などでそれが顕著らしい。魔法が使えるというだけで違法行為さえ許される社会。魔法が使えるというだけで無能が政治に参加する社会。正直バルディア帝国に良い印象は持てないな。
この2ケ月の共同生活で、ジーナさんのことを知り、彼女が信用に足る人物であると判断したので魔術について話した。
「ソフィアン様にはいつも驚かされてばかりですので、もう驚くのに慣れました」
驚き慣れるってどうゆうことさ。受け入れてくれるのが早くて助かったけどさ。慣れってスゲー。
格闘術以外にも魔術の訓練も始まった。魔術に関しては不器用なジーナさんだったが、続けて行くうちに感覚を掴めたようだった。
オレの修行は、最近はカルサに足を運んでいる。カルサに近づくにつれて、現れる魔物は強くなっていき、完全にカルサに入った今、上級の魔物が増えて行く。上級の魔物の中にはこの前のオーガのように魔法を扱えるものがおり、戦ったうちの一体が魔法を使っていた。
川の傍で戦ったスライム系上級のデススライムがそうだった。
下級のグリーンスライムは緑色なのに対し、デススライムは黒と緑、黄色を混ぜ損なったような汚い色をしている。スライムの体は液状で、獲物を体内に取り込み、強い酸で出来た体で焼き殺す。体の中にコアがあり、それを壊すことで倒すことができる。液状の体に物理攻撃は効きにくく、中級以上になると体液を固めて攻撃できるようになる。デススライムは更にその体液に神経毒、出血毒、致死毒などがあり、それを気化させたり飛ばしたりして攻撃してくる。ちなみに中級のポイズンスライム(黄色)は神経毒だけで気化はできない。大きさは不定形なので定まっていないが、下級よりも中級、中級よりも上級の方が大きい。
遭遇したデススライムは6m程の大きさをしており、3mの水の刃を飛ばしてきた。
【解析】 【水刃】
水を操り刃にして飛ばす魔法であったが、使い手がデススライムであった為にその凶悪性は増していた。
水の刃が通った後の地面はグツグツと腐りはじめていた。自身の体の一部を刃にして飛ばすことで、その殺傷力は格段に上がった。《治癒》で傷は癒せても、毒は取り除けない為、相手の気を読んでいなかったら死んでいただろう。
早速解析した魔法を利用して、炎の刃で核を焼き切って殺した。
毒があるし食べられそうにない、そもそも食べる気もないが、何かに使えるかもしれないので、デススライムの体液を魔術で操り、アイテムボックスに入れておいた。
水の魔術を得たことでわかったことだが、これで消費する魔力は炎と風と同じくらいだった。まだまだサンプルが足りないので、今後も魔術の式を集めよう。
そこからさらに日は過ぎて、修行が始まって5カ月経った。
いや、あんま言うことないから飛ばすのよ。サクサク行こうぜ!
オレの身長は順調に伸び、ジーナより高くなった。だいたい167cm位だろうか。伸びないんじゃないかと思ってたから、かなりホッとしたよ。でももう少し欲しいところである。
5ヶ月に及ぶオレとの個人レッスン(甘美な響きだと思う)で、ジーナは強くなっていった。魔力がまだ小さい為、格闘主体の戦いになっている。気を読んだり魔力を感知したりはできないが、その怪力は脅威だ。なぜかジーナも訓練後の筋肉痛が1日で治ったみたいで、日に日に力が増して言ってる。これもオレの所為か?
いや、ジーナに抱きつかれた後のオレの反応を実は見ていたようで、3ヶ月前、処理している現場を押さえられてそのままなし崩し的に…。ジーナもオレも初めてで、最初はお互い恥ずかしがっていたが、なんていうか、おっぱいってすごいな。あんな使い方出来るもんなのか。思わず感心したよ。その日は朝までずっと行為を続けたが、朝になったらジーナが真っ白になっていた。
その日からジーナとの肉欲の夜の生活が始まった。オレだって自重しようと思ったんだよ?でも、綺麗な女の人に求められて何もしないのって、失礼だと思うんだ。うんうん。ぼくはわるくない。
そうやって毎晩体を重ねてる時にもう一つの魔法がジーナにも影響を与えたんじゃないかと思うんだ。未だに詳しい効果が解らないのが怖いが。
子供が出来るのは困るなー、と思っていたのだが、毎日体を重ねたにもかかわらず、一向にそんな気配はない。絶倫の代償に種なしだったらイヤだなー。行為をする分には都合がいいが。
おっぱいの話は置いといて。
そう、ジーナは格段に強くなり、今では弱い中級の魔物と戦えるだけの実力があると思う。5ヶ月で中級並みの力を付けるって、どれだけ才能があるんだよ!という気もする。少し嫉妬した。魔術の行使だけで魔力を上げるのも限界があるだろうし、今度戦わせてみようか。
修行は、なんだかんだで上級の魔物との戦闘にも慣れて、今では多対一でも勝てるようになった。魔法持ちの魔物との戦いも何度かあり、ばっちり【解析】させていただきました。本当にありがとうございます。そんな魔法を使った魔物との戦いをダイジェストでどうぞ!
