エピソード1-③
待ってる間にお皿に買ってきた野菜のうちのトマトを切って並べ、焼きあがった目玉焼きを真ん中に乗せる。少々の塩と胡椒を…と思ったが、タッキーは手を止める。
「あ、胡椒はなかったんだっけ」
この世界で香辛料は高価だった。貧乏人にはとても買えない。そう思ったが、ふとあるものを思い出した。
「あ、いいものがあったんだっけ!」
タッキーは収納ポケットから、小さくて黒い実を1個取り出す。
「それは?昨日の白い実に似てるわね」
「うん、そうなんだ。実の色は違うけど、なっている木の姿はそっくりさ。同じ仲間だと思うよ。他にも赤い実、黄色い実、緑の実なんかもあるんだ。でもそのまんま食べるのは無理そうだから出さなかったんだ」
「…まずいの?」
「うん、この黒いのなんてすごく辛いし。でもね、細かく削れば胡椒っていう物の代わりになると思うんだ。よく似た香りがするよ」
ルルは香りをかいでみる。
「ハックション!!」と大きなくしゃみをする。
「こんなところまで胡椒そっくりさ」
予想通りのリアクションにタッキーは笑いながら、そういって少量を目玉焼きの上にパラパラッとかけた。
「あっ、なんだかいい感じ」
ルルが言う。ルルは胡椒というものを知らなくて、はじめて嗅いだのだった。
「じゃ、食べようか」
タッキーがテーブルに並べる。ルルが卵2つ、タッキーが1つ。仲良く分けて食べた。卵よりトマトが多いくらいだが、それは仕方ない。ルルは初めて焦げていない自分の料理に感動し、おいしそうに食べており、タッキーはその様子を微笑ましげに見ながら自分の分を食べていた。
(なんだかお母さんがいた時に戻ったみたい)
ルルはちょっと懐かしくてちょっとあったかい感じがした。
食べ終わったタッキーがルルに聞く。
「ルルが採取するのはこの薬草だけ?」
タッキーはアーンと口を開けて、収納ポケットから薬草を一つ取ってルルに言う。
「うん…あともう二つくらい種類があるけど…森の入り口で取れるのはそのくらいなの。私はお母さんと違って攻撃魔法も防御魔法も使えないから、あそこより奥へはいけないの。魔物が出るから…」
「そうなんだー。じゃあこれからも一日に小銅貨3~4枚くらいしかならないのかなぁ…」
これではいつまでたってもお金が貯まらない。タッキーはどうしたらいいか考え…そしてあることを思いついてルルに提案した。
「あ、じゃあさ、薬草を取ったら少し家の周りに植えてみない?増やして売ればその分お金になるし、森に行けない時にも植えてあるものを刈ってギルドに持っていくことができるよ!」
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