エピソード0-③
「ボクにもよくわかんない。味は良くないけど、とりあえず栄養はあるから食べて」
「でもこれ、タッキーが一度食べたものでしょ?」
「あっ、違う違う。ボクね、魔法のバッグとかみたいに物をそのままとっておけるの。しかもいくらでも!!便利でしょ?」
「へー、すごい!!それもタッキーの特殊能力?」
「そう!!」
タッキーはちょっと自慢気だ。それでルルは実を食べてみる。
「…おいしくないっていうか…味がしないわ…」
「そーなの。ごめんね、こんなのしかなくて…」
「いいのよ、食べられるんなら。明日は薬草取り手伝ってくれる?」
「もちろん。ボクの責任だしね!」
「ありがとう」
ルルはにっこり笑って
「ねぇ…あの、タッキーさえよかったら、ずっとこの家に居てくれない?」
タッキーは申し出にちょっと驚いて
「いいの!?ホントに!?」
「うん!だって私一人だし」
(そっかー、寂しいんだな)
「わかった。ボク一緒にいるよ」
「うれしい!!ずっと一緒よタッキー!!」
ルルはタッキーをぎゅうッと抱きしめた。その瞬間、タッキーはルルとの間に微かな力の繋がりを感じた。どうやらルルにテイムされたらしい。
そしてそのまま一緒に眠りについた。
(ベッドの上で眠るのなんて久々だなぁ)
タッキーはルルの腕の中で考えていた。ずっとモンスターに追い回される日々が続いていたので、やっと安心して眠れる。
タッキーはもともと現世でサラリーマンをしていた。ごく平凡な毎日。仕事はやりがいがあったが、ものすごく忙しかった。実は、この世界に来る前の記憶はあやふやだ。なんか、2日完徹して帰って一息ついた…所までは覚えているのだが…もしかしたら過労死だったのかもしれない。次に目覚めた時には違う村だったが、この世界の農民の子供になっていた。でも12歳の時に魔物に襲われて死んだ。そして再び目覚めた時、小さなスライムの姿だったのだ。
(本当に、ずっとこの子と一緒に居られるといいなぁ。やっぱり、家があってぐっすり眠れるって幸せだよ)
ルルの寝顔を見ながらそんなことを考えつつ、タッキーは眠った。
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