エピソード1-㉕
ギギルの武器の改造の話が一通り終わったので、ルルは改めて支払われた代金大金貨552枚を数える作業へと意識を向けた。改めて見るとすごい枚数である。しかも、普段お目にかかることのない大金貨…。一瞬でお金持ちになった実感が未だにわかないルル。そしてこの沢山の大金貨を数えるのはちょっと面倒だなと思い、ついタッキーに「これ、全部数えないとダメ?」と聞いてしまった。
するとタッキーは大真面目な顔でルルの方へ向き、なぜ数える必要があるかをルルに話し始めた。
「こういう支払いや取引の時は、金額があっているかどうか、その場できちんと確かめるんだ。相手が見ている前でね。後から違ってた、なんてことになったらお互いに気分が悪くなるし、関係がこじれてしまうこともあるからね。大切なことなんだよ」
「つまり、お互いがこれからもいい関係を続けていくためにも必要な手順だってこと?」
「そういうこと」
タッキーの言葉にルルはなるほどなぁ、と納得し
「わかった、数えるわ」
と、袋からお金を出して数え始めた。
「急がなくていいから、正確にね」
「うん、わかった。…でも大金貨なんて私、見るのも触るのも初めてよ」
普段扱わない大金貨に改めて緊張しているルル。手が震えるのを何とか抑えながら、まず10枚ずつ数えて、大金貨を積む。10枚積んだ大金貨が10貯まると1か所に固める。これで100枚になる。この塊が5つで500枚だ。それからまた10枚ずつ積んだものが5つ、これで50枚。そして余った大金貨が2枚。丁寧に数えてるのを見たタッキーはルルに
「うん、そうそう。ちゃんと数えられたね」
と、微笑んで褒めた。ルルもうれしそうに「えへへ、ありがとう」と答える。
「はい、ギギルさん。大金貨552枚、ちゃんとありました!」
ルルはギギルに笑顔で言う。日頃あまり大きな桁を数えることなんてないので、ちょっと大変だった。
「よし、取引成立だな。じゃあ、この書類のここんとこにサインしてくれ」
「これ、何ですか?」
普段見ない書類に首を傾げ、ギギルに尋ねるルル。
「受領証だよ。金を受け取ったって証だ」
と、ギギルが答える。タッキーはそれに付け加えるようにルルに説明を始めた。
「そう、これもね必要な手順なんだよ。あとで揉め事にならないために、必要な書類なんだよ」
「そうなんだ。わかったわ」
と、ルルは受領証にサインする。
「よし、これで正式に取引を完了だ。嬢ちゃん、きちんと数えられて偉かったぞ」
「はい!頑張りました!」
笑顔でルルはギギルに応える。タッキーは、予想外だったけどいい勉強をルルにさせることが出来た、と今回の出来事に満足そうであった。
「出来上がるまでに1週間かかる。1週間後にまた来てくれ」
「はい、わかりました」
「最高の剣にして見せるからな!楽しみにしててくれ!!」
ギギルは張り切って言った。
「楽しみにしてます!」「よろしくお願いします」
と、ルルとタッキーはそれぞれギギルにそう言うと、二人は上機嫌で店を出た。
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