エピソード3-⑬
「ポケットは無限だから譲ってもらうのは構いませんが…どういった物なんですか?」
「うん…主に石ですね。特にキラキラしたものが好きなようで、沢山集めていたみたいです」
「石…?」
「そう、こんな感じのです」
そう言ってジークフリートは自身のポケットから綺麗な石を一つ取り出し、タッキーとルルに見せる。その石の輝きに、ルルが目を輝かせる。
「わあ、キレイ…」
「本当に綺麗ですね。魔石ですか?」
「ええ、ちょっと大きな魔物の魔石です。こういうの以外にも洞窟の中で見つけたのとか、とにかく石が好きで、5000年の間に色々集めていたらしいです」
(5000年…そうだよな。ルーさんと50歳くらいしか違わないんだから、かなりの量があるんだろうな)
ルードウィヒの素材コレクションも、ものすごい量だった。これは、ちょっとしんどい頼まれごとかもしれない。
(ま、無限に入るんだからいいか…)
そうタッキーは考え「いいですよ、遺産を受け取ります」と答えた。それを聞いたジークフリートはニッコリ笑って「そうですか、ありがとうございます」と、礼を言った。
「そういえばジークフリートさん、墓守の仕事はいいんですか?墓から離れても大丈夫なんですか?」
「ええ。墓守の仕事は昨日で終わったんです。今は後任のドラゴンがハインリヒさんのそばに居ますよ」
「そうだったんですか。100年間お疲れさまでした、ジークフリートさん」
「ありがとうございます。…以前のように”ジーク”で構わないんですよ?」
「ははは…」
タッキーはちょっと引きつって笑っていた。人間の姿になったジークフリートを見て、改めてジークフリートは上位種なんだ、と思ったのだ。人間でいえば貴族に相当する身分なのに、馴れ馴れしくジーク、なんて呼んでいたのだと気付くと、ちょっと昔のようには呼べなかったのだ。
「ではドラゴンの里へ行きましょう」
「はい」
するとルルも「私も行きたい!!」と言い出した。しかしジークフリートは申し訳なさそうに首を横に振る。
「すみません。人間はドラゴンの里へは入れない決まりなんです」
それを聞いてちょっとがっかりするルル。
「そうなんですか…残念です。ドラゴンさん達の姿…見て見たかったんですけど…。あっ、そうだ。ジークフリートさんがドラゴンの姿になったところを見せてもらえますか?」
「ええ、構いませんよ」
ルルの申し出に、ジークフリートはニッコリ笑って答えた。
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