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魔術と技術の間で

温かな部屋に捕らえられて

作者: zensuke
掲載日:2025/11/12

全身が痛い。

起き上がろうと腹に力を入れてみる。

「いてて…」

腹筋が痛い。

右手をついて、腕の力で試みるが、こちらも痛くて断念してしまう。

そこで初めて目を開く。

天井は、木と、白いのは漆喰だろうか?

とても高く、光の反射で梁には彫刻が施されているのがわかる。

光の射す方に首を傾ける。

痛い。が、我慢して光を求める。

光の方から女の人がこちらへ歩いてくる。

逆光でよくわからないが、気高さを感じとれた。

「ここは…」

「私の屋敷よ」

うん?どういうことだ。

俺は…

徐々に不時着を試みたことを思い出す。

横たわる自分身体をみる。

白い服を着せられているが、服から出ている手足は、包帯が巻かれている。

「船は、あれから…」

思い出せない。

最悪の事態が頭をよぎる。

「全員、丁寧に返したわ」

返した?

意味がわからず、ちらりと女の人を見る。

いつの間にか俺の脇に立って、見下ろしている。

その人が彼女だということに、ようやく気がつく。

急に頭が冴え、全身が強張る。

声が出ない。

「思い出したかしら?」

真っ直ぐこちらをみている。

透き通った深紅の瞳は、相変わらず底が知れない。

整った顔立ちは、まるで彫刻のようだが、透き通るような肌の下から、仄かな暖かさが感じられる。

「あの時の」

それだけしか出てこなかった。

全身の緊張は、疲労困憊のためか長くは続かず、余計なことを考え始める。

紅さんや、ポーラーよりもあどけなさが残る。

思ったよりも若いのかもしれない。

「そう、あの時の、よ」

彼女はそう言いながら、ベッド脇の椅子に腰を掛けながら、小さなテーブルの上で何かに触れている。

所作一つ一つがいちいち気品に溢れる。

初恋のような感情が湧き上がり、思わず目で追ってしまう

「何があったか、知っていれば教えてほしい」

皆のことが気にかかる

「あの場に君は居たはずだ」

彼女を見つめる。

「どこまで覚えているのかしら?」

彼女は手を止めて、こちらを見る。

「不時着直前までだ。対地150ftを通過したあたり」

「そう。ではそこから話すわ」

彼女は淡々としている。

「あなたのお仲間さんは、全員無事だと言うことを先に伝えるわ」

「そうか。よかった」

胸をの辺りの変な突っかかりが消えた。

嫌な思念が消え去り、からっぽになる。そこへ爽やかなものが、そよ風のように入り込むのが分かった。

「船は壊れてしまったわ。残念ね」

正直どちらでもよかった。みんなが無事である事が一番だ。

「私たちの待ち伏せで、船は撃墜したわ。よく逃げ回ってくれたけど、所詮は工業ね。人の思い通りには動いてくれないわ」

自分たちの優位性を再認識したのか、得意になっている様子を微かだが感じ取る。

「そんなに虐めないでくれ。君たちと違って、あるものでやり繰りするしかないんだよ」

少し投げやりに答える。

「愚かね」

またしても意地悪く、微かに笑う。

だが、不思議と嫌悪感はない。

「それで、俺は不時着できたのかい?」

「地面に激闘するかと思ったけれど、直前でフワリとして、そのまま着陸したわ」

「俺がやったのか?」

「お仲間さんはそう言っていたわ」

そうか。無意識に体が動いたんだな。

自分の操縦センスに少しだけ酔いしれるが、すぐに虚しくなる。

「みんなはどうしてる?無事か?」

「さっき言ったでしょう。返したわ。こちらに居ても困るもの。」

彼女の柔らかな感情は、興味のないことには向けられないようだ。微笑みが消える。

「手当てして、武器を渡してもらった後、連絡将校を通じて戻っていったわ」

続けて淡々と話す。

この子、考えていることが顔に出るタイプだな。

「そうか。ありがとう」

心からそう思った。

そして今更ながら聞いてみる。

「一ついいかな。なぜ俺だけ相手の陣地に残されのか」

瞳を見て問いかける。

彼女の目を見て話せるほど、美しさに慣れてきた。

金色のまつ毛がピクリと動き、口元が少しだけ空いた。

何かあるな。

「…借りを返すためよ。それも含めて改めてお話しましょう」

それだけいうと彼女は立ち上がり、ドアの方へ歩いていった。






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