エピソード3-②
それは、タッキーが「スライム」として転生したばかりの頃だった。
タッキーは、ぼんやりと目を開けた。すると、周囲はなんだか巨大な物だらけだった。巨大な草、巨大な気、巨大な岩…。
「何だコレ!?どうなってるんだ…???」
訳が分からず辺りをキョロキョロと見回す。やがて、自分の姿が人間ではないことに気付いた。ふにゃふにゃで丸っこい体…これって、‟スライム”ではないだろうか…??
「一体なぜ!?」
自分がスライムになった理由…を考える暇もなく、大きな虫が自分を捕まえようとしていた。慌てて逃げるタッキー。岩の陰に隠れて何とかやり過ごす。ふう、と一息ついて、それから周りの物が巨大なのではなく自分が小さくなっていることに気付いた。
「元々スライムって小さいけど、特に小さくなってる気がするなぁ…」
そして、お腹がすいていることに気付き、とりあえずその辺に生えている草を食べた。雑草はあまりおいしくなかったが、選り好みをしているほどの余裕などない。
「とにかく、食べられるだけ食べておかなくちゃ」
そう言っている間にも、また別な虫が襲ってきた。食べられたくないので、とにかく逃げた。逃げながら、そうしてスライムの姿なのだろう…と考えた。
考えて考えて…そういえば自分は現世から転生して、異世界の田舎の農村で農業をしていたことを思い出した。そして魔物の群れに襲われたのだった。
「もしかして、あの時死んで、再び生まれ変わったのか…??」
確信はなかったが、自分がスライムの体になっている理由はそれしか思い当たらなかった。
それからのタッキーは昼も夜も、とにかく次から次へと襲ってくる虫や小動物から逃げ回っていた。眠るのなんて、一度にほんの10分程度位。うつらうつらする程度だ。
とにかく食べられないようにしなくては…。
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