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magia(改稿諦めた)  作者: ひらきょん
第一部
10/12

第8話

 アグニオルニスとの戦いから数日。修行終了まであと2週間という時にやらかしました。


 今日も今日とて余裕をかましてカルサに行きましたよ。ええ、慢心はあれほど良くないと思っていたのに、やっちまいました。


 はじめて の さいじょうきゅう!


 読みにくい。


 上級のさらに上の存在である最上級の魔物に初めて遭遇したのだ。


 上級の魔物をバッタバッタと倒して、この森最強はオレだあああああ!とか言いながら、森の奥へ奥へと進んでいたら、


 ズドンッ!


 という轟音と同時に、大地を揺るがす程の衝撃がして辺りが暗くなった。上に何かの影があると気付き、上を見ると


【解析】 トロール族 最上級 キングトロール


「は?」


 解析の結果に思わず呆けた声を出す。


 トロール族は巨大な体を持つ人型の魔物で、その被害は災害に例えられるほどだ。紫色の肌をしており、皮膚は固く、その力は下級と言えどオーガと並ぶほどだ。下級のトロールは知能の低いただの馬鹿だが、上位の存在に進化することでその知能は高くなり、体も大きくなる。その大きさは下級で4m、中級で5m、上級で7m、最上級で10m程になる。


 今、キングトロールがこちらを見ていた。その辺で寝ていたのを、散々暴れまわった上に大声で最強宣言をした為か目覚めてしまったようだ…冷や汗がダラダラと流れる。最上級なんて生き物は、一個師団が戦ってようやく()退()できるという代物だ。ましてやトロール族の最上級である。ぶっちゃけ一都市を簡単に落とす程の強さである。この1000年間観測した限り、最上級の魔物と遭遇したという報告は多くないらしいが、よりによって遭ってしまった。神様に嫌われているとしか思えないめぐり合わせである。いや神以前に、戦いに緊張感出そうと気配探知切って、大声で歩いていた馬鹿をここに連れてこい。


 相手とのレベル差がひしひしと伝わる。


 このレベル差は逃げないとまずい気がする。


 だけど目と目が合ってしまってそれも叶わない。何かが通じ合ってしまうほどばっちり目が合ってしまった。


 ス キ


 違う。


 コ ロ ス


 とか。


 なら、


「やるしかないか」


 死にたくないし。死んだら鬼っ娘ジーナが泣くだろうし。


 こんなデカイのが近くにいたら安心して眠れないだろうしな。


 アイテムボックスから剣を出す。普段は魔物の収集の為に戦闘は素手で行っているが、こないだのアグニオルニスとの戦い以来、はじめて剣を使う。自分が使えるもの全てを使わないと負ける。オレはそう判断する。


