エピソード2-⑥
「後ろは任せて!」
タッキーはそう言うと2匹に分裂し、それぞれ魔力で巨大化し、5歳くらいの人間の子供並みの大きさになる。1匹だけなら10歳児くらいの大きさになれるが、2匹に分裂すると半分ずつになってしまう。
1匹はルルの盾となり、もう1匹は両腕のように伸ばした触手をチェーンソーにして、ルルの後ろを守りながら戦う。チェーンソーは幅があるので、一方を盾代わりにもできる。さらにタッキーには毒耐性があるので、万一ワイルド・キャットに噛まれても平気だ。今は素材を売るとか考える必要もないため、片っ端から思い切り切り刻んでいく。
ワイルド・キャットの火炎放射で多少焦げはしたものの、チェーンソータッキーは後ろ3匹を倒し終えた。その時、チェーンソータッキーの後ろ、ルルの盾になったタッキーの声がした。
「ルル、ダメだよ」
チェーンソータッキーが振り返ると、ルルは剣の水魔法を使って、ワイルド・キャットの炎を消していた。チェーンソータッキーは慌てて
「ルル、魔法を使っちゃダメだって!!」
と叫ぶ。しかしルルは
「大丈夫。ギギルさんの所でやったのより抑えてるから!」
と、自信ありげな声で答える。確かに、昨日ギギルの所で放ったのよりはだいぶ弱いが、水柱は2匹のワイルド・キャットの胴体を貫き、大穴を開けていた。
タッキーは分裂していた体を1つに戻し、鑑定眼でルルの魔力残量を調べる。
「ルル、今の出魔力が50も減っているよ。気を付けないと、また倒れちゃうよ?無理だと思ったらボクを頼っていいんだからね?」
そう諭すタッキーにルルは
「うん、ごめん。炎を出すなんて思ってなかったから、びっくりして慌てちゃって…。タッキーだって3匹も相手してしてるんだし…って思ったらつい…」
と、申し訳なさそうに話す。そんなルルにタッキーは安心させるように優しく話しかける。
「ボクなら大丈夫だから。毒耐性があるし、多少焦げても再生するんだから。でも本当、ワイルド・キャットが炎魔法を使うなんてびっくりだよ。魔物って油断ならないね」
そうだね、とタッキーに同意するルル。そうして多少会話しながら息を整え、二人は先を急ぐためその場を後にした。
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