中間小話~キノコの秋・その②~
~母の昔話~
昔母は北海道の大滝村と言うところで一人暮らしをしていました。ある日、夕飯の支度をし終え諸々盛り付け等も済ませ、テーブルに料理を置いていきました。出来立ての味噌汁を最後に設置し終えた瞬間、窓からカメムシが結構な速度で飛来したと思ったら、直後に蛍光灯にぶつかって。…蛍光灯の真下には、その出来立ての味噌汁が設置してありまして…w
ブーン、ガンッ、ヒューポチャッ…という感じで、カメムシはその出来立て熱々の味噌汁の中に落下して即死。ぷかぁ…とカメムシの死体が味噌汁から浮かんできたそうですw
その後母はそのカメムシ入りの味噌汁を捨て、器を洗ってよそい直したそうですw
「完成ー!!」
キノコのシチューが出来上がり、ルルは嬉しそうだ。お皿に盛りつけてテーブルに運ぶ。
「う~ん、いい匂い」
ルルは自分で(半分くらい)作ったシチューに満足気だ。
「本当だねぇ」
と、タッキーも喜ぶ。…が、何かちょっと違うニオイがした気がする。実は、ルルが鍋にキノコを入れていた時にも、ちょっと「ん?」という気がしていた。
「…??」
「いただきまーす!」
と、おいしそうにシチューを食べ始めるルル。
(気のせいかな?)
ほんの少しだけだったし、ルルだって危険察知の能力がある。毒キノコだったら食べてないはずだ。それに現に今、ルルはパクパク食べても何ともなさそうにしている。
「いただきます」
そう言ってタッキーも食べ始める。とてもおいしい。森の秋の恵、と言う味だ。
「あ~、も~、本当においしい!おかわりしようっと」
「ボクもおかわりしようっと」
そう言ってルルは最初の半分ちょっとの量を持って再び食べ始める。タッキーもおかわりして食べる。
「あ~~、幸せだわ~~」
と、食べ終えたルルは満足げにニコニコしている。しかし、その頬は少し赤い。
「あれ?ルル、熱がある?」
「別にぃ~?大丈夫よ。でもちょっと暑いかも」
そう言ってルルは服を脱ぎ始めた。
「暑い?」
そういえばタッキーも少し暑いかな?と思った。そうこうしているうちにルルは上機嫌で歌を歌いだす。
「おいおい、そんなにキノコシチューがおいしかったのかい?」
「うん、すっごく!!ああ~、なんかサイコーにいい気分!!」
そう言ってルルは、食器をスプーンでカンカン叩き始める。リズムに乗って体を動かしながら歌っている。タッキーはそれを見て
「あはは、シチューって言うより、まるでお酒でも飲んだみたいだ…」
そう言いかけて、タッキーははっと気付いた。
(そういえば、キノコの中にはシメジそっくりの姿と味で『ほろ酔いダケ』って言うのがあったっけな。ごくわずかにシメジと香りが違うだけで、ほぼ見分けがつかないとか…。お酒を飲んでもいないのに、酔っぱらったようになるとか…)
タッキーが『ほろ酔いダケ』について思い出している中、ルルは歌いながら椅子から立ち上がり、くるくると回って踊りだしていた。
(ま、いいか。楽しいんだし)
タッキーは考えるのをやめて、踊りに加わった。
家の中が何だか騒がしいことに気付いた、外にいた畑タッキーが不思議に思って静かに玄関のドアを開ける。中では半裸でテーブルの上に乗って踊るルルと、そばの床で笑いながら椅子を投げ飛ばしている冒険者タッキーの姿があった。
その時、部屋の中にふっとニオイがした。シチューとキノコと、キノコのようだがちょっと普通とは違う、そう、畑タッキーが今日の昼間、近所のボブに見せてもらった、あの『ほろ酔いダケ』のニオイだ。
『ほろ酔いダケ』の事を思い出して、このカオスな光景に大体の事態を察した畑タッキーは、そのままそっとドアを閉めた。
>そっとしておこう…。
お読みいただきありがとうございました。




