エピソード1-⑮
小さい魔物は力は弱いが、すばしっこい。そこでタッキーはちょっと考え、ライオンの狩りの仕方を参考にすることにした。あらかじめタッキーが2匹に分裂して待ち伏せ。ルルが魔物の追い立て役になり、タッキーが仕留める。タッキーがマヒ毒を仕込んだ剣で切りつけるので、一度でもかすり傷が付けられればあとは簡単だ。
そうやって小型の魔物の討伐依頼を繰り返すうちに、一週間ほどで冒険者ランクがFに上がった。Fランクからは猫型から猪型の魔物まで倒せる。Gランク依頼よりも報酬が多くなるので、よりお金が貯めやすくなった。
また、2人のレベルも上がった。ルルはレベル5に、タッキーはレベル48になった。タッキーが魔物を仕留める役になるため、やはりタッキーの方が上がり方が速い。また、タッキーの鑑定眼が2に上がり、今まで見えていなかった項目や数値が少し見えるようになった。そこで試しにルルのステータスを見てみると、「超速」というスキルがあることに気づいた。新しく加わったのか、今まで見えていなかったのかはわからないが…。
(「超速」って、なんだろう?)
だが、いくらその項目を見てもわかるのは名前だけで、それ以上のことは何もわからない。薬草くらいなら名前の他、効能などの詳しい情報も見えるのだが…。
(ま、仕方ないかー…「鑑定眼」はまだ2なんだし)
見えるものが増えただけでもいいや、とタッキーは納得した。
そんなタッキーはというと、レベルが上がっただけでなく、新しい技が増えた。今までは体の一部を伸ばして剣状に変化させるだけだったが、体の一部を細くとがった針のような形状に変化させ、飛ばして相手に刺せるようになったのだ。その針状のものにマヒ毒や眠り毒を仕込めば、より敵を倒しやすくなる。技の選択肢が増えて、タッキーはほくほく顔になった。
Fランクからは、中型の大きさの魔物の討伐依頼を積極的に選んだ。魔物が大きくなると、報酬も多くなる。ちょっと苦戦するものの、特にイノシシ型の魔物はツノや牙、毛皮が売れるだけでなく肉も美味なので1頭が大銅貨2枚になる。依頼も多いので稼ぎやすいのもいい。最近タッキーは自分の畑で大根やキャベツを植えて育てているので、それ目当てに奴らが時々荒らしに来る。それを畑担当の分身が仕留めることもある。依頼でなくても肉がおいしいので、解体して収納ポケットに入れておいていた。
また、魔物が大きくなっても、相手が草食・雑食ですぐ「逃げる」タイプなら今までとほぼ同じ戦法を取れる。だが肉食や、雑食でも出会うなり人間に襲いかかってくるタイプだとそうはいかない。そこでタッキーは考え、戦い方を変えることにした。まずタッキーが正面から向かっていき、毒で弱らせたところへ背後からルルが短剣を突き刺す。そして魔物がルルに気を取られている隙に、タッキーがとどめを刺す、という戦法を取った。ルルの武器が短剣というのがちょっと心もとなく危なっかしいが、ルルは突き刺した後の逃げ足が速いので、この役を任せられるのだ。
こうしてFランクに上がった2人はひたすら討伐依頼を受けまくった。それから2か月が経ち、ようやく何とか剣を買えるだけのお金が貯まったのだった。
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