 刀身に《水流》で水を纏わせ、《高速化》で自身の体を高速化させる。


 いつでも水の刃を飛ばせるように準備した。


 その刹那


 辺り一面を閃光が包み、そして轟音が鳴り響いた。











 ■


 この森でおれ以上に大きなやつは見たことがなかった。


 おれ以外のやつは小さいが、中々手強いものもいる。


 おれに攻撃してきたやつは全部殺した。


 おれを見て逃げたやつも全部殺した。


 そして食った。


 飛んでるやつ、群れてるやつ、全て殺して食った。


 どんどん力が強くなった。


 気付いたら体が大きくなっていた。


 今まで使えなかったビリビリを使えるようになった。


 ビリビリは空から水が降って来た時におれに落ちて来たことがある。


 あのビリビリをおれの力にすることができた。おれは更に殺した。


 最近はこの森を出てしばらく進んだ所に住んでいる小さいのも殺して食った。


 殺しても力は増えなかったが、あれらは美味かった。


 おれを倒しに小さいのが何度も来たが、全て殺して食った。


 今、目の前に、あれらと同じ小さいのがいる。


 食ってやろうと思った。


 おれの森を我が物顔で進んでいる生意気な小さいのを食ってやろうと思った。


 おれを見た小さいのはどこからか棒を出した。


 おれはビリビリを使って、小さいのを殺そうとした。


 この力を使っていままで殺せなかったやつはいない。


 今回も同じだろうと思った。


 だが、小さいのは棒をふってビリビリを反らした。


 もう一度小さいのは棒を振るった。その動きはビリビリと同じくらい早かった。


 そう思ったと同時に、おれの足が水で傷付けられていた。


 久しぶりに傷を負った。


 おかしいと思い、何度も力を使ったが、今度は水とビリビリが小さいのを包み、おれのビリビリが届かなかった。


 なら潰してしまおう。


 ビリビリを使えるようになるまではこの体で殺してきたのだ。


 小さいのを潰そうとした


 だが、動きが早くて当たらなかった。


 なぜかおれが使っていないにも関わらず、下からビリビリがおれの顔に飛んできた。


 少し痺れて動きづらくなったが、小さいの一匹だけなら問題ない。


 小さいのはちょこまかと動き、おれの足元に来た。潰してしまおうと思ったが、ビリビリで思うように動かない。


 小さいのはおれの足を蹴った。


 あんな小さいのに蹴られても大したことないと思っていた。


 小さいのの蹴りは重く、速かった。


 おれの拳と同じくらい重く、ビリビリと同じくらい速かった。


 足が痛かった。


 曲がらない方向に曲がって痛かった。


 今まで感じたことがないほど痛く、上手く動かせなかった。


 気付いたらおれは倒れていた。


 小さいのが見えなかったから暴れまわった。


 石がおれの手足や体を覆って動けなくなった。


 石なんて簡単に砕けるはずなのに、石は重くて固かった。


 小さいのがおれの顔のそばにいる。


 どこからか黒と緑と黄色の液体を出した。


 その色は見たことがある。


 それはおれより弱い生き物の色だった。


 だが、おれはあれに手を出さなかった。


 あれは触ると痛かった。


 ビリビリを手にしてからは触らずに殺してやろうと思ったが、どこに行っても見えなかった。


 今、あれがおれの前にある。


 何をされるのかわからないが、動かなければダメだ。


 小さいのをビリビリで狙うが、小さいのに届かない。


 しかも何だか眠くなってきた。動かないとダメなのに。


 あれがおれの顔をおおった。


 息ができなくて苦しい以上に、あれがおれの体を焼く痛みの方が苦しかった。


 眠いとはもう思わなかった。


 手で払いのけたかったが、手が動かせない。


 あれが体を焼く痛みはさっきの蹴りよりも痛かった。


 足が一本折れたのも気にならない。


 目が痛い。


 口が痛い。


 頭が痛い。


 体の中が痛い。


 視界が赤く、黒くなる。


 意識もどんどん遠くなる。眠い、のか?


 最後に見たあの小さいのは、今まで見た中で一番恐ろしい生き物だった。











 ■


【解析】 【紫電】


 解析した魔法を早速使って、自分に有利な状況を作れた。


 今は目の前にキングトロールが倒れている。蹴り倒した際に自分の足も砕けたが、《高速化》をかけた《治癒》のお陰ですっかり元通りだ。


 アイテムボックスからデススライムの体液を出すと、危機を感じたのか、トロールからの魔法が一層激しくなる。それを雷を纏わせた《水の壁》で防いで、《睡眠》で抵抗を弱くする。そしてデススライムの体液を《水流》で操りトロールの顔を覆う。


 キングトロールは、デススライムの体液で顔を覆われて、目から鼻から、そして口から毒を吸収する。眠気もなくなったようで、必死に抵抗していたが、《重量化》で重くした石の枷でまともに動けない。次第に抵抗は小さくなり、今はビクンッ!ビクンッ!とたまに動く程度になり、そして動かなくなった。


 我ながらひどい殺し方をしたものである。あれは毒殺と溺死、どちらだったのだろうか?


 キングトロールの肉体の強さと生命力の点から、殴殺するには自分も相当消耗しなくてはいけない、と判断してのことだったが、デススライムの毒は反則だった気もする。まー、勝ったから良いか。


 そして、今まで感じたことのないほど大量の経験値が体に流れてくる。自身がまた強くなったという高揚感がたまらなく気持ちE!