カルサ方面で修行をしていたオレが、ある日出会ったのは獣型の魔物、魔獣系上級のシルバーウルフ。銀色の体毛を持った2mを少し超えるぐらいの大きなオオカミだ。動きは俊敏で、その牙と爪は鉄をも斬り裂く。体毛は厚く、斬撃や衝撃を吸収してしまう。
出会ったシルバーウルフは一匹で行動していた。以前出会ったシルバーウルフは群れで行動していたので、この個体はそこから追い出されたか、自ら出たかのどちらかなのかもしれない。
そんなことを考えていたら、シルバーウルフが目前まで迫っていた。以前見たシルバーウルフより速い!個体によって敏捷性が違うのはわかるが、倍以上速さが違うのは明らかにおかしい。
【解析】 【速度】
【解析】が相手の魔法を見抜く。魔法で自身の速度を倍にしているからあれほどの速度を出しているのか。
などと考察しているうちにシルバーウルフがオレの腕に喰らい付く。腕を丸呑みにされ、肩に牙が食い込む。レベルが低いままだったら即座に食い千切られていたが、どうにか腕はくっ付いている。まぁ、この方が都合が良いか。魔術で風を生みだし、シルバーウルフの体内に風の刃を放つ。外側からの攻撃が効きにくいシルバーウルフだが、内部はそうではないようだ。
シルバーウルフの顎をこじ開け、《治癒》で傷ついた肩を癒す。試しに《治癒》に先ほど手に入れた《高速化》の魔術をかけてみたら、治癒の速度が上がった。これは魔術にも効果があるのか、と新たな魔術の発見を楽しんだ。
それから数日後に出会ったのは人型の魔物、リザードマン族上級のレッドリザードマン。トカゲを二足歩行させたような外見で、その大きさは2m、体中を硬い鱗が覆っている。ドラゴンから分化した種族なのでは、と言われており、その力は体の大きさに比べ強大だ。ドラゴンのようにブレスを吐いたりはしないが、その怪力と硬い鱗により攻守共に高い。
そんな怪力のリザードマンの上級、レッドリザードマンだからって、3mを超える斧を軽々と担いでるってどゆことよ?
【解析】 【質量】
あ、そうですか。【解析】さんいつもお世話になってます。あれは戦斧を軽くしてるから持てるのか。
レッドリザードマンが両手で斧を振り下ろしてくる。怪力と斧の軽さによりかなりの速さだったが、途中で更に速度が上がって来た。振り下ろす最中に戦斧の重さを元に戻すのでなく、更に重くしてきたのだ。避けることはできたが、地面に激突した戦斧により、土砂が撒き散らされる。いきなり速度が上がったので、避けるのがギリギリになり、石の礫をまともに喰らってしまう。《治癒》の魔術を使いつつ、シルバーウルフとの戦いで手に入れた《高速化》の魔術で体を高速化して接近し、レッドリザードマンの体に内部破壊の拳を放つ。内臓をズタズタにされたレッドリザードマンはその場に頽おれる。
それから一月は魔法持ちの魔物と遭遇することはなかったが、河の傍で出会った人型の魔物が魔法持ちだった。サハギン族の上級のサハギンナイト。サカナのような青い鱗、背中から頭にかけて伸びるヒレなど、サカナと酷似した特徴を持ち、水中で生活をする。陸上での行動も可能だが、その本領は水中で発揮する。
出会ったサハギンナイトは最初一匹だったが、オレを見つけてすぐに河から下級のサハギンに中級のエリートサハギンがわらわら出て来た。サハギン、エリートサハギン、エリートサハギンの順に体が大きくなってるのが良く解る光景だ。
【解析】 【念話】
なるほどー。声を上げずに仲間を呼び寄せることができたのは魔法のおかげなのねー。
今更下級や中級が何匹出てこようと問題ない。サハギンナイトも戦闘に直接影響を与えそうな魔法を持ってるわけでもない。オレを水中に引きずり込もうとする魔物だが、半分を炎弾で焼き魚(あとで美味しくいただきました。人型の魔物ってあまり食べる気はしないのだが、これは姿形が全体的に魚っぽくて美味かった)にし、残り半分は素手で仕留めた。殴った瞬間にぬるっとしたが、衝撃を体に与えることで倒した。
仕留めたサハギンを食べつつ、最近まともな魚料理を食べてないなーと思った。冥魚系の魔物って美味いのかな?河とかには住んでないから未だに戦ったことはない。海に行けば会えるらしいけど、海ってどれだけ大きいんだろうか?外の世界への期待がさらに高まった。
そして最近手に入れた魔術の話になる。ある日、上級の魔物と狩りをしている最中、戦っている相手が急に眠りだした。そして感じる眠気。これは不味いと思い、アイテムボックスから剣を取り出し、左の腕に突き刺す。はじめて使った剣の用途が自身の腕とは…。痛みで眠気を振り払ったオレの上空に現れたのは巨大な火の鳥だった。
【解析】 【睡眠】
この眠気は魔法の所為かよ。なんでもありだな、魔法。
