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第3話 帰宅

 結論から言うと、松井の家自体が存在しなかった。家があった場所は空き地になっていて、松井家自体がなくなったのか、松井自体が生まれていないからここに来る事がなかったのかは俺にはわからない。だが、これだけは言える。


 このダンジョン配信ってのはあきらかに俺達人間より上位の存在によって運営されている。正直、今この場に神様が出てきて、俺が「やったんだぜ」ってドヤられても俺は驚かない。むかつくと思うけど。まぁそれ程今の状況は異質だって事だ。


 てかマジヤバくないか? あり得るか普通。人が死んでるのにそれすら認識してもらえないんだぜ? 俺も死んだら松井みたいになるって事だもんな……。


 これからの事を考えて溜め息をついていると、アパートの灯りがついている事に気付く。俺一人暮らしなんだけど、朝に消し忘れてたのだろうか?


「慌てて出て来たしな……」


 気が付いたらベッドの中だったし、朝は結構ギリギリだったので急いで準備をしてから出た。鞄の中身とか昨日のままだったしな。


 一応警戒しつつも人の気配はないのを確認して鍵を開ける。するとそこには前回の格好だった巫女服ではなく、割烹着を着た狐火が全力フルアタックで俺の胸に飛び込んできた。


 あれ、気配無かったんだけど?


「おかえりなさいなの!!」


「ぐぇっ」


 見事に直撃したが、幸いにも狐火は小さくて軽い。何とか踏み止まって狐火を抱え込んだ。これが真帆だったら死んでた。だって重、いやこれ以上はやめとこう、なんか背筋が寒い。


「まってたなの! さみしかったなの!!」


 胸にスリスリしているその姿はまさに親戚か妹幼女そのもの。あれ、これって周囲の人に見られたらヤバイやつじゃ?


「お、おう。それは悪かったな。とりあえず中に入ろうぜ」


「それよりた・だ・い・まなのっ!!」


 メッチャ頬が膨れてる。何だ、頬膨らますの流行ってんのか? とりあえず怒りを鎮める為に指で突いて空気を抜く。


「ふにゅ~」


 漸く怒りも収まった? のか頬がすぼむと同時に狐火の力も抜けたようだ。ただ帰宅しただけで若干疲れたんだが。


「ハァ……。ただいま」


 周囲を見ながら中へと入る。誰にも見られてないよな? まだ俺捕まりたくないんだが。


 信用出来ないが気配がないのを確認して無事に帰宅する。狐火を下ろすと、とりあえず自分の部屋に鞄を置きに行き、ついでに部屋着に着替えた。


 このアパートは1LDKでリビングが若干広めだ。男の一人暮らしにしては贅沢な感じだが、親が海外に仕事に出てる分、苦労を掛けないようにって気を遣ってくれた結果だった。むしろ最初はもっとでかいとこになりそうなのを俺が止めて何とかこのアパートにしたんだけど。


 リビングに行くとそこには料理が並んでいた。


「おい……、これって」


「てへっなの!」


 目の前に広がる料理? だが、メッチャシンプルで大量の油揚げだ。半分に切ったモノや、星型に切ったモノ。ハート型なんかもあるが、どれもが油揚げをそのまま出しただけのものだ。しかも全部袋から開けただけのやつ。三枚入り五十円の特価セールで買った油揚げを全て開けやがった。


「てへっじゃねぇ! 全部開けやがったな! しかもどれも開けただけじゃねぇか!!」


「あぶらあげはこれがいちばんなのっ! それがわからないなんてあるじさまはおくれてるなの!!」


 俺に怒られて凹むどころか逆切れしてきたぞ、この幼女!


「何の為に割烹着着てるんだよ! ちょっと期待しちゃったじゃんか!!」


「ちゃんと切ったなの! あるじさまにこのはーとをぷれぜんとするなのっ!!」


「ありがとうよ!!」


「どういたしましてなの!!」


 どういう事やねん!! せめてお稲荷さんとかさ、味噌汁とかさ、割烹着着てたらそういうの密かに期待しちゃうじゃん? あれ、もしかしてって思っちゃうじゃん? 何か出来そうな幼女って感じしたじゃん。


「てか何で狐火がここにいるんだよ」


 朝にはいなかった筈なんだが?


「きつねびはあるじさまのそばにいつでもいるなの!」


 すでに油揚げに噛り付き始めた狐火。まじでこれだけで飯を食うのか。とりあえず朝に米だけは炊いておいたけど、この油揚げでどうやってこの米を処理すりゃいいんだ?


 あぁもういいや。まだ卵があっただろ。今日はTKGだ。しかもこの油揚げの表面に焼き目を入れてその中にツッコんじゃうか。


「じゅるりなの」


 まじで涎を垂らしながら作っている様子を見ている狐火。そのままがいいんじゃなかったのかよ。


「さいこうはひとつじゃなくてもいいなの!」


「やりたい放題っすね!」


 皿に乗せてある油揚げを全て回収して表面に焼き目を付けていく。出来上がるまで狐火がその場から離れる事はなかった。


「はぁ、とりあえず食うか」


 準備が終わって二人とも席に着く。


「いいにおい……なの」


 目が逝っちゃってる幼女の事は見ない様にしよう。


「「いただきます」なの!」


 とりあえず腹を満たさないと。俺が考えている間にも目の前で涙を流しながら黙々と食べ続ける狐火を見なかった事にして、俺もちょぼちょぼと食べ始めるのだった。


 もし、少しでも面白かった! 応援してもいいよ!! って方いましたら、ブクマ、☆応援、をよろしくお願いします。


 評価される事、それが何より執筆への励みになります。今後も精一杯面白くなるよう頑張りますので、是非、よろしくお願いします!

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