エピソード3-⑩
「あっそうだ、ポケットを得たのなら、この墓場にある骨も少し貰ってくれませんか?」
ジークフリートが提案すると、ルードウィヒが呆れたように言う。
「お前、どさくさに墓守の仕事まで押し付ける気か?」
「骨を貰うことも仕事になるんですか?」
タッキーが尋ねると、ジークフリートは頷いて答える。
「ええ、墓場を綺麗にしておくのも墓守の仕事です。掃除はもちろん、増えすぎた骨をポケットに収納しておくのも仕事です。何しろ、ドラゴンの骨は丈夫なので風化するまで3000年以上もかかりますからねぇ」
確かに、ドラゴンの骨や牙、爪などは武器の素材として優秀だ。長持ちするということは、風化もしにくいのだ。タッキーはジークフリートの提案を受け入れて、5頭ほどのドラゴンの骨を収納ポケットに入れた。ジークフリートがタッキーにお礼を言った。
「ご協力、どうもありがとうございます」
「いえいえ、この位。ルーさんのポケットを貰ったことに比べたら、大したことはないです」
気付けば辺りはすっかり暗くなっていた。ルードウィヒはジークフリートに手伝ってもらって体を横にしてもらい、寝る体勢へとなった。
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
そうしてみんな眠りについた。
次の日の朝、木の間から差し込む日差しにルードウィヒは目を覚ました。
「よっこらしょ」
ゆっくりと体を起こした。この頃は起き上がるのにも時間がかかるようになってきた。ふと、ルードウィヒは空を見上げた。日差しが明るく澄んだ空が見える、とてもいい天気だ。その時、上空を虹色鳥が一羽、飛び過ぎていくのが見えた。見上げていたその瞳から、一筋の涙が頬を伝って、足の上にポトリと落ちた。それを見ていたジークフリートが、声を掛ける。
「どうしたんですか?どこか痛みますか?」
その問いかけに、ルードウィヒは首を横に振る。
「いや、そうじゃないんだ。今、この青空を虹色鳥が飛んでいくのが見えてな…自分ももう一度空を飛びたいって思っちまったんだ。…何もかも全部諦めて、覚悟を決めてここへ来たはずなのに…情けねぇなぁ…」
それを聞いていたジークフリートは、優しく話しかけた。
「別に悪い事ではありませんよ。誰だって未練はあります。以前看取った方で『死にたくねぇ!』って叫んだのが最後の言葉だった…っていうこともありましたし。私の前の墓守の方の時には『イヤだぁぁ!』って叫んだだけじゃなくて、そこら辺中に雷を落としまくって辺り一面黒焦げだった、っていうこともあったようですよ」
「ははは。雷の話は聞いたことがあるぞ。有名だよな。死にかけてるヤツによくそんな力が残ってたもんだ。…みんな、往生際が悪いな」
「みんな、そんなものです」
そしてジークフリートはちょっと考えて、ルードウィヒに提案する。
「飛んでみますか?空」
「えっ!?でも俺はもう…」
ジークフリートの提案に驚いているルードウィヒ。そこへタッキーがルードウィヒの朝食を持って帰ってきた。ジークフリートはタッキーにも声を掛ける。
「タッキーも一緒にどうです?空中散歩」
「えっ?」
ジークフリートの唐突な提案に、タッキーはちょっと訳が分からなかった。
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