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magia(改稿諦めた)  作者: ひらきょん
第一部
6/12

第4話

 ギルさん、本名ギルバート・オドネル、年齢は28歳。金髪碧眼のイケメンだが独身である。彼は母さんと同い年で、幼いころからいつも競っていた。勝ち負けを繰り返し、村を出る前の最後の一線で負け越してしまったらしい。母さんがバルディア帝国に仕官すると聞いた彼は、隣国アルメリア王国に仕官することを決めた。村でその年15歳になるものを祝う成人の儀を終え、二人は村を出た。


 アルメリア王国は1000年前の幻魔戦争以前から存在する歴史の長い国で、幻魔戦争後は魔法使いを優遇する世間の風潮に反し、優秀なものなら魔法使いであろうとなかろうと関係無く重用した。そのスタンスは現在も変わらない。


 そんなアルメリア王国と全く逆の政策を行っているのは隣国バルディア帝国。幻魔戦争後に勇者の仲間が建国した国で、魔法使いを優遇。貴族や国政に関わるものは全て魔法使いという徹底ぶりである。


 主義主張が違えば争いが起こるのは必然。幻魔戦争後200年は復興の為に争いは起きなかったが、それ以来両国は頻繁に戦闘を繰り返している。ここ50年は特に多く、10年前にも争いが起き、争いは3年程続いたらしい。


 魔法使いを重用する、ということは当然魔法使いが集まるわけで、魔法使いを主戦力にしたバルディアに対抗するためにアルメリアが編み出したのが、操気術だ。操気術は読んで字の如く、気を操る術である。気とは、人間生きてれば必ず持っているもので、操気術を極めれば、相手の気を読んで次の行動を予想できたり、気で肉体の強化ができたりするらしい。


 長々と何を言いたいのかと言うと、ギルさんは母さんに勝つためにアルメリア王国に渡り、操気術を身につけて帰ってきたらしい。母さんに魔法なしだと勝利することができるようになったが、魔法ありでは勝てないとか…魔法ありの母さんに勝つつもりだっただけに、ギルさんは複雑な心境らしい。


 そんなギルさんに師事してから5年経ったが、未だに操気術は教えて貰っていない。自分の肉体を完璧に扱えるようになるまでは教えてくれないらしい。なんでも気を読む力もなく、肉体の扱いが未熟な状態で気を操ろうとすると、筋肉が断裂したり、四肢が爆散したりするらしい。こわ!



 この5年、色々あった。



 村のみんなが喜んでくれたから、毎日早朝稽古の前と昼頃に広場に氷塊を作った。でかい塊ではなく、30cm四方の大きさの物を一度に大量に作って、好きなように取っていって貰った。魔力コントロールの練習にもなったし、魔術展開速度の試験にもなったので自分にとってそれほど感謝される程の事ではなかった。が、みんなが喜んでくれる、という事実が僕のモチベーションを維持させた。


 その結果、魔術の研究も進んだ。


 魔術の展開速度は、頭の中に展開する式を思い描き、その式を一気に外に描くイメージを持つことで解決した。初めは魔力のコントロールが上手くいかずに何度も失敗を重ねたが、最近になってようやく完成した。


 魔術に必要なものは魔力、魔術を構成する式、発動する魔術のイメージ、その魔術に適した魔力の運用の4つであることも判明した。


 ある程度技術が確立できたので、母さんに父さん、ギルさんに魔術の指導を始めた。母さんはやはり火を使う魔術が得意だったり、人によって相性がありそうだ。


 魔術の指導によってわかったことなのだが、僕の魔法の【解析】を解析して再構成した《解析》(ややこしいな)の使い勝手がなかなか悪かった。母さんたちに使用してもらったところ、発動できたのは父さんだけで、父さんは、解析して頭の中に入って来る情報が多すぎたせいか、熱を出して倒れてしまった。発動する魔術のイメージをもっと具体的にしないと、余計な情報まで解析してしまうのだろう。父さんには悪いが、もうしばらく協力してもらおう。


 母さんの稽古とギルさんの稽古は1日置きで行い、はじめは村の中で行っていた早朝と夕方の訓練に、2年ほど前から、弱い魔物(村基準)が比較的多い場所で1日中行う訓練が加わった。訓練の量が増えてからは3日のローテーションになり、1日を休みにあてた。訓練で村の外に出た際、魔物とは絶対に戦うなと、2人に言われた。


 生物を殺すことでその強さとエネルギーを経験値として吸収でき、経験値を一定まで溜めることでレベルアップすることができる。レベルアップすることで今までより強くなることができるのだが、実力もない(村基準)うちにレベルを上げると、自分の実力を勘違いして強い魔物と戦って死ぬ、というのが理由らしい。それに、訓練を積んだ人と積んでない人がレベルを上げると、訓練を積んだ人の方がより強くなる、というのも理由の一つだ。


 ちなみに、レベルを確認することは通常不可能である。なんとなく存在感が大きいなー、とか、受けるプレッシャーが大きいなー、とかで自分よりレベルが上か判断できるらしい。なのに何故先ほどのことが言えるかと言うと、確認する魔法があるらしい。その魔法は、対象のレベル以外にも魔力や敏捷性などの実力を数値化できるものらしい。


 ついでだから魔物についても整理しようか。魔物には人型、獣型、混合型の3種類が確認されている。人型は人間と同じく2足歩行をする魔物だ。適度な知識を持ち、道具を使うことができる。獣型は元々確認されていた獣や虫を大きくしたり、(いびつ)にしたような形をしている魔物だ。その中でも魔獣系、怪鳥系、妖蟲系、冥魚系の4つに分類分けされている。混合型は人型と獣型両方の特性を持った魔物だ。その数は少ない為に発見例は少ないが、戦闘力は極めて高く、その外見はグロテスクなものが多い。


 魔物はそれぞれの強さから、下級、中級、上級、最上級にランク付けされている。魔物によって、同じランクでもその強さは異なるが、一般に、下級の魔物は訓練された兵士が相手をすれば一人でも倒すことができるが、中級の魔物は10人ほど集まらないと倒すことは不可能、上級の魔物は一個大隊が当たれば倒すことが可能である。最上級の魔物は一個師団が当たれば撃退でき、倒すにはそれ以上の人数が必要らしい。さらに、最上級の魔物は魔法を使用でき、上級の中にも稀に使用できるものがいる。


 話を戻して、そういう訳で僕はまだ生物を殺したのは盗賊の時の1回しかない。


 なら何のために村の外で訓練をしているかというと、自分の気配を消したり、相手の気配を探ったりする技術、魔力の制御に感知する技術、サバイバル技術、魔物についての知識などを身につけるためである。あと、自分が狩った獲物をアイテムボックスで運んで欲しいからとも言ってた。後の方の理由が大きい気がするが気のせいだろうか?


 僕の訓練の量が増えた頃から早朝と夕方の訓練にヤス君他、多数の子供も参加するようになった。この村で生きるには強くなくてはならない。それなら村で一番の実力者たちに指導してもらうのが良い、ということらしい。3年先行しただけあって、僕とみんなとの間にはかなりの差があった。母さんたちに師事する前に訓練を行っていた者たちもいたようだが、僕の方が実力が上だった。か、勘違いしないでよね!天狗になんかなって無いんだからね!


 ヤス君は5年でかなり大きくなった。10歳で155cmある。太っているわけではないが、がっちりした体で、将来は男らしくなるんだろうな、と予想できる体つきだ。ヤス君は優しいし、女の子にも人気出るだろうなー。


 それに対して僕の身長は139cm。容姿も女の子みたいで体も細い。あれー、訓練しててみんなよりも筋肉あるんだけどなー?何でさー!「ソフィーちゃん」と(あざけ)て言った奴は実力で黙らせた。


 マリーとミリーも5年という年月で大層な美少女になった。活動的な明るい性格をしており、僕のことを「おにいさまー」と言ってくれるし、僕の後を着いて来る姿の可愛いさと言ったらもう!この間なんか、


「マリー、おにいさまのおよめさんになるー」

「ミリーもおにいさまのおよめさんになるー」


 とか言ってくれたんですけど!


 誰だよ!一時期、家に自分の居場所がないとか言った奴?ここが楽園(パライソ)だろ!


 いもうと万歳!義妹(いもうと)最高!


 マリーとミリーの可愛さはまだ全然言い表せないが、いい加減話を進めよう。


 ヤス君の妹のユキちゃんもかなりの美少女に育った。恥ずかしがり屋さんなのか、声は小さい。それでも僕のことを「おにいちゃん」と言ってくれる姿にキュンとした。マリーとミリーとも仲良しで、一緒に遊んでいる光景を見ると、本当の姉妹みたいだ。


 訓練の話に戻るのだが、訓練が終わって筋肉痛になったとしても、1日寝れば次の日には回復してるのだ。普通痛みが引くのに2、3日以上かかるものだが、1日寝れば前よりも力が強くなっている気がした。気のせいかとも思ったが、塵も積もればなんとやらで、明らかに筋力が増していたのだ。その一例だが、10歳になってお父さんに腕相撲で勝った。お父さんに「ソフィアンは本当に常識の外にいるなー」とか苦笑しながら言われた。随分慣れたようだ。


 脳以外は普通の人と変わらない僕の体が、なぜこうなったか。おそらく【解析】ではないもう1つの魔法の所為だろう。発動しようと思っても発動できないし、【解析】にも引っかからないとか、謎が多くて放置していたのだが、どうやらこれが原因な気がする。小さいころから筋肉を付け過ぎると身長が伸びないらしいから、きっとこれの所為で僕の身長が…


 害はない(身長…)から良いものの、解らないというのは怖い。なにぶん、なんでも解ってしまう魔法を持ってるだけに、自分の中に解らないものがあるというのは恐怖である。いつか解る日が来るのだろうか?



 いきなり過去5年間を振り返っていたけど、実はこれ一瞬の出来事なんだぜ?良くある走馬灯だよ。そんなに頻繁にはない?僕にとっては日常なんだぜ!


 ギルさんの夕方の稽古の最中である。母さんもギルさんも、夕方の稽古になると本気で潰しにかかる。無論、かなり力を抑えているのだろうが、日に日に強くなって底が見えない。


 今日もギルさんに吹っ飛ばされて、訓練が終了となった。


 なんとか立ちあがって、ふらふらと帰ろうとした際、ギルさんに「明日から操気術の訓練も加える」と言われた。やっと実力を認められたようで、嬉しかった。


 覚束ない足取りで家に帰り、夕ごはんを食べたあたりで記憶がとんだ。






 さらに4年たった夏。別にこれから言うことは走馬灯ではない。ただの現実逃避だ。



 魔術の発動時間は、どんどん短くなり、今ではノータイムで発動できるようになった。もちろん式は不可視である。訓練の最中は母さんやギルさんに魔術の指導を続け、訓練の休みの日は広場で魔術の講習会を開いたりした。そのお陰で、発動するまでに多少時間はかかるが、村の大人は全員魔術を理解した。


 以前に魔術の相性に付いて少し触れたと思うが、みんなが全ての魔術を使えるわけではないみたいだ。イメージしにくいものや魔力の運用などの感覚的なものなどが原因だと思われる。必要とする魔力の量は、この村に関して言えば問題ないだろう。オレは今のところ、作った魔術は全て使える。そもそもオレが使えない魔術を村の人に教えれる訳もないのだから当然と言えば当然であるが。


 炎、氷、石、それに癒しの魔術を教えた時に感じたのだが、どうやら氷と石は扱いが難しく、さらに癒しの魔術は難しいようだった。消費する魔力も難しさによって増えていくし、もしかしたら関係があるのかもしれない。今後も継続して調べよう。


 《解析》の魔術は何を解析するか、イメージを具体的にすることでようやく使い物になった。そして村のみんなが協力してくれて解ったことだが、誰かが発動した魔術の解析は出来るのだが、やはり魔法の解析は出来ないようだ。理解しようにも理解できないらしい。これも難しい術なのか、使える人が少ない。ま、使えるようになっただけ良いか。

 

 難易度の話に関連してるのだが、《収納》の魔術を発動できる人は今のところいない。式の量と複雑さ、魔術発動の際のイメージの難しさが原因だと思われる。村のみんなが《収納》を使用できるようになったら、オレのアイテムボックスに入っていたお金や宝石などを分けるつもりだったのだが、この分だと当分無理そうだから分配してしまおうか、ということで食糧と酒は村長に渡し、その他の物をみんなで分けた。これらのお宝はオレの手柄ということで、一番多く貰うことができた。


 その際、アイテムボックスに放置して以来、そのまま忘れていたエルフ ―シルヴィア― の日記を見つけたので読んだ。森の中に住んでいたらしく、そこでの日常が記されていた。なにやら魔法を使っているのを臭わせる記述があったりと、亜人も魔法を使うのかもしれない。森の外の世界に興味を持っており、エルフの中にも良い人悪い人が存在するなら、オレたちヒトの中にもエルフのことを差別しない人がいるんじゃないかと考えていたようだ。その通りだと思うが、この日記を盗賊が持っていたことから、襲われて、もしかしたら殺されたり攫われたりした可能性がある。ヒトにも善人がいることを信じていながら、そのヒトに害されるなんて、と考えると良い気分にはならなかった。またアイテムボックスにしまっておこう。


 マリーとミリー、ユキちゃんは同年代の子供の中でアイドルのように扱われていた。可愛さに磨きがかかった美少女達が歩くだけで、その場が華やいだ。三人ともオレに懐いていた為、一緒にいると嫉妬の視線が痛かった。4年前の時点で、オレの実力は村の大人と同じくらいになっていた為、誰も絡んでこなかったが。あー、でも視線の中に暖かいものがあるのはなんでだ?オレの容姿が女の子みたいだから姉妹だとでも思われてるんだろうか?3年前から妹たちが訓練に参加するようになり、3人がオレに教えて欲しいと言ってきたため、そこでも視線が痛かった。


 あと、なぜかオレのファンクラブなるものが存在するらしい。4年で背も伸びたのだが、163cmとまだ低い。184cmのヤス君みたいに身長が欲しいのだが…置いといて、女の子みたいな容姿と細い体、なのに強いそのギャップに萌えるんだと。作った奴出てこい!と思ってたら、会長は母さんだった。副会長は父さんで、ギルさんも会員だった。おい!


 ギルさんは2年前に6個下の女性と結婚し、1歳になる息子がいる。訓練の合間に息子の可愛さを説いてくる。オレもそうだが、ギルさんも性格がかなり変わった気がする。ギルさんに対抗して妹自慢をした。


 気を隠す、読むといった技術に、魔力を隠す、読むといった技術、さらに操気術も会得した為、訓練では母さんとギルさんがかなり力を出してくれるようになった。まだ二人の実力の半分もないと思うが、レベルが違うから当たり前らしい。訓練開始当初は、レベルを上げずにここまで成長するとは思わなかった、と二人が言っていた。


 そして、訓練の最終段階として、二人と一緒に村からかなり離れた所を音を立てずに走っている。道中魔物を何度も見たが、気配を消してやり過ごした。半日ほど移動したあたりだろうか、二人は足を止め、オレにアイテムボックスの中身を全部出すように言った。言われるままに私物を全て出すと、母さんが背負っていた背嚢(はいのう)からオレの服を数着、水の入った水筒を取り出し、ギルさんが背負っていた片手で扱える大きさの剣を外してオレに渡す。


「今から半年、この山で生活してもらう」

「は?」


 ギルさんが言った言葉に思わず間抜けな声を出してしまう。


「ほとんどカルサに入っているようなこの場所で?」

「うむ」

「一人で?」

「うむ」


 えー、まじすかー。母さんも了承してるんだろうなー。オレの意志は良いのか?と小一時間問い詰めたい。


「ソフィアン、成人したら村の外に出るつもりなんでしょう?

 ならこれくらいのことができなくては話にならないわ」


 言った覚えがなかったが、オレの考えなんてお見通しのようだった。家族も友達も村の人も、みんな大好きだが、オレは外の世界がどんなものか見てみたかった。外で生活していた人から聞いた話でしか外のことは知らないが、それでも充分魅力的に思えた。


「わかった。やってみるよ!」


 自分の目標のため、そう言い放つ。このやり取りの間にアイテムボックスから取り出した物は全て背嚢(はいのう)の中にしまわれたようだ。


「ちなみに、母さんたちの時はギルと二人ペアだったわ。ソフィアンなら一人でも大丈夫だと思うからがんばってねー」

「ちょ」


 そう言って走り出した体はすでに遠く、オレの声など聞こえていないようだった

PV数とユニークアクセス数が日に日に伸びているのを見ると、テンションが上がります。読んで下さっている方々に楽しんでもらえるよう、今後も頑張ります。


(11/7/19)

獣型の魔物の分類に『冥魚系』を追加しました。

(11/7/24)

話の本筋は変わりませんが、魔術の難易度変更に付き、それに合った変更をしました。《収納》の難易度が初級から超級に変化がデカイです。無計画ですみません。

(11/7/25)

魔物のランクを『~位種』から『~級』に変更


ご意見、ご感想、誤字に誤用などありましたら、お気軽に感想までお書き下さい。お待ちしています。

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