エピソード2-⑨
北海道でつい先日、初雪が降りました。どんなに暑くても雪って降るもんなんですね…(遠い目)。
そして雪虫予報は外れないw
ウィンドウルフが次々にやってくるため、倒しても倒してもキリがない。体力がどんどん削られていく。タッキーが後ろをちらりと見ると、ルルがかなり辛そうな様子になってきていた。そろそろ日も沈みかけている。
「駄目だわ…このまんまじゃキリがない。それに、長引いたら夜になっちゃう…」
ルルは独り言ちたあと、意を決して剣を構えて炎魔法を使う。火炎放射器から出るような凄まじい炎が、ウィンドウルフ達の体を焼いていく。ルルはそのまま囲んでいるウィンドウルフめがけて、ぐるりと回転しながら炎を剣から吹き出し続ける。
「「「ガアアア!!」」」
「「「グゥワウウ!!」」」
焼かれていくウィンドウルフ達の断末魔が響く中、タッキーは慌ててルルを止めようとする。
「ルル、また!!魔法は使っちゃダメだって!!」
が、ルルは
「出力は抑えてるわよ。あともう少しだから!!」
と、そのまま残りのウィンドウルフ達を焼き尽くした。
辺り一帯のウィンドウルフ達を殲滅できたようで、周りにはもう襲ってくる個体は見当たらない。タッキーはふうっ、と深く息を吐きだした後
「やれやれ、どうにかやっつけられたみたいだね。もう、ルルは無茶するなぁ…」
そう言ってルルの方を振り返ると、ルルはふらりとその場に倒れた。
「ルル!!」
驚いてタッキーはルルのそばに駆け寄り、鑑定眼でルルのステータスを見る。魔力…MPがかなりのマイナスになっていた。威力は抑えめにしていたように見えたのに、なぜ…?
「…そうか。さっきのワイルド・キャットの時にも魔力を使ったし、今も使う時間が長かったからだ!!」
このギギル謹製の魔法剣は、威力は凄いが容赦なく使用者の魔力…MPを消費する。タッキーはギギルから貰った魔力ポーションを出してルルに飲ませる。1本、2本、3本…貰った魔力ポーションすべてを飲ませても、まだ足りない。ルルとタッキーは急いで出発しなければならなかったうえ、魔法を使う想定をしていなかったため、ギギルから貰った3本以外の魔力ポーションは持ち合わせていなかった。
腕の傷は治したが、MPが足りないため、段々ルルの顔が青ざめていく。タッキーでは分裂して大きくなったとしても、ルルをギルドまで運ぶのには時間がかかってしまう。とても間に合わないだろう。
「ルル!!」
タッキーがルルの体を抱きしめたその時、倒れていたウィンドウルフが1頭起き上がって襲いかかってきた。全身に大火傷を負っていたが、まだ生きていたようだ。
「くそっ!!」
タッキーは腕チェーンソーでウィンドウルフの体を切り刻む。二度と立ち向かってこないように、徹底的に、何度も切っていく。ドサリ、とウィンドウルフが地面に倒れて息絶えたその時、タッキーの体が光る。レベルが1つ上がって、新しいスキルを手に入れた。
『魔力譲渡』
それは、タッキーのMPを他者に分け与える能力。絶望的な状況に、希望が差し込んだ瞬間だった。
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