エピソード1-㊼
ルルの希望が現実になることが確定した後、続けてギギルが説明する。
「問題になるのは魔力量なんだ。魔力が少ないと、使いたくてもどうにもならん。…魔力ポーションを飲み飲み使うって言う手もあるが…下手をすれば魔力不足で死ぬこともあるからなぁ。俺個人としては、その使い方はお勧めできねぇな。まぁ最初は気を付けながら、ちょっとずつ強い魔法を使えるように練習するんだ」
「どうやったら2つの属性を使い分けられるんですか?」
タッキーがギギルに尋ねる。
「イメージだな。炎系を使いたいときは火をイメージする。氷・水系を使いたい時はだな、氷なら凍ったイメージや氷が出てくるイメージ。水系なら水が出てくるイメージをするんだ。こう、ザパーッて水が出てくる感じでな?そのあと、その力をどうしたいかをイメージする。炎なら、火の玉みたいなのを飛ばすか、火柱を出すか…とかだな。水も自分の近くに池みたいにドバーっと出すか、細く遠くへ飛ばすか…とかだな。要するに、自分のイメージ次第で変わるってことだ」
ふむ、なるほどとタッキーが納得する。そしてふと疑問が湧いたのでギギルに質問する。
「あのう…もし頭の中で、炎と水をいっぺんにイメージしたらどうなります?」
その質問に、ギギルはちょっと顔をしかめながら答える。
「そりゃあ…両方いっぺんに出てきちまうだろうなぁ…。でもよ、それやっちまったら…どうなるか、わかるか?」
「炎が消えちゃう?」
と、ルルが答える。
正解だ、とギギルが答え、話を続ける。
「そうそう。せっかく魔力を使って出した攻撃魔法なのに、なんの意味もなくなっちまう。それに炎と水といっぺんに2つ使うわけだから、消費される魔力は2倍になる。すっごい無駄だよな?だからイメージは大事だし、練習も大事なんだ」
「う~ん…難しいのね~」
ルルがギギルの素晴らしく感覚的な説明を聞いて考えこんでいる。それを見てギギルはこう提案する。
「いやいや、考えるより慣れろ、だ。考え込んでてもわかんねぇだろ?実際にちょっと試してみろよ」
「ん~…そうね、一度やってみるわ」
そう言ってルルは鞘から剣を抜いた。ルルがギギルの店の方を向いていたので「あ、やる時はこっち向こうな」と、店と反対方向の荒れ地の方にルルの体を向けた。
(この"庭”がこんなメチャクチャになってるのって、やっぱりこういう"試し切り”をしょっちゅうやってるせいなんだろうなぁ…)
とタッキーは思った。
「う~ん…イメージ…イメージ…」
ルルがどんな魔法にするか考え込んでいる。具体的にイメージするためブツブツと独り言を言っているので、傍から見ると少し不気味である。
「水のイメージ…飛んでく…遠くに…」
やがてイメージが固まったのか、ルルは独り言をいうのをやめて剣を構えた。
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