現れた魔物は獣型、怪鳥系の上級、アグニオルニス。先ほど述べたとおり、炎を纏った巨大な鳥だ。翼を広げると5mを超え、自身の体を自由に発火させることができる。
炎を纏った翼を羽ばたかせる度に炎が降り注ぎ、森が火の海になる。氷の槍を作りだし、アグニオルニスに向かって投擲する。【睡眠】の魔法によって動くものなどないと思っていたのか、真下から迫る槍に気付かずに、避けることもなく貫かれて死んだ。
周囲の火を魔術でコントロールして鎮火し、アグニオルニスの解体を始める。片方の翼と一本の足、くちばしなどの素材をアイテムボックスに入れ、残りは洞窟に持ち帰って焼いて食べた。火に対して耐性がある所為か、なかなか火が通らなかったが、焼いたアグニオルニスの肉は絶品だった。滴り落ちる肉汁すら美味い。ジーナも美味しそうに食べてる。可愛いのう。
サハギンナイトと戦った後あたりかな?ジーナに付き添って、初めて中級の魔物と戦ってもらった。ジーナの安全のために下級がいれば下級と戦ってもらいたかったのだが、いざという時はオレが助ける、ということで続けた。
《高速化》で自身のスピードを倍にし、ライトニングディアさん(尊敬)の帯電する角を避けてそのままその胴体に腰の入った一撃を放つ。放つ瞬間に自身の拳を《重量化》で倍に重くしていた。吹き飛ぶライトニングディアさん(肉)はそのまま絶命した。戦闘後、お肉は美味しく頂きました。
自身の魔力の少なさと魔術発動まで時間がかかることを自覚し、使用する魔術や使用するタイミング等、かなり計算されていて感心してしまった。火と風の魔術、補助系の魔術に適性があるらしく、《炎弾》《風刃》《高速化》《重量化》などを得意としている。レベルも上がったようで、魔力量も増えていた。これから数回は戦いに付き添うつもりだが、この分だとジーナ一人で戦っても大丈夫だろう。
その翌日
ジーナの頭から白い角が一本生えていた。
って、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!
なんで?何これ?え、角?
驚くオレ。驚くジーナ。ジーナもびっくりの事態である。
その姿はまるで…
「おに?」
亜人の小数種族、鬼のようであった。
亜人の生態は交流が無い為、ほとんど謎に包まれている。
しょうしゅうしゅじょく(噛んだ)
小数種族の生態ともなれば尚更だ。
鬼について解っているのは、怪力で頭に角が生えていること。
ジーナ、どストライクじゃね?
見ると、ジーナは自分が亜人であったことにショックを受けている様子だった。
なぜ頭に角が生えたのか。
考えられるのは、レベルが1の状態だと角がなく、レベルが上がることで角が生えるのではないか。
オレがジーナのことを見ながら鬼について考察していると、ジーナが恐る恐るオレを見ていた。
どうしたんだろう?
「どうしたの?」
この思ったことを割と簡単に言ってしまう口は厄介だが、こんなときは空気を変えるのに都合が良い。
「その、私は亜人だったみたいで、ソフィアン様が私のことをお嫌いになられるのではないかと思って…」
ジーナは亜人だからオレに嫌われるかもしれないと思ったのか。愛い奴め。
「オレは亜人に今まで会ったことなかったけど、オレの目の前にいる女の子はとても魅力的で可愛いと思うよ。それに、オレはジーナが何者でもジーナのことが好きだよ?」
「ソフィアン様…」
感動したように目をウルウルさせるジーナはやっぱり可愛かった。
角を撫でる。うん、固い。
その日は朝っぱらから乳繰り合った。
そんな感じで順調に強くなり、新しい魔術を手に入れ、ジーナと良い関係になったオレの修行は、残すところ1ヶ月になった。
そして今までで最大の敵と戦うことになった。
祝・お気に入り登録件数30件突破!そして祝・投稿から一週間!ひらきょんです。
おっぱいルートを避けよう避けようと気を付けていたのに、いつの間にかおっぱいルートに入っていました。ジーナが出て来た時点で避けられない運命だったのかと今では思うようになりました。ジーナ、恐ろしい娘!
戦闘を一纏めにしたのはどうかと思いましたが、今回はこのような形で送らせていただきます。
(11/7/24)
魔物のサイズ調整を行いました。
(11/7/25)
魔物のランクを『~位種』から『~級』に変更
スキルを撤廃。高速化された思考、分割された思考は【解析】じゃない方の魔法による影響としました。
ご意見、ご要望、ご感想、誤字に誤用などなどありましたら、お気軽に感想までお書き下さい。
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