エピソード0-②
「ごっ、ごめんなさい!!おいしくてつい食べちゃったんです!!」
そういって謝るスライムを見て、ルルはさらにびっくり。
「スライムがしゃべった!?人間の言葉がわかるの!?」
スライムの方もびっくりだ。人間を見るのも久々だったし、ドギマギしながら、考え考え言い訳をする。
「えっ!?あっ、そう、そうなの!!しゃべれるんです。えっと…えっとね、そう、ボクの特殊能力なの!!」
(異世界って便利な言い訳があるなぁ)
そう心の中で思いながらしゃべるスライム。
「ボクは特別なんだよ!!びっくりさせてごめんね。ボクは…えっとタッキー。森の奥の方で生まれて、強い魔物からずっと逃げてて、やっとここまで来たんだ。そうしたら、おいしそうな木の実とか草とかあって…食べてお腹一杯になって、そのまんま眠っちゃったんだよ」
「そうなんだ…大変だったね。タッキー君って言うんだね。私はルル。食べちゃったっことは怒らないけど…薬草、また取り直さなくちゃ。今夜の食べ物もなくなっちゃったなぁ…」
しょんぼりとして言うルルにタッキーは
「他には食べ物はないの?」
と尋ねる。
「うん…ないのよ」
タッキーは家の中を見回す。一人暮らしにはちょっと広い家だ。
「他に家の人は?お父さんやお母さんは?」
「いないの。二人とも、死んじゃったの。お父さんは私がもっと小さい頃に、お母さんは3か月くらい前に病気で…」
「そうなんだ。ずっと一人で暮らしてたの?」
「うん…。先月までは隣のおばさんが時々食べ物を分けてくれてたんだけど、一家で街へ引っ越しちゃったから。それからは一人なの。」
「そうなんだ…大変だね。君、年はいくつ?」
「9歳よ」
(まだ小さいのに一人で頑張ってきたんだなぁ…)
タッキーは、自分がすっごくまずい事をしてしまったと気付く。
「ごめん。本当にごめんね。…あ、そうだ。味はあんまりおいしくないけど、森の奥にいた時そこら辺に沢山あったから、非常食にってとっておいた木の実を上げるよ」
タッキーはそう言うと、口をアーンと開けてバラバラッと小さくて白色の丸い木の実を出した。
「これは?」
ルルは初めて見る実だった。
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