エピソード3-⑧
そうして3日が経ったある日、急にルードウィヒはタッキーに提案をする。
「そうだ、お前さんに良いものをあげよう」
「なんです?」
唐突に言われ、タッキーはキョトンとした。そんなタッキーに構わずルードウィヒは続ける。
「スキルだよ。ドラゴンはスキルや魔法をコピーして他人に与えることが出来るんだ。そして俺の遺産をお前さんに譲りたいんだ」
「遺産?」
「そうだ。ドラゴンは皆‟ポケット”を持っているんだ。なんでも無限に入る。便利だろう?」
「本当ですねー」
「ただ、その入れてる当のドラゴンが死ぬと、その‟ポケット”の中身が全部その場に出てきてしまうんだ」
「えっ、それじゃあ…」
「多分もう予想がついてるだろうが、何しろ無限大の容量だ。それが亡骸のすぐそばに出ちまうんだから、すごいことになる。だからこの墓場に来る前に皆生前贈与をして‟ポケット”の中をすっきりさせるんだ。だが俺には譲る相手もいなくて、まだ‟ポケット”に残ったままなんだ」
「そうなんですか…ちなみにどんなものが入ってるんですか?」
「俺のは魔物の骨や牙、魔石なんだがな。これが食べ物だったら欲しがるヤツもいたんだろうが…」
ルードウィヒの‟ポケット”の中身の内容を聞いたタッキーはちょっと考えて
「骨とか牙とかって、武器の素材…ですよね?
「ああ、人間とかならな。だからたまにドワーフやエルフなんかに売ることもあるんだがな…そんな小規模な量じゃなくってな…」
(素材かぁ…身を守るのに役立つかな?)
タッキーは考えた末に「いいですよ。謹んで受け取らせて頂きます」と答えた。ルードウィヒはとても喜び、嬉しそうに話を続ける。
「そうか、受け取ってくれるか!じゃあ早速お前に『収納』のスキルをコピーしてやろう。ついでに全ての生き物と会話できる能力もあげておこうか!」
そう言うと、ルードウィヒは自身の収納ポケットからいろんな色のついた小さな木の実を出した。タッキーは訳が分からずキョトンとした。
「何です?コレ?」
「この辺によく生えてる木の実だ。色によって様々な恩恵がある、便利な代物だ。じゃあまずこれだ」
そう言ってオレンジ色の木の実を取ってタッキーに勧める。
「これを2個食べるんだ」
そうルードウィヒに言われるまま、タッキーはオレンジ色の木の実を2つ、口に入れた。そしてその味にぎょっとした。
「唐辛子~~~!!!」
タッキーは目を真ん丸にし、口から火を噴き出さんばかりの勢いで叫んだ。辛いなんてもんじゃない。おおよそ‟食べる”ものの範疇を激しく逸脱している。そんなタッキーの様子を見ながらルードウィヒは続ける。
「ああ、知ってる。ドラゴンなら丸のみにできるし、小さいから気にならないんだがな。でもスライムってのは生まれつき悪食なんだし、何とかなるだろう?」
「たっ…確かに何とかなりましたが…」
だがタッキーの口の中はすでに地獄、目から涙…の有様だ。
「じゃ、次はこれだ」
ルードウィヒは次に黒い木の実を10個出した。タッキーはその木の実をじーっと見つめ、嫌な予感を感じた。
「…これもまずいんじゃあ…」
「お、よくわかるな。何しろ都合のいいスキルを譲ってもらうんだ。それなりの対価っていうヤツだ、まー頑張れ」
「のぉぉぉぉ~~~~~~!!」
タッキーの絶望が、墓場中に木霊した。
黒い木の実は何味かな?みんなで予想してみよう!w
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