 毒を回収し、アイテムボックスに戻す。キングトロールの死体も一応回収しとく。何かあった時に逃走用のバリケードとして使用できそうだ。流石に美味そうではないし、毒化してるだろうから食べない。


 キングトロールは強力な魔法を使い、その攻撃力、耐久力など今までで最高だったが、解析してきた魔法のお陰でそれほど苦戦せずに倒すことができた。自分より格上の魔物と戦ったとしても魔術は有利な状況を作れるのだと改めて認識した。


 にしても、今回手に入れた《紫電》は今までのものよりも描いた式が大きく、必要とする魔力も一番大きかった。これについてもう少し調べる必要がありそうだ。


 自分が強くなったからといって警戒を怠るのは良くないな、と反省しつつ、今までで一番の強敵を倒したことで、気分よく洞窟に帰る。


 オレが向かった先で、何度も何度も連続して(とどろ)いた雷鳴に、何があったのかジーナが聞いてくる。


「キングトロールと戦って殺してきた」


 そう言ったときのジーナの顔は今までで一番驚いた表情だった。


 ジーナの呆けた表情もかわいいなー。死闘の後だから癒されるわー。


「ジーナは可愛いなぁ」


 そう言ってキスをする。ジーナは顔を真っ赤にして正気に戻るも、すぐに蕩けた表情で身を任せる。


 オレのお腹の音が鳴り響くまでオレたちは愛し合った。



 キングトロールを倒した今、この森で自分に倒せない魔物は存在しなくなった。上級の魔物は自分よりレベルが高いからレベル上げには都合が良いけど、張り合いはなくなった。それからは、ジーナと組み手を行ったり、お腹を満たすために魔物を倒したり、手に入れた魔術を色々試したり、ジーナと魔物を狩りに行ったり、ジーナといちゃついたり。なんだかジーナとのイベントが多かった気がする。



 修行最終日の夜、今後の話をする。


「オレは村の成人の儀を終えたら、村を出るつもりなんだ。でも安心して。ジーナが村にいられるように便宜を図るから。あそこなら亜人でも迎えてくれると思うし」

「ソフィアン様、私はソフィアン様のいない村に残るつもりはございません。一番初めに言いましたように、私はソフィアン様に付いていくつもりです。同行を許していただけないのなら、このまま私を捨ててください」

「ジーナが来たいなら来ても良いけど、本当に良いの?」

「はい、ソフィアン様のいない生活なんてもう考えられません」


 頬を染めてジーナはオレに言う。


 どんだけ調教されてんだよ!


 他人事のようにそう思ってしまったが、ジーナをそうしたのは自分だろうし、ちゃんと責任とらないとな。


「ジーナが来てくれるならオレも嬉しいし、一緒に行こう。これからもよろしく」


 にっこり笑って言う。


 ジーナは何やらプルプル震えると、オレに抱きついてきた。


 その頭を撫でる。角も撫でる。


「ソフィアン様にその様に言っていただき嬉しいです」


 涙をぽろぽろ流しながら微笑んでくる。


 どんだけ調教されてんだよ!


 苦笑しながらまた思ってしまった。

一週間前のアクセス数と比較したら倍になっていることに気付いて「怖ぇ!逆に怖ぇ!」と良く解らない怖がり方をしたとか。ひらきょんです。


どうしてキングトロール視点にしたのだろう?不評ならソフィアン視点に直しますが、これはこれでアリなのか?


アルメリア王国、バルディア帝国間の国境になっている河川をプラトュス河としました。今まで出て来た河は全てプラトュス河で、そのように訂正しました。


(11/7/24)

魔物のサイズ調整を行いました。

(11/7/25)

魔物のランクを『~位種』から『~級』に変更

トロール、キングトロールの強さを表す言葉を変更。下級は「オーガを超える」→「オーガ並み」の力、最上級は「国が滅ぶほど」→「一都市を簡単に落とすほど」の強さとしました。

スキルを撤廃。高速化された思考、分割された思考は【解析】じゃない方の魔法による影響としました。



ご意見、ご要望、ご感想、誤字に誤用などなどありましたら、お気軽に感想までお書き下さい。

魔物や魔法などのアイディアを提供してくださると大変助かります。皆さまの感想、お待ちしています